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ライバルの指揮官引き抜きに抗議…絶不調ワトフォードがマルコ・シルヴァ監督を解任!

昨季プレミアリーグ後半戦のハル・シティを、あるいは今季序盤戦のワトフォードのサッカーを見ていた方は、今回のニュースにびっくりされたかもしれません。マルコ・シルヴァ監督、解任。2-1で快勝したプレミアリーグ8節のアーセナル戦や、残り20分まで1-2でリードしていた翌週のチェルシー戦で見せたハイプレスとコレクティブなアタックは素晴らしいのひとこと。ドゥクレ、クレヴァリー、ロベルト・ペレイラ、リシャルリソンの躍動を記憶に残している方は、指揮官交代などありえないと主張したくなるでしょう。しかし、プレミアリーグ2017-18シーズンに解任の憂き目に遭った11人の監督を並べると、今回の解任劇の妥当性は上位に入るのではないかと思います。13節まで6勝3分4敗で8位につけていたチームは、その後の11試合で1勝2分8敗と完全に崩壊。10位に踏ん張ってはいるものの、改善の兆しはなく、降格ゾーンとのギャップは4ポイントしかなくなっていたのです。

ワトフォードが異例だったのは、指揮官の解任を伝えるステートメントにて「ライバルが不当なアプローチをした」と抗議したことです。11月にマルコ・シウヴァの引き抜きを画策したと報じられていたのは、クーマン監督を解任したエヴァートン。5週間にわたって監督不在で過ごした彼らは、11月30日にサム・アラダイス監督の就任を発表しましたが、これはワトフォードの不振が始まったタイミングとぴったり符合します。

「これは難しい決断であり、決して安易なものではありません。クラブはシルヴァの招聘を正しいと信じており、プレミアリーグのライバルによる容認できないアプローチがなければ、彼のリーダーシップの下で繁栄し続けていたでしょう。決断のきっかけはこのアプローチであり、ワトフォードの未来が危機に瀕しているといえるほど、集中力と結果双方の大幅な悪化があったと認識しました。ボードは、クラブの安全と成功のために変化を起こさなければならないと確信しています」(Official website of the Hornets「Club Statement Marco Silva」より。翻訳筆者)

客観的に見れば、不振の理由のひとつとして負傷者の続出が挙げられるでしょう。開幕からしばらく、レギュラーとして活躍していたナサニエル・チャロバーが膝を痛めて長期離脱。ホレバス、ブリトス、プリョードルらが入れ替わりでいなくなるなかで、マルコ・シルヴァ監督は最終ラインのやりくりに苦心していました。中盤の軸として期待されていたカプェの不振と、ロベルト・ペレイラの度重なるリタイアも誤算でした。トロイ・ディーニ―に以前の輝きはなく、バーンリーから来たアンドレ・グレイはエースと呼べるほど信頼できず。プレミアリーグで20試合以上出場しているのはGKゴメス、カバセレ、クレヴァリー、ドゥクレ、リシャルリソンのみで、現在はアーセナルに勝ったときのメンバーから半分がいなくなっています。

…いや、今季のワトフォードの凋落を戦力の問題とするのは、おそらくピントがずれているのでしょう。マルコ・シルヴァ解任後まもなく、昨年の6月までロシアプレミアリーグのルビン・カザンを率いていたハビ・グラシア監督の招聘を発表したのを見れば、ワトフォードが相当前から指揮官問題を検討していたのがわかります。

2012年以降、ジャンフランコ・ゾラ、ジュゼッペ・サンニーノ、スラヴィシャ・ヨカノヴィッチ、キケ・フローレス、ワルテル・マッツァーリが2年めを迎えることなくチームを去っており、6年で8人の指揮官を解任してきた「前科者」ゆえ、このたびも経営ボードが短気を起こしたとみるのが妥当なのかもしれません。しかし、今回ばかりは指揮官と選手たちの間に明確な問題が発生していたのではないかと想像します。そう考えざるをえないほど、序盤戦の彼らは素晴らしく、最近の彼らは無残だったのです。戦力不十分のハル・シティであれだけ健闘した監督が11戦1勝という極度の不振に陥った最大の理由は、「容認できないアプローチ」「集中力と結果双方の大幅な悪化」というクラブが発したメッセージの行間ににじみ出ている「何か」なのでしょう。

スペインやギリシャのクラブで経験を積んできたハビ・グラシア新監督は、マラガで2シーズン指揮を執った以外はトップリーグで成功したといえる実績がなく、前任者のような素晴らしいフットボールを期待するのは難しいのではないかと思われます。18位に沈むサウサンプトンも、直近11試合を6分5敗といつ監督がクビになってもおかしくない戦績ですが、ワトフォードが同じポジションに落ちないと胸を張っていえる根拠はどこにもありません。リヴァプール、アーセナル、チェルシー相手に互角に戦ったチームがプレミアリーグから消えるとなれば、非常に残念です。息を詰めて見守る以外に、私たちにできることは何もありませんが…。

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“ライバルの指揮官引き抜きに抗議…絶不調ワトフォードがマルコ・シルヴァ監督を解任!” への2件のフィードバック

  1. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    このニュースには驚きました。最初に順位を見て何故?と思いましたが、ここ最近の戦績をみれば理解はできます。ただ、エバートンからの引き抜きアプローチは知りませんでした。降格圏内とのギャップがさほどなく、チームの底上げが難しくなるとこのようなチームがプレミアから去ってしまうのかもしれませんね、、、。ただマルコ・シウヴァはまだまだプレミアで観たい監督です。

  2. プレミアリーグ大好き! より:

    今季のプレミアリーグの解任劇は同情出来る人もいましたが、全てのケースにおいて妥当だなと思っていました。しかし、今回のマルコシルヴァの解任のニュースを見たときはえっ!?と思いましたが、管理人様が指摘されてる通りここ最近の失速、更にエバートンからのアプローチ以降ワトフォードでの仕事に集中出来ていなかったという報道を見ると今回も妥当なものだと私も感じました。ワトフォードの監督交代のペースの速さは確かに問題かもしれませんが、同時にキケフローレスやマッツァーリなど面白い選択もしてくれるのでハビグラシアにも期待したいと思います

    しかしマルコシルヴァは本当にまだまだプレミアで見ていたい監督ですね。個人的にはペップ、コンテなどと共にプレミア、並びにイングランドフットボールの戦術的に進歩をさせてくれる人だとさえ思っているので、是非イングランドに残って欲しいです。アラダイスには申し訳ないですが、マルコシルヴァの指揮するエバートンは確かに面白そうで来季からそうならないかと密かに期待してます。。

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