偏愛的プレミアリーグ見聞録

ペップ・グアルディオラが、マンチェスター・シティとの新たな契約に合意したと報じられています。「BBC」「スカイスポーツ」「テレグラフ」によると、今季限りだった契約は2026年までとなり、さらに1年の延長オプションが付いているそうです。このタイミングでのニュースには、クラブの周辺に漂うネガティブな空気を払拭したいという思いが乗せられているのかもしれません。

チキ・ベギリスタインFDの退任が発表されたのは、10月12日。エレベータークラブだったマン・シティをチャンピオンズリーグの常連にしたディレクターの引退は、5年前から宣言していたことではあるものの、「彼がいなければマンチェスターには来なかった」という指揮官を出口に誘うトリガーになりえると見られていました。

これがきっかけだったかのように、10月末のカラバオカップ4回戦でトッテナムに敗れ、まさかのアウェイ4連敗。スパーズ戦と同様に2-1のボーンマス戦も、2点のビハインドをクリアできず、CLのスポルティングCP戦とプレミアリーグのブライトン戦は、いずれも逆転負けでした。4試合とも2失点以上の守備陣も、2点めを奪えない前線も、何らかの手を打つ必要があります。

ピッチの外では、115件に及ぶプレミアリーグ財務規定違反容疑を審議する公聴会が進められています。現地メディアが「世紀の裁判」と呼ぶ10週間の激戦でも敗れれば、プレミアリーグからの追放という厳しい処分が下される可能性があります。裁定を下す独立委員会は、EFLを管轄する権限を持っていないため、「追放＝下部リーグ降格」となるかどうかは受け入れ側次第です。

不穏な空気のなかで迎えるプレミアリーグ12節は、エティハドでトッテナムとのリベンジマッチ。自身の去就に関する憶測を吹き飛ばそうとしている指揮官は、5連敗を阻止することができるでしょうか。2021-22シーズン以降、公式戦7試合で2勝1分4敗と苦しんでいる相手ではありますが、今回はあちらも厳しい状況に陥っています。

ファン・デ・フェンはハムストリングの負傷で間に合わず。アストン・ヴィラ戦で右足の親指を痛めたクリスティアン・ロメロは、アルゼンチン代表として出場したパラグアイ戦でハーフタイムにリタイアし、ペルー戦は欠場となっています。ベンタンクールは、ソン・フンミンに対する人種差別発言で7試合出場停止。ポステコグルー監督は、中央の人選に悩まされています。

リシャルルソンとオドベールも起用できず、ティモ・ヴェルナーがいけるとしても、劣勢の際の打開策は限られています。彼らの不安は、負傷者だけではありません。「スカイスポーツ」が「ドクター・トッテナム」と呼ぶ2つの敗戦も気になります。開幕から8戦未勝利だったクリスタル・パレスに敗れた後、前節では10戦未勝利のイプスウィッチに3ポイントを献上しています。

ポイントを落とし続け、自信を失ったチームを回復させるドクターは、4連敗中の王者にも勝利という良薬を処方してしまうのでしょうか。レギュラーのCBコンビを欠いた名医ポステコグルーが、ハイラインという劇薬を投じれば、ペップ契約延長合意という精神安定剤を注入された選手たちは一気に快方に向かいそうです。

ルベン・ディアスやジョン・ストーンズなど、最終ラインの主軸が復帰間近のマン・シティは、満身創痍のスパーズには勝てるのではないでしょうか。ドクター・トッテナムのオペは成功するのか、失敗するのか。ええと、これは成功がマン・シティの勝利で失敗はトッテナムの3ポイントです。この比喩、使ってみるとややこしいですね…。