偏愛的プレミアリーグ見聞録

最後にアンフィールドで勝ってから、そろそろ8年になるんですね…。ユルゲン・クロップ監督の就任から、3ヵ月を経た2016年1月17日。こちらの指揮官はファン・ハールです。0-1の決勝ゴールは78分。フェライニのヘッドがクロスバーに阻まれると、こぼれ球を決めたのはウェイン・ルーニーでした。

プレミアリーグ通算176ゴールは、ひとつのクラブで積み上げたレコード。唯一のオンターゲットで勝ち切ったアウェイチームのマン・オブ・ザ・マッチは、神セーブ連発のデ・ヘアです。ハイライトは50分、エムレ・ジャンがスモーリングを抜いて左足で狙ったシュートを、足でさばいたビッグセーブ！その後の7シーズンで、リヴァプール戦のダブル達成は1度もありません。

いや、ダブルどころか、アンフィールドの公式戦8試合でわずか1ゴール。唯一のゴールシーンは2018年12月16日、1-0の33分にイーブンに戻したジェシー・リンガードです。ルカクのクロスをアリソンがファンブルし、スライディングで押し込んだゴールは、終盤のシャキリの2発にかき消されました。

「モウリーニョは解任するな！」というレッズサポーターのチャントは、2日後の残念なアナウンスのトリガーのようでした。マンチェスター・ユナイテッドは、敵地で3分5敗。ドローはすべて0-0で、敗戦は2点差以上。直近の2戦は4-0、7-0という惨敗です。最も嫌な選手を挙げろといわれれば、即答でモー・サラー。2021-22シーズンからのホーム＆アウェイ4試合で8ゴールとは…！

さて、そんなわけで、毎年恒例の不愉快な90分が目前に迫っています。今年の3月に、リサンドロ・マルティネス、ヴァラン、ルーク・ショー、カゼミーロ、ブルーノ、ラシュフォードとほぼベストメンバーで7発喰らったマンチェスター・ユナイテッドは、「カラバオカップ3回戦か！」とツッコミを入れたくなるつぎはぎラインナップで登場するはずです。

何しろ、負傷者リストが豪華です。リサンドロ・マルティネス、マグワイア、リンデロフ、マラシア、ルーク・ショー、エリクセン、メイソン・マウント。サンチョに復帰する気配はありません。よりによってブルーノ・フェルナンデスがここでサスペンデッドで、ラシュフォードは病み上がり。マルシアルは欠場予定で、スタメンの総ゴール数はサラー以下です。

対するレッズは、サラー、ファン・ダイク、ルイス・ディアス、ショボスライ、アーノルドが勝ち抜けを決めていたヨーロッパリーグをスルーしています。ロバートソンがいなくても、アントニーが大暴れするとは思えず、マック・アリスターが間に合わなければフラーフェンベルフを入れるのみでしょう。机の上で数字や選手を並べても、勝てる要素は見当たりません。

それでも何らかの突破口を求めるなら、奪ったボールを素早く前線に預けるべく、2トップを採用するのがいいのではないかと思います。アムラバト、メイヌー、マクトミネイを最終ラインの前に配してスペースを埋め、トップ下にハンニバル・メイブリ。ホイルンドのワントップは縦のボールを狙われるので、ガルナチョとの2トップにして出しどころを複数にするという案です。

おお、「アスレティック」のマーク・クリッチリー記者が、「ルーク・ショーは間に合う」といっています。最終ラインはワン＝ビサカ、ヴァラン、ルーク・ショー、ダロトで、10番は劣勢の際のオプションでしょうか。どんな布陣で戦うにしても、鬼門のアンフィールドでは、テン・ハフの理想を捨ててシンプルなカウンター狙いに徹したほうがいいでしょう。

「あの7-0は、人生に一度あるかないかの異常な結果だった。次の試合に役立てられるのは、7-0で負けたチームであって、勝ったチームではない。あれを考慮せずにいえば、われわれリヴァプールFCは、ホームのアンフィールドで歴史的なライバルとフットボールをするだけだ。特別な試合になるはず。この状況をふまえて、全力を尽くす」（ユルゲン・クロップ）

何か気を遣っていただいたみたいで、恐縮です。攻撃的で美しいフットボールをめざして7-0惨敗と、自陣にこもって必死に守って1-0で負けるのと、どちらがいいかといわれれば後者です。どんな手を使ってでも勝ちにいこうとするチームが見たい。あれ？当たり前のように敗戦前提の二択にしてしまいました。すみません。いや、だって、アンフィールドですよね…？