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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

不振の理由は戦術と人材のミスマッチ?テン・ハフの理想とマンチェスター・ユナイテッドの現実。

プレミアリーグ1年めのエリック・テン・ハフが評価を高めたのは、初めてのマンチェスターダービーで6-3という惨敗を喫してからでした。リヴァプールに7-0という記録的な敗戦を喫し、トーンダウンするまでの32試合は25勝5分2敗。突如、覚醒したラシュフォードは、この間全試合出場で22ゴールをゲットしています。

クリスティアーノ・ロナウドの度重なるトラブルと、ジェイドン・サンチョの離脱という難しい問題を抱えながらの快進撃は、マネジメントに長けた指揮官という印象を与えました。「しかしそれは、現実的なセットアップでしかなかった」。マンチェスター・ユナイテッドの現状をレポートした「アスレティック」のオリヴァー・ケイ記者は、指揮官のジレンマを喝破しています。

「守備の構造、反発力、粘り強さ、そして勝利につながる鋭利なカウンターには称賛すべき点が多かった。しかしそれはどんなときでも実利を重視した設計でしかなく、テン・ハフのヴィジョンや将来の成功を実現ためのテンプレートというより、チャレンジングな最初のシーズンの戦い方を構築するための土台のように感じられた」

アヤックスでエールディヴィジを3回制したマネージャーがやりたかったのは、ポゼッションとハイテンポのパスワークをベースとしたモダンなフットボール。「ペップやアルテタと同じベクトル」と表現しても違和感はないでしょう。「アスレティック」の記者は、昨季のスタッツを用いて、勝てば勝つほど彼の理想からは遠のいていたと指摘しています。

「リヴァプール、アーセナル、マンチェスター・シティ、バルセロナを撃破した4試合は、ポゼッションの平均が35.8%だった。パス本数の平均は、相手が516本で自らは242本。パスの少なさはテン・ハフ就任後の下から6位までに入っている。他の2戦は、2-2のドローだったバルセロナとのアウェイゲームと、カラバオカップ制覇からわずか1週間後に7-0で惨敗したリヴァプール戦だ」

マン・ユナイテッドの戦い方を検証した記者は、「オランダ人監督が現実路線を余儀なくされたのは、就任直後のマーケットでフレンキー・デ・ヨングという戦術のキーマンを獲れなかったから」といいます。デクラン・ライスやロドリのように、長短を交えたパスワークとドリブルで中盤をコントロールするMFの獲得は、新しいクラブでコンセプトを体現する第一歩でした。

Bプランのカゼミーロは、シンプルなボールさばきと粘り強い守備が強みです。彼の獲得は成功でしょう。昨季プレミアリーグにおける相手のボールタッチ1000回あたりのタックル、ファール、チャレンジロストを合算すると、カゼミーロを上回るのはフラムのパリーニャだけだそうです。リアリズムに徹した指揮官が、カウンターをベースとするうえでは相性は抜群です。

プレミアリーグでTOP4フィニッシュ、カラバオカップ制覇。初年度のミッションを達成した指揮官は、2回めの夏に自らの理想に近づくための大型補強を敢行しました。ビルドアップをよりスムーズにするオナナ、運動量と前への推進力があるメイソン・マウント、スピードが魅力の新鋭ホイルンド。しかし、予算不足のなかで進めた補強はバランスが悪かったといわざるをえません。

この夏のマーケットを振り返ると、「最前線と中盤のキーマンが高額すぎて、懸案だったセントラルMFとCBの適任を獲得できなかった」となります。2022年の冬にマン・シティに加わったフリアン・アルバレスが1400万ポンドだったことを思い出せば、実績不足のホイルンドの7200万ポンドは高すぎ、メイソン・マウントの6000万ポンドはジェームズ・マディソンの3割増しです。

マグワイアとマクトミネイが売れなかったのも誤算で、ジョニー・エヴァンスの活用とアムラバトで間に合わせた感があります。ペップは2年めの夏に、エデルソン、ベルナルド・シウヴァ、カイル・ウォーカーを獲得してリーグ制覇。アルテタは8位と苦しんだものの、トーマスとガブリエウという先を見据えた補強を実施しています。

新たな戦術に適応できる選手を獲れず、ましてやリサンドロ・マルティネスやルーク・ショーというコンセプトの具現化の必須アイテムを負傷で失ったならば、もう1年カウンターに徹すると腹をくくったほうがいいのではないでしょうか。ラシュフォード、ホイルンド、ガルナチョと適材は揃っています。

運動量を必要としないからこそ、カゼミーロとエリクセンの2センターは成立し、ビルドアップはシンプルでOKと宣言すればヴァランは素晴らしいCBです。ブルーノ・フェルナンデスのキラーパスは、少人数同士の攻防で威力を発揮します。低いラインでの守備力とスピード重視となれば、ワン=ビサカの復帰は朗報です。

4位リヴァプールとの差は8ポイント。1年前の快進撃を再現できれば、埋められるギャップです。オールド・トラフォードのカラバオカップで、クイックリスタートと長短のカウンターで3発を決めたニューカッスルは、中盤をコントロールできる人材を欠いたときの戦い方を教えてくれました。さて、テン・ハフ監督の巻き返し策は…?


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