2024.03.24 マンチェスター・ユナイテッドの話題
「マネージャーではなくヘッドコーチ」組織改革を進めるサー・ラトクリフ、テン・ハフの処遇は?
「2023-24シーズンのマンチェスター・ユナイテッドのMVPは誰か?」と問われれば、即座に「サー・ジム・ラトクリフ」を指名します。中長期的な視座のない補強を繰り返して、クラブの戦績と会計を悪化させたジョン・マータフからFDの肩書きを外し、ニューカッスルをCLに導いたダン・アシュワースを加えようとしているからです。
2021年3月に就任したFDは、ビッグネームが大好きなエド・ウッドワードを諫められず、監督に対する適切なレポーティングという重要な役割も果たせませんでした。最初の夏はクリスティアーノ・ロナウド、ジェイドン・サンチョ、ラファエル・ヴァラン。当時、指揮を執っていたスールシャール監督は、プレスに加わらないCR7の加入が戦い方を難しくしたと述懐しています。
スタメンから外すと機嫌が悪くなるスーパースターに手を焼いた指揮官は、9月末からのプレミアリーグで1勝1分5敗と崩れたチームを立て直す術を持たず、あえなく解任。FDの仕事のひとつは指揮官のアサインと評価ですが、ラングニック招聘もこのシーズンの失敗のひとつです。テン・ハフと契約を結んだのは2022年4月。次の夏の強化も、うまくいったとはいえません。
リサンドロ・マルティネスとエリクセンはいいとしても、カゼミーロは30代にしては移籍金が高額で、アントニーの総額8500万ポンドは明らかにリスキー。マラシアはルーク・ショーには及ばないといい切っていいでしょう。冬の補強はローンで、CR7が抜けた穴を埋めるヴァグホルストと、負傷したエリクセンの代役となるザビッツァー。いずれも完全移籍には至りませんでした。
そして昨夏はオナナ、ホイルンド、メイソン・マウント、ジョニー・エヴァンス、アムラバト。最初の4ヵ月は苦しんだオナナは自らのプレイを取り戻し、ホイルンドも公式戦31試合13ゴールと結果を出せるようになっていますが、強化すべきだった最終ラインは予算オーバーでステイとなりました。問題は個々の選手より、3年トータルで見たときの投資のあり方です。
ロナウドに莫大なサラリーを支払い、移籍金に糸目を付けずサンチョ、アントニー、ホイルンドを獲ったのに、残された希望は21歳の新進ストライカーのみ。最初の2年で獲得した選手のうち、今も戦力となっているのは、絶対的な存在とはいえなくなったカゼミーロとヴァランだけです。このスカッドで、新戦力が毎年活躍するリヴァプールとアーセナルに勝てるわけがありません。
「テン・ハフがほしがるのは、アヤックス時代にともに働いた選手ばかり」という批判があるようですが、スカウティングによる情報提供が足りないディレクターの責も問うべきでしょう。さて、そのテン・ハフ監督ですが、2024-25シーズンも指揮を執るのでしょうか。現地のメディアもサポーターも、賛否両論のようです。
まずはポジティブな要素を挙げてみましょう。初年度のプレミアリーグ3位とカラバオカップ制覇、2年連続のFAカップベスト4、ガルナチョとメイヌーの抜擢と成長、マクトミネイの攻撃力の活用。年明けから9勝1分2敗と好調をキープしており、「シーズンを通じて活躍しているのがブルーノとダロトだけなのに、何とかTOP4を視界に捉えている」と評価することはできるでしょう。
懸念材料のほうは、そうはいってもプレミアリーグ6位でCL惨敗、サンチョとアントニーをはじめフィットしない選手が多いこと、厳しいトレーニングによる負傷者の多発とモチベーションの低下。ルートン、フラム、ブレントフォード、ボーンマスより少ないプレミアリーグ39ゴールという貧攻は、ケガ人が多くても許容できないという声もあります。
サー・ジム・ラトクリフと経営ボードは、来季の指揮官については沈黙を守っています。ただし、組織のあり方は変える方針のようです。「テレグラフ」のマイク・マグラス記者は、「マンチェスター・ユナイテッドは現在のマネージャーのあり方を見直し、ヘッドコーチを任命することを検討している」と伝えています。
「ラトクリフ氏は、クラブ改革の重要なポイントは、サー・アレックス・ファーガソンのようにマネージャーが複数の部門を掌握する伝統的なモデルからの脱却と考えている。新しいモデルでは、ヘッドコーチはキャリントンのトレーニングピッチに集中し、リクルーティングはオマール・ベラダCEOと次期SDのダン・アシュワースが指揮を執ることになる」
これによって監督とディレクターの責任範囲が明確になり、「CEOや監督に迫られるとグリーンライトを灯す壊れた信号機のようなFD」という悪しき歴史を繰り返すことはなくなるでしょう。であれば、テン・ハフ監督に3年めの巻き返しを期待するのもいいのではないかと思います。リヴァプール戦の素晴らしい戦い方に敬意を表しながら。
2021年3月に就任したFDは、ビッグネームが大好きなエド・ウッドワードを諫められず、監督に対する適切なレポーティングという重要な役割も果たせませんでした。最初の夏はクリスティアーノ・ロナウド、ジェイドン・サンチョ、ラファエル・ヴァラン。当時、指揮を執っていたスールシャール監督は、プレスに加わらないCR7の加入が戦い方を難しくしたと述懐しています。
スタメンから外すと機嫌が悪くなるスーパースターに手を焼いた指揮官は、9月末からのプレミアリーグで1勝1分5敗と崩れたチームを立て直す術を持たず、あえなく解任。FDの仕事のひとつは指揮官のアサインと評価ですが、ラングニック招聘もこのシーズンの失敗のひとつです。テン・ハフと契約を結んだのは2022年4月。次の夏の強化も、うまくいったとはいえません。
リサンドロ・マルティネスとエリクセンはいいとしても、カゼミーロは30代にしては移籍金が高額で、アントニーの総額8500万ポンドは明らかにリスキー。マラシアはルーク・ショーには及ばないといい切っていいでしょう。冬の補強はローンで、CR7が抜けた穴を埋めるヴァグホルストと、負傷したエリクセンの代役となるザビッツァー。いずれも完全移籍には至りませんでした。
そして昨夏はオナナ、ホイルンド、メイソン・マウント、ジョニー・エヴァンス、アムラバト。最初の4ヵ月は苦しんだオナナは自らのプレイを取り戻し、ホイルンドも公式戦31試合13ゴールと結果を出せるようになっていますが、強化すべきだった最終ラインは予算オーバーでステイとなりました。問題は個々の選手より、3年トータルで見たときの投資のあり方です。
ロナウドに莫大なサラリーを支払い、移籍金に糸目を付けずサンチョ、アントニー、ホイルンドを獲ったのに、残された希望は21歳の新進ストライカーのみ。最初の2年で獲得した選手のうち、今も戦力となっているのは、絶対的な存在とはいえなくなったカゼミーロとヴァランだけです。このスカッドで、新戦力が毎年活躍するリヴァプールとアーセナルに勝てるわけがありません。
「テン・ハフがほしがるのは、アヤックス時代にともに働いた選手ばかり」という批判があるようですが、スカウティングによる情報提供が足りないディレクターの責も問うべきでしょう。さて、そのテン・ハフ監督ですが、2024-25シーズンも指揮を執るのでしょうか。現地のメディアもサポーターも、賛否両論のようです。
まずはポジティブな要素を挙げてみましょう。初年度のプレミアリーグ3位とカラバオカップ制覇、2年連続のFAカップベスト4、ガルナチョとメイヌーの抜擢と成長、マクトミネイの攻撃力の活用。年明けから9勝1分2敗と好調をキープしており、「シーズンを通じて活躍しているのがブルーノとダロトだけなのに、何とかTOP4を視界に捉えている」と評価することはできるでしょう。
懸念材料のほうは、そうはいってもプレミアリーグ6位でCL惨敗、サンチョとアントニーをはじめフィットしない選手が多いこと、厳しいトレーニングによる負傷者の多発とモチベーションの低下。ルートン、フラム、ブレントフォード、ボーンマスより少ないプレミアリーグ39ゴールという貧攻は、ケガ人が多くても許容できないという声もあります。
サー・ジム・ラトクリフと経営ボードは、来季の指揮官については沈黙を守っています。ただし、組織のあり方は変える方針のようです。「テレグラフ」のマイク・マグラス記者は、「マンチェスター・ユナイテッドは現在のマネージャーのあり方を見直し、ヘッドコーチを任命することを検討している」と伝えています。
「ラトクリフ氏は、クラブ改革の重要なポイントは、サー・アレックス・ファーガソンのようにマネージャーが複数の部門を掌握する伝統的なモデルからの脱却と考えている。新しいモデルでは、ヘッドコーチはキャリントンのトレーニングピッチに集中し、リクルーティングはオマール・ベラダCEOと次期SDのダン・アシュワースが指揮を執ることになる」
これによって監督とディレクターの責任範囲が明確になり、「CEOや監督に迫られるとグリーンライトを灯す壊れた信号機のようなFD」という悪しき歴史を繰り返すことはなくなるでしょう。であれば、テン・ハフ監督に3年めの巻き返しを期待するのもいいのではないかと思います。リヴァプール戦の素晴らしい戦い方に敬意を表しながら。
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