イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

選手や試合を巻き込まないでほしい。マンチェスター・ユナイテッドの一部サポーターの抗議活動に思うこと。

「警察、プレミアリーグ、トラフォード・カウンシルおよびクラブが協議した結果、本日の抗議活動を受けて安全性とセキュリティが考慮され、リヴァプールとのわれわれの試合は延期することになりました。今後、プレミアリーグとの間で、日程変更の協議が実施されます」

「ファンは、マンチェスター・ユナイテッドに情熱を抱いており、われわれは表現の自由と平和的な抗議活動の権利を完全に認めています。しかし、チームを混乱させ、他のファンやスタッフ、警察を危険にさらす行為があったことは遺憾です。警察のサポートに感謝するとともに、今後の捜査に協力していきたいと考えています」(マンチェスター・ユナイテッド公式サイト「CLUB STATEMENT ABOUT UNITED V LIVERPOOL」より)

ノースウェストダービーと称されるこの試合を、以前から楽しみにしていました。ヨーロッパリーグ準決勝ファーストレグで、ローマに6-2と大勝したスールシャール監督は、昨季プレミアリーグ王者に対してベストメンバーをチョイス。TOP4フィニッシュをめざすクロップ監督も、サラー、フィルミーノ、マネを前線に並べて勝ちにきていました。

先発する22人は既に発表されていたのですが、オールド・トラフォードにサポーターが乗り込み、ピッチに侵入したため、キックオフが遅れているというニュースが入りました。「BBC」は、試合が始まる前にレポートを配信。「GLAZER OUT」のバナーを掲げた人々が、発煙筒を焚いて叫んでいる写真を掲載しています。

マンチェスター・ユナイテッドの選手がステイしているロウリー・ホテルに乗り込んで抗議したサポーターもいるとのこと。両チームの選手たちはバスに乗れず、レフェリーのマイケル・オリヴァーやガリー・ネビルもスタジアムの前で車を動かせなくなり、それぞれ到着が大幅に遅れると伝えられました。キックオフの30分前から、「時間は未定だが、試合は行われる」というアナウンスがなされていたのですが、現地時間17時50分に延期と発表されました。プレミアリーグ創設以来、人為的なトラブルで試合がキャンセルされるのは初めてです。

「ロウリーの外に約200人、オールド・トラフォードには1000人以上が集まっていた。警察官は、注意深く状況を監視しながら声をかけ続けたが、集団が大きくなると、その場にいた人々の多くが平和な抗議を行うつもりがないことが明らかになった。照明弾が放たれ、警察官にはボトルが投げつけられた」

「オールド・トラフォードの外で抗議していた人々は、とりわけ警察に対して攻撃的かつ敵対的だった。約100人がグラウンドに侵入した。ユナイテッドのスタッフのなかには、部屋に閉じこもらなければならなかった者もいた。スタジアムにいた人たちは追い出されたが、外では警官と馬にボトルやバリヤーが投げつけられ、敵意が高まっていた」(グレーターマンチェスター警察/スカイスポーツより)

マンチェスターユナイテッドのサポーターズトラストは、オールド・トラフォードでの事件について、「グレイザー家がクラブを買収してから16年の集大成」とコメントしています。

「オーナーがクラブから10億ポンドを奪い、フィールドとオフの双方で衰退を目撃した。われわれにとって、スタジアムへの侵入は想定外だった。ファンのために門が開かれたという噂があるが、そうでなかったとしても、マンチェスター・ユナイテッドのスタッフの大多数がファンに共感していると信じている。試合に参加できなかったサポーターは、クラブに必要な変化について明確に声を挙げ、平和に抗議するために現れたのだ」

だとすれば、彼らも非を認めるべきです。延期決定のトリガーとなったのは、2人の警官の負傷でしょう。平和な抗議を志向していたのであれば、絶対に起こってはならないことでした。欧州スーパーリーグ構想において主導的な役割を果たしたクラブを、謝罪ひとつで許せない気持ちはよくわかります。クラブに負の遺産をもたらしたグレイザーは、今こそけじめをつけるべきと強く思います。

趣旨には賛同しますが、今回のアプローチは間違っています。プレミアリーグとヨーロッパリーグが佳境の今、選手たちやクラブのスタッフにストレスを感じさせるレベルの暴挙で、何がよくなるというのでしょうか。彼らを巻き込まないでほしい。大事な試合を人質に取らないでほしい。オーナーがマンチェスター・ユナイテッドの価値と資産を目減りさせたと主張しながら、ゲームのキャンセルによるコストやスタジアムの修繕費をクラブに払わせるという大ボケのオチは、「オマエもやないか。なんでやねん。いい加減にしろ」のひとことです。

「欧州スーパーリーグという弁解の余地のない提案と、グレイザーからの到底受け入れられない謝罪をきっかけとしたい。ユナイテッドの所有権と運営方法について、ファンにオーナーシップの有意義なシェアを認め、建設的な意見を表明させる必要がある(マンチェスターユナイテッド・サポーターズトラスト)」。そうですよね。継続するべきは、まさに有意義な議論と、トロフィーをめざすクラブのサポートです。暴力的な革命によってオーナー追放に成功するという悪しき前例を創ってはいけません。(オールド・トラフォード 写真著作者/André Zahn)


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“選手や試合を巻き込まないでほしい。マンチェスター・ユナイテッドの一部サポーターの抗議活動に思うこと。” への4件のフィードバック

  1. ルーニー より:

    選手や試合を巻き込まないでほしい。本当に、この一言だと思います。
    特にホテルにまで行くって、愛するクラブの選手の事を傷つける行為ですよ。本当に信じられません
    この事がELやPLの戦いに影響を及ぼして最悪の結果にならない事を祈ります

  2. Motsuki909 より:

    スーパーリーグ構想については、選手/監督/スタッフも被害者でしょう。結果的に彼らを苦しめる抗議は意味が無いと思います。SNS上でBBCののニュース映像を見ましたが、本当に抗議する気があるとは思えませんでした。ただ単に暴れたいだけにしか見えず、セキュリティにも疑問符が付きました。まして、あんな場所に子どもを連れ出している事も理解できません。

    何の罪も無い選手や監督が不利益を被って、結果的に自分の応援するクラブに迷惑を掛けた事を後悔すべきだと思います。これで万が一、オーナー陣営が退任すれば“サポーターの勝利”って図式になるのは良くないです。おっしゃる通り、こんなやり方で“成功事例”にしてはいけないと思います。絶対に。

  3. JUDE より:

    更新お疲れ様です。
    イングランドのサポーターは熱い。
    勝手にそう思っていて、よくある事なのかな、くらいに思ってました。初めてなのですね。記事を読んで、みなさんのおっしゃるとおり、こういう事で前例を作ってはならない、と強く感じました。

  4. ペップの街 より:

    勿論今回のサポーターの蛮行は許されるものではありません。これを機にMakotoさんにはクラブの歴史、オーナーの問題、あまりにも高額な選手年俸の問題等語っていただきたいです。英国という国には親近感を感じる反面したたかさというかもっと言えば綺麗事に隠れた暗部も気になります。
    シティも含めてロシア人やらアラブの富豪やらが金に物を言わせてクラブを買い取り、好き勝手に運営してサポーターを蔑ろにしてないかなど。

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