偏愛的プレミアリーグ見聞録

ヴァンサン・コンパニ、ダヴィド・シルヴァ、ヤヤ・トゥレ…。マンチェスター・シティをプレミアリーグのトップクラブに引き上げたレジェンドたちが次々とクラブを去り、10シーズンを過ごしたセルヒオ・アグエロがついに今季限りの退団を発表しました。ただひとり残ったフェルナンジーニョも、既に35歳。シーズンが終わった後、大きな決断をするかもしれません。ビルドアップの中心としてパスワークをコントロールし続けたアンカーは、後継者のロドリにポジションを譲りましたが、エースストライカーが抜けた穴を埋める存在はまだ決まっていません。

アグエロが発したステートメントを受けて、「スカイスポーツ」が次世代のゴールゲッターとなりえる顔ぶれを紹介しています。ドルトムントに今季限りで退団したいと伝えたといわれるアーリング・ブラウト・ハーランド。スパーズの絶対的エースとして7シーズンを過ごしたハリー・ケイン。セインツが契約延長を断念したと報じられたダニー・イングス。エヴァートンとマンチェスター・ユナイテッドの前線で体を張ったロメウ・ルカク。アントニオ・コンテの下で得点力に磨きをかけたラウタロ・マルティネス。いずれも得点力の高さに定評があるワールドクラスですが、いざ獲得となると高いハードルが存在する選手ばかりです。

2022年の夏になれば、6600万ポンド（約100億円）のリリース条項が発動するといわれているアーリング・ブラウト・ハーランドですが、次の夏となるとドルトムントは譲らず、1億ポンド（約152億円）を超える費用が必要といわれています。「ハーランドのファミリーがスペイン南部のマルベージャで家を買い、レアル・マドリード移籍の準備を進めている」という報道もあり、さすがのマンチェスター・シティも手を出しづらそうです。ペップを「臆病者」「犬」と罵ったミーノ・ライオラが代理人であることも、獲りにいかない理由になりえるでしょう。

今季プレミアリーグで17ゴール13アシストのハリー・ケインも、ダニエル・レヴィ会長が移籍金を吊り上げそうで、コンテ監督が19ゴールのルカクと14ゴールのラウタロ・マルティネスを簡単に手離すとは思えません。「スカイスポーツ」のリストのなかからひとり指名するなら、ダニー・イングスです。昨季プレミアリーグで38試合22ゴールという素晴らしいスタッツを残したゴールゲッターを推すのは、安いからでもエースとして適任だからでもありません。チキ・ベギリスタインとペップは、「新エースはガブリエウ・ジェズスで、優秀なバックアッパーがいればOK」と考えているのではないかと想像するからです。

2017年1月にマンチェスター・シティに加わったブラジル代表は、アグエロというアンタッチャブルな存在がいながら、プレミアリーグ123試合48ゴール20アシストというスタッツを残しています。途中出場やサイドでの起用が多いなかで、5シーズンで2回もリーグ戦2ケタを記録しているのは、並のストライカーにできることではありません。「スカイスポーツ」の記事に、2017-18シーズン以降のアグエロとジェズスのスタッツ比較が載っているのですが、90分あたりのオンターゲットは1.69対1.71、オンターゲット率は39.7%対50%でいずれもブラジル人が上。ゴール率は0.85対0.6でアグエロですが、先発出場が増えればジェズスも同等の数字を出せるでしょう。

今季は、アグエロが公式戦14試合3ゴールと苦しんでおり、チャンスが巡ってきたはずのガブリエウ・ジェズスも30試合12ゴール3アシストというおとなしめのスタッツに留まっています。デブライネやベルナルド・シウヴァの偽9番を機能させたペップは、ストライカーより得点力のあるMFとウイングに投資すると見ます。ジェズスはまだ23歳。伸びしろがあります。偉大なエースがいなくなり、ダニー・イングスとのバトルでレギュラーを奪取すれば、大化けする可能性も充分にあると思います。少し気が早い話ではありますが、チキとペップのジャッジに注目しましょう。