イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ファーガソンが語る「成功への8つの秘訣」。近いのは、名門再建を進める北アイルランド出身の…!?

今週末から来週にかけて、ワールドカップ最終予選が開催される関係で、プレミアリーグは1週お休みです。ヨーロッパでは、ベルギー、イタリア、ドイツ、オランダ、スイスが決定もしくは当確。スペインもフランスとのマッチレースを制するでしょう。ポルトガルとイングランドが正念場ですね。最激戦のH組は、イングランドが勝ち点16、モンテネグロとウクライナが15、ポーランドが13と、勝ち点3差のなかに4国がひしめいている状態。イングランドは11日にヨヴェティッチを擁するモンテネグロ戦、15日にポーランド戦がありますが、2連勝しないとたちまち出場が怪しくなってきます。プレミアリーグびいきの私としては、ここはぜひ、サッカーの母国にブラジル行きのチケットを獲ってほしいです。

前置きが長くなりましたが、今週頭に、「サッカーキング」が興味深い記事を掲載しています。昨季をもって現場を退いた、マンチェスター・ユナイテッドの前監督、サー・アレックス・ファーガソン氏が、アメリカのハーバード・ビジネス・スクールが発行する有名な大学誌『ビジネス・レビュー』に収録される「ファーガソン、成功の秘訣」と題された論文のインタビューに回答。プレミアリーグで成功した理由について、8つの要素を挙げています。

■ファーガソン、成功の秘訣・8つのポイント
1)ゼロから基盤を作る
⇒チーム作りの最初のアクションは、ベテラン選手獲得ではなく、
若手の発掘と長期的な視野に立ったアカデミーの構築。
3連敗でクビが飛ぶ現代サッカーでは、
ほとんどの新任監督が生き残るために経験豊富な選手を集めるが、
それはあくまでも短期的な利益である。

2)長期的視野に立ったチーム再建
⇒成功したチームも4年周期で選手が入れ替わっていく。
選手を30歳以上、23~30歳、23歳未満の3つに分類。
全盛期を過ぎた選手は放出し、若手を成長させ、
3~4年先を想定して長期的視野に立ったチームづくりを推進していく。

3)目標を高く設定する
監督が朝早く練習に顔を出せば、チームのスタッフも朝一番に来るようになる。
クラブとして要求レベルを高く持ち、それを維持し続け、絶対に妥協しないことが重要。

4)指導者の絶対的地位の保持
⇒監督は絶対的地位に立たないといけない。選手に支配されればチームは終わる。
不協和音の元となる選手、監督から権力を奪おうとする選手は、
たとえ世界一のスーパースターでも放出すべき。選手よりもチームが重要である。

5)状況に応じたコミュニケーション
⇒監督は、状況を把握しながら最善のメッセージをチームに伝える。
褒めて伸ばし、ミスは試合が終わった後でも叱る。時に監督は医者であり、
教師であり、父でもある。

6)勝利にこだわったアクション
⇒勝つためにはリスクをとる。1-2で負けているとしたら、
最低でもドロー、できれば逆転をもくろみ、
オフェンシブな選手を投入する。最後まで諦めず、妥協しない。

7)選手の見極めと対応
⇒練習の詳細はスタッフに任せ、監督は離れたところから選手を観察。
調子やクセの変化などを見極め、手を打つ必要があれば対話で解決する。

8)変化する環境への適応
⇒イングランドのサッカーはこれまでの数十年で大きく変わったが、
移籍マーケット、財源づくりからメディア対応、科学的なトレーニングまで、
時代ごとに変化する環境に適応していかなければならない。

いかがでしょうか。サー・アレックス・ファーガソンは「自身の成功は再現不可能」と語っているそうです。これについて、私見ですが、いちばん難しいのは4の「指導者の絶対的な地位の保持」ではないでしょうか。これ自体が難しいというよりは、これをキープしながら勝ち続けることが難易度が高そうです。ポール・インス、ヤープ・スタム、ロイ・キーン、デヴィッド・ベッカム、ルート・ファン・ニステルローイ。ウエイン・ルーニーも危なかったですね。「エリック・ザ・キング」カントナを除く、ほぼすべてのスター選手が、何らかの形でファーガソンとの間に軋轢を生じさせ、結局はチームを離れています。それでも、プレミアリーグ優勝13回、チャンピオンズリーグ決勝進出4回、ビッグイヤー獲得2回を含む主要トロフィー38個獲得という圧倒的な実績を残し、クラブに3000億の資産を積み上げたのですから、再現不可能という言葉もうなずけます。

では、現在のプレミアリーグの監督のなかで、この「成功の秘訣」の要素を最も持っている監督は誰でしょうか。モウリーニョやヴェンゲルは、1、2、4、7の「長期的なチームづくり」「選手とのコミュニケーション」あたりは長けている印象です。今は苦戦しているモイーズ監督も、慎重すぎて瞬間的な判断が遅れることはあっても、長い目でチームを作っていく力はありそうです。ペジェグリーニとマンチェスター・シティは今のところ、即戦力重視で短期的な結果追求をしているようにみえます。ヴィラス・ボアスは、やりたいサッカーの輪郭が未だ明確に見えてきません。

いちばん近いのは、ブレンダン・ロジャース監督ではないでしょうか。問題を起こしたスアレスをチームメイトの前で謝罪させ、練習に戻す毅然とした姿勢。短期的なベテラン補強と、未来を見越した選手獲得のバランス。昨季、開幕からしばらく結果がついてこず、危機的な状況に陥っても、焦ってチームをいじることなくひとつずつ課題を解決していったヴィジョン、ポリシーと胆力。3~4年後のリヴァプールは楽しみですね。モウリーニョさんも近いところにいるのは間違いありませんが、性急に結果を求め、敵を作ることを何とも思わないせっかちで好戦的な性格が、長期的にみてどうなのかと思います。

今後、プレミアリーグの監督やチームづくりを観ていくうえで、今回、ファーガソン氏が提示したような物差しがあると、見方が明確になって楽しみが増すのではないでしょうか。いろいろ考えさせられ、非常におもしろかったので紹介させていただきました。さて、あなたのなかの「成功する監督像」は、誰ですか?

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


コメントを残す