イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

指揮官は感情が爆発、経営ボードは我慢の限界。現地記者が報じたルーベン・アモリム解任の舞台裏。

「ルーベン・アモリムがマンチェスター・ユナイテッドのヘッドコーチを退任した。ルーベンは2024年11月に就任し、5月にはビルバオで開催されたヨーロッパリーグのファイナルにチームを導いている。マンチェスター・ユナイテッドはプレミアリーグで6位に沈んでおり、クラブのリーダーシップは苦渋の決断を下した。今こそが変えるべき適切な時期と判断した」

クラブが発信したステートメントの行間に、怒りがにじみ出ています。ヘッドコーチという肩書きで契約しながら、「私はマネージャーであってコーチではない」「スカウト部門もスポーツディレクターも、自分の仕事を遂行しなければならない」と経営ボードを煽った監督は、職を失うことになりました。ルーベン・アモリムは、押してはならないボタンに手をかけたのです。

14ヵ月の悪戦苦闘に対するねぎらいの言葉は、「クラブはルーベンの貢献に感謝するとともに、今後の活躍を祈っている」とひとこと。ミッドウイークのバーンリー戦は、ダレン・フレッチャーが指揮を執るそうです。マンチェスター・ユナイテッドは、なぜこれほどスピーディーに重い決断を下したのでしょうか。

「アスレティック」と「テレグラフ」が、発表の当日に複数の記事を配信できたのは、週末に解任を確信した記者たちが取材を進めていたからです。「テレグラフ」のジェームズ・ダッカ―記者によると、終わりの始まりは金曜日。「ジェイソン・ウィルコックスFDとの会談の席で、ルーベン・アモリムが感情を爆発させた」という事件が、関係者全員を動かしたそうです。

「会議は中断され、メディア対応も取りやめとなった。日曜日のリーズ戦の前に『TNTスポーツ』とのインタビューが予定されていたが、これもキャンセルとなった。午後1時15分にマンチェスターの地元記者団との定例記者会見に姿を見せた時には、明らかに何かがおかしかった。アモリムは陰鬱な雰囲気だった」

「質問に対する返事は簡潔で、声や表情に普段の活気がなく、クリスマスイブに発した『完璧な3-4-3を推進する時間や資金を得られないため、適応が必要』という自身の言葉について問われると、口を閉ざした。その後は、フットボールディレクターのジェイソン・ウィルコックスとの関係悪化をほのめかすだけに留めている」(ジェームズ・ダッカー)

In 72 hours, ‘emotional volcano’ Ruben Amorim finally erupted and lost his job(『感情の火山』ルーベン・アモリムがついに噴火し、72時間後に職を失った)」と題した記事は、「リーズ戦のキックオフの前に解任は決まっていた」という衝撃の事実を伝えています。FDとヘッドコーチは、これまでも定期的にコミュニケーションを取っており、関係は良好でした。

ウィルコックスFDは、今回のミーティングを「チームの進化に関する建設的な評価の場」にしようとしていたそうです。最下位のウルヴスとの一戦を1-1で終えたばかりで、チームは何らかの改善策を必要としていました。「テレグラフ」の記者が取材した関係者は、「この場でアモリムのシステムに関する話題が出ると、彼はいきなり激怒した」といっています。

ヨーロッパリーグで敗れて欧州へのルートを絶たれても、プレミアリーグで15位に転落しても、マンチェスター・ユナイテッドの経営ボードはアモリムを支持するというスタンスを貫いてきました。エイデン・ヘヴン、ドルグ、マテウス・クーニャ、エンベウモ、ラメンス、シェシュコ、ディエゴ・レオンに2億5000万ポンドを投じたのは、何としても勝ってほしかったからです。

昨年の秋、アモリムを招聘するべきと主張したオマール・ベラダCEOも、我慢の限界だったといいます。関係は持続不可能という判断が下され、サー・ジム・ラトクリフとグレイザーファミリーの承認を得るまでに、さほど時間はかかりませんでした。関係者が憤っているのは、直近の会見でクラブとの合意事項や自らの発言を覆したことです。

取材に応じたスタッフは、「スカウト部門もスポーツディレクターも、自分の仕事を遂行しなければならない」という補強批判について、「中盤の選手ではなく、ベンヤミン・シェシュコを獲得するという話に全面的に賛成していた」と指摘しており、「3-4-2-1を完璧な形にするには、多額の資金が必要」というコメントには、「4バックの導入には同意していた」と主張しています。

「ボーンマスのアントワーヌ・セメンヨを獲得するべく、直接話した際に、4-3-3の左ウイングとして起用する意向を自ら伝えていた」。11月から陰鬱な表情を見せるようになり、システムに関する話に感情的になり始めた指揮官の変化に気づいていたというスタッフは、納得していたはずの4バックを突然止めたのを見て、「彼は変わる気はなかった」と気づかされたそうです。

「もっと前向きに、攻撃的に戦えると励まされていたのに、同じアプローチを繰り返していた」。ウルヴス戦の前に行われた2度のセッションでは4バックだったのに、試合の直前に3バックに変えるといい出した指揮官に選手たちは驚愕したという話もあります。最下位と昇格クラブに勝っていれば、違う世界があったのかもしれません。

最初のシーズンにラシュフォード、ガルナチョ、サンチョを痛烈に批判した指揮官は、2ヵ月前からシェシュコ、ウガルテ、ダロト、ドルグらを非難しており、メイヌー、ハリー・アマス、チド・オビ、トビー・コリアーもターゲットになっています。「ウィルコックスとの確執などなかった。以前は耳を傾けていた」という関係者の言葉を聞くと、率直で憎めない監督という記者の評判とは違う「ストレスを溜めて、ときどき爆発するタイプ」という別な顔が浮かんできます。

「アスレティック」でマン・ユナイテッドの特派員を務めるローリー・ウィットウェル記者は、アモリム招聘の経緯を振り返っています。「ベラダCEOは就任を強く主張した。当時はSDだったダン・アシュワースは新システム導入の難しさを説いていた。3バックに懸念を示したウィルコックスは、最終的には賛成している」。賛否両論があったからこそ、その後の全面的なサポートがあったともいえます。

「アモリムがしばしば感情を爆発させたにもかかわらず、ラトクリフ、ベラダ、ウィルコックスはサポートし続けてきた。ラトクリフは、チームについて自らの意見を表明することで知られている。しかしながら最近は、その対話自体がアモリムの目に干渉、妨害に映るようになっていた」(ローリー・ウィットウェル)

クラブにとっては「激励」「アドバイス」でも、彼にとっては「現場介入」でしかなかったようです。とはいえ、これはどっちもどっちではないでしょう。自身の戦術に踏み込んだ話をされるのがうとましくても、「指示」「命令」でない限りは、建設的な議論と結果で納得させるしかありません。下位のチームに勝てなかったうえに、選手たちや経営ボードを公然と非難する者に対して、この決断は妥当です。

昨日紹介した「テレグラフ」のジェイソン・バート記者の言葉は、事情を知る確信犯の予告だったのかもしれません。「When managers start talking like Ruben Amorim then there is usually only one outcome: they leave. Sooner or later, and it is usually sooner, they go.(マネージャーがルーベン・アモリムのようは話し方をし始めたら、大抵は結果はひとつだ。遅かれ早かれ、彼らは去る。通常は、すぐに出ていく)」。発表は、その翌日でした。


おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“指揮官は感情が爆発、経営ボードは我慢の限界。現地記者が報じたルーベン・アモリム解任の舞台裏。” への1件のコメント

  1. アイク より:

    衝撃的ニュースですね…
    同じスピード解任でもマレスカの場合と違って、クラブ側が決断を下すまでに相当な歩み寄りと忍耐を見せていたことを理解しました。マンユナイテッドほどのビッグクラブがここまで歩み寄るのかという点にも驚きました。
    ここから立て直せる優秀なマネージャーの獲得となるとワールド杯以降でしょうか。(米代表のポチェッティーノをチラ見しながら)

コメントを残す