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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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昨季のスパーズとフォレストのスタッツは別世界…!「ヌーノからポステコグルー」は大丈夫か?

ひと頃はメインストリームだったポゼッションフットボールに、プレッシングやトランジションで対抗するチームが増えてから、ボールを保持する時間の長さと優劣は、必ずしもリンクしなくなっています。プレミアリーグ3節のトッテナム・ホットスパーVSボーンマスは、ホームチームが62%のポゼッションを記録しながら、シュート数は5対20と圧倒されて0-1で敗れています。

とはいえ、昨シーズンのポゼッション率を見ると、ビッグ6が上位を占めています。CLの出場権を獲得したニューカッスルは9位で、ELのチケットを入手したアストン・ヴィラは10位。ビハインドを背負った際に、ボールを支配して押し込めないと、先制しなければポイントを稼げなくなります。ポゼッションが50%を切っているのに、8位以内に食い込んだチームはひとつだけです。

前説が長くなりました。ここからが本題です。2024-25シーズンのプレミアリーグを19勝8分11敗で終え、7位でフィニッシュしたノッティンガム・フォレストは、ポゼッション率は40.7%で18位でした。堅守速攻に徹したヌーノ・エスピーリト・サントの采配で欧州の舞台に復帰した古豪は、真逆の哲学で戦ってきたアンジェ・ポステコグルーでうまくいくのでしょうか?

ヌーノ戦術のキーワードは、「トランジション」「少人数のカウンター」「持たない・走らない」「ミドルブロック・ローブロック」「セットピースを活用」。対してスパーズのアンジェボールは「ハイプレス・ハイライン」「ひたすら走り倒す」「直線的なアタック」といったところです。両者の違いを、数字でチェックしてみましょう。

まずは「スパーズがリーグ2位で、ノッティンガム・フォレストは最下位」の3項目を紹介します。プレスの強度と積極的な守備の指標となるPPDA(Passes Per Defensive Action)は、スパーズが10.2で、フォレストは15.2。走行距離はアンジェが4237km、ヌーノは3954kmで、1試合あたりで7.4kmという大差です。スプリントの本数も、6366本と4771本と別世界です。

ビルドアップからのアタックの本数は、スパーズが5位でフォレストは19位。ロングボールが584本で最下位のスパーズに対して、フォレストはパス本数12,956本が最下位で、「手数をかけるチームVS手数をはしょるチーム」という構図になっています。唯一の共通項は「インターセプトが322本」。ただしこれも、パスをカットしたエリアは全く違うはずです。

どこからどう見ても、真逆の戦術。アテネ出身のポステコグルーはギリシャスーパーリーグの開幕イベントに出席し、ステージに招かれてギリシャ語でスピーチした後、リーグの会長を務めるエヴァンゲロス・マリナキスから表彰されています。「ギリシャを誇りに感じている人物」と新監督を絶賛したフォレストのオーナーは、スパーズの戦い方を見ていなかったのでしょうか。

今まではゴール前に引いていたムリーリョとミレンコヴィッチは、ハイラインの裏を突くアタッカーに対応できるのか。クリス・ウッド、エンドゥイエ、ギブス=ホワイトは、プレスの連動について考えなければなりません。すぐに適応できそうなのは、エディ・ハウのチームで汗をかいていたエリオット・アンダーソンと、クロップを知っているネコ・ウィリアムズぐらいです。

あまりにもリスキーな監督交代劇に見えますが、成功の糸口となりそうなのは、ヌーノもアンジェも変わろうとしていたという事実です。何としても勝ちたかった昨季ヨーロッパリーグのラスト4試合で、ポステコグルーのスパーズはポゼッションを42%まで落としています。フランクフルト戦は39%で1-0。ボデ・グリムトとの準決勝はホームで41%、アウェイでは31%でした。

「スカイスポーツ」のサム・ブリッツ記者によると、スパーズの選手とスタッフは、指揮官が練りに練った戦術を理解していたそうです。トッテナム・ホットスパー・スタジアムではシュート24本で3-1、敵地では0-2。ファイナルのマンチェスター・ユナイテッド戦は、26%とシュート3本という貧弱なスタッツだったのですが、1-0で逃げ切っています。

必勝のステージで柔軟な対応を見せた新監督に対して、守備的な戦術を徹底してきた前監督は、主導権を握る戦い方を取り入れようとしていました。3節までのポゼッション57.0%は、トーマス・フランクに代わったスパーズをしのぐリーグ5位。オウンサードでのプレイ比率23%は20位で、ファイナルサードの35%はリーグTOPと、明らかに攻め込む時間が長くなっています。

ヌーノがやろうとしていたことに選手たちが共鳴し、その延長でポステコグルーのコンセプトを受け入れれば、スムーズにモデルチェンジを進められるかもしれません。スパーズの主力に絶大な支持を得ていたオーストラリア人監督は、ハードランディングでいくのか、段階的に変えていくのか。そうはいっても懸念8割、淡い期待2割ではあるのですが…。


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