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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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最後はペジェグリーニ~プレミアリーグを2019年で終えてしまった監督たちを振り返る。

2019年12月28日、ウェストハムはマヌエル・ペジェグリーニ監督の解任を発表しました。ウカシュ・ファビアンスキがゴールマウスにいたプレミアリーグ7節までは3勝3分1敗と絶好調。2-2で引き分けたボーンマス戦で絶対的守護神が負傷し、エスパニョールから獲得したばかりのロベルト・ヒメネスに最後方を託してから、百戦錬磨のチリ人指揮官の運命は暗転しました。最終ラインが踏ん張れなくなり、19節までの11試合を2勝1分8敗。ファビアンスキが復活したホームのレスター戦を1-2で落とした直後、デヴィッド・サリバン共同オーナーがついに大鉈を振り下ろしました。「クラブが目標に向かう軌道に修正するために、明確な変化が必要だった」。毎年、ボクシングデーの前後に嫌というほど聞かされてきたプレミアリーグの慣用句です。

ハビ・グラシア、マウリシオ・ポチェッティーノ、ウナイ・エメリ、キケ・サンチェス・フローレス、マルコ・シウヴァ、マヌエル・ペジェグリーニ。年末までに6人の解任は、フランク・デブールやロナルド・クーマンが11月までもたなかった2017-18シーズンと同じ数で、直近5シーズンでは最多タイとなります。なかでも昨季のCL&ELのファイナリストであるポチェッティーノとエメリの「sacked」は衝撃でした。ビッグ6の指揮官が、クリスマスの前に複数解任となったのは、ブレンダン・ロジャースとジョゼ・モウリーニョが飛んだ2015-16シーズン以来です。両者に共通するのは、チームのキーマンとの関係が難しくなっていたこと。エメリ監督は、メスト・エジルの不可解な起用法を話題にされ続け、ポチェッティーノ監督もパフォーマンスが向上しないエリクセンの扱いに悩まされました。

彼らの状況を、別な切り口で表現すれば、「オープンでフェアな競争環境をキープできなかった」となります。ユルゲン・クロップ監督は、プレミアリーグ19戦18勝という驚異のハイペースで首位を走っていますが、その足跡は快勝の連続とはいえず、1点差勝利が9つもあります。クロップは、なぜこれだけ勝てたのか。エメリとポチェッティーノがプレミアリーグ5試合連続勝利なしという苦闘を強いられたのは、なぜなのか。相手チームとの戦力差、戦術、交代策などさまざまな要素が入り混じっての結果ではありますが、大きな要因として「自信」と「信頼」の有無があるのではないかと思われます。

昨季プレミアリーグで30勝7分1敗と負けない1年を過ごしたレッズは、チャンピオンズリーグ準決勝では敵地で3-0と完敗したバルセロナ相手に、アンフィールドで4発を叩き込んで大逆転。厳しい状況のなかで勝ち切ってきた積み重ねが、最後まで戦い抜けば勝てるというチームの自信につながっているのではないでしょうか。オリギやシャキリ、ララナなど、控えの選手たちが腐らずに力を発揮できるのは、「監督は勝つために選手を選び、外している」ことを信じられるからでしょう。ひとたび起用法のフェアネスを疑われ出した監督は、選手たちの潜在能力を引き出すことができず、もう一発ほしいシーンで結果を出せずに終わる試合が増えるのだと思います。

デル・アリの負傷離脱も重なったポチェッティーノ監督は、エリクセンの代役と目されていたロ・チェルソを早期にフィットさせることができず、CL決勝進出の立役者ルーカス・モウラの使い方も怪しくなって得点力を大きくダウンさせてしまいました。オーバメヤンやラカゼット、ジャカ、エジルらが移籍を検討していると報じられたエメリ監督は、フランクフルトにホームで逆転負けを喫した試合が限界でした。

絶対的存在だったグイェの後釜として期待されたグバミンを、開幕からわずか2試合で失ったエヴァートンのマルコ・シウヴァ監督も、中盤と最終ラインの不安を払拭できないままでチームを去ることになりました。エースのリシャルリソンでさえ、どこがベストポジションなのかわからず、中盤の選手をコロコロ変え続けた指揮官の下では、自信と信頼が生まれる余地はありませんでした。

指揮官を代えたチームに共通する要素としてもうひとつあるのは、「フィットしない新戦力」です。トッテナムはロ・チェルソ、セセニョン、エンドンベレが全員微妙。アーセナルはニコラ・ペペが本領を発揮しておらず、ティアニーとダニ・セバージョスは負傷リタイア。マルティネッリは数年後に開花するタレントで、ダヴィド・ルイスはコシールニーの安定感を引き継げる存在ではありません。ワトフォードが2人も監督をクビにする羽目に陥ったのは、高齢化した最終ラインと前線の主力に取って代わる存在を連れて来られなかった経営陣のエラーでもあるでしょう。

長期にわたってプレミアリーグ最下位に沈んでいたワトフォードは、3人めのナイジェル・ピアソンがレギュラーを固定させ、就任以来2勝2分1敗と好転させつつあります。トロイ・ディーニーのスタメン復帰がいい起爆剤になっており、モウリーニョが来てから絶好調のデル・アリともども、キーマンが戦うマインドを取り戻したことでチームが立ち直った好例といえるのではないでしょうか。

ウェストハムは、2017-18シーズンに7ヵ月だけ指揮を執ったデヴィッド・モイーズ監督を呼び戻しました。2021年6月までという短い契約は、「プレミアリーグ残留さえ果たしてくれればOK」というショートリリーフが前提であることを示しています。デッドラインデーの前倒しで新戦力獲得の難易度が高まり、補強の失敗が目立った今季は、リヴァプールやウルヴス、シェフィールド・ユナイテッドなど「主力の離脱も不振もない完成度が高いチーム」が躍進した感があります。新しい監督たちの成功と失敗を分ける要素として、夏の不足を補う冬のマーケットの重要度が俄然高まっているのではないかと思います。いよいよ1月。リフレッシュしたチームはもちろん、課題が明確になった停滞モードのクラブのニューフェイスに注目しましょう。

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“最後はペジェグリーニ~プレミアリーグを2019年で終えてしまった監督たちを振り返る。” への1件のコメント

  1. JUDE より:

    明けましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いします。
    いつも為になる記事をありがとうございます。
    まだプレミアを見はじめて2年目ですが、
    クラブの監督という仕事とは、
    なんと苛烈な職業なのか、といつも思っています。
    オリギやシャキリ、ララナが…の文章が
    心に残りました。
    全部のチームが望むような補強は出来ないし、
    全部の監督、選手の望みを叶えるのも無理だとは
    思いますが、残りのシーズンを悔いのないよう
    全力でプレー出来るよう、と祈らずにはいられません。
    今年も更新を楽しみにしています。
    よろしくお願いします。

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