偏愛的プレミアリーグ見聞録

「ターニングポイントがあった。ピッチの上ではなく、メンタルによるものだね。そう、昨シーズンはアムステルダムからミランに移籍したけど、適応はとても簡単だった。でも、ここでは7～8ヵ月かかった。試合を重ねるごとに、学んでいくしかなかった。最後に頂点に立てると願っている」

「難しい時期だった。でも今は少しよくなっている。新しい国で、何もかもが新鮮で、いろんなことがあったから家にいるような気分にはなれなかった。今はいい感じだよ。パフォーマンスについては話したくない。自分がどんなGKかわかっているから。一番大切なのは、自分が幸せであること」

「チームメイトたちは、自分がどういうGKで、なぜこのクラブに来たのかをいつも思い出させてくれた。『アンドレ、2年かかった選手もいれば、半年かかった選手もいて、時間を必要としない選手もいる。君には状況を好転させる個性がある』といってくれた」

日曜日のマンチェスターダービーは、アンドレ・オナナにとって忙しい1日になるでしょう。オールド・トラフォードでは、0-3で完敗。ホイルンドとリサンドロ・マルティネスを欠いたチームが、敵地エティハドで簡単に勝てるとは思えません。守護神のビッグセーブ連発で接戦に持ち込み、カウンターを炸裂させ、1ポイントを得られれば成功といえるでしょう。

マンチェスター・ユナイテッドがデ・ヘアの後継者の獲得を発表したのは、2023年7月でした。移籍金は4390万ポンドで、340万ポンドのアドオンがあると報じられました。プレミアリーグは初めてだったGKは、序盤戦でミスを連発。CLのバイエルン戦でサネのシュートを後逸し、ガラタサライ戦ではカゼミーロへのパスをメルテンスにカットされ、PK献上の原因となっています。

直後のブレントフォード戦でもイェンセンのシュートを弾き切れず、ガラタサライとのリターンマッチでは、0-2のリードから3つのミスを犯して3-3のドロー。「CLの決勝でプレイした数ヵ月後に、ファーストステージでノックアウトされたのは大きな教訓だった」と語るGKが「悪夢」という言葉を口にしたのは、イスタンブールの夜を思い出したからではないでしょうか。

CLの敗退は、気持ちを切り替えるターニングポイントになったのではないかと思います。バイエルンに敗れた直後のリヴァプール戦は、シュート34本を浴びながらも、8本のオンターゲットをすべてストップしてスコアレスドロー。アストン・ヴィラとのアウェイゲームでもビッグセーブを連発し、1-2の勝利の立役者となっています。

10月にはセーブ率68.4％で11位だったカメルーン代表GKは、その後の活躍で74.0％に引き上げ、アリソンとアレオラに次ぐ3位に食い込んでいます。耐える時間が長くなりそうなダービーですが、貴重な経験になるであろうメイヌー、最後まで走り続けてくれるブルーノ、そして自信を取り戻したオナナのパフォーマンスには期待したいと思います。ぜひ、次につながる爪痕を。