2024.07.21 マンチェスター・ユナイテッドの話題
現地記者が分析「早期の新戦力獲得と売却を実現したマンチェスター・ユナイテッドの4つの変化」
ボローニャから獲得したジョシュア・ザークツィーは3650万ポンド、レアル・マドリードとの争奪戦を制したレニー・ヨロはアドオン込みで5890万ポンド。オマール・ベラダCEOとダン・アシュワースSDが着任してから、新戦力獲得のスピードが上がったマンチェスター・ユナイテッドは、余剰戦力の売却のほうも順調に進んでいます。
アルバロ・フェルナンデス、ファン・デ・ベーク、カンブワラ、グリーンウッドの売却で手に入れる総額は4890万ポンド。高額サラリーのヴァランとマルシアルが退団したことで、固定人件費は大幅な減額となっています。新体制になってから3週間。補強戦略、交渉のプロセス、契約内容は、エド・ウッドワードやジョン・マータフが君臨した悪しき時代とは明確に変わっています。
サー・アレックス・ファーガソンが勇退してからの3年は大混乱で、成長を見据えた補強はルーク・ショーとマルシアルのみ。彼らとファン・マタ以外に、長く貢献してくれた選手はいませんでした。ジョゼ・モウリーニョを招聘した2016年からの補強は、ピークを過ぎたベテランと移籍金が上がりきったワールドクラスばかりでした。
イブラヒモヴィッチ、ファルカオ、カバーニ、クリスティアーノ・ロナウドは全員2年以内にアウト。高値で引き入れたディ・マリア、ポグバ、ルカク、ムヒタリアン、アレクシス・サンチェス、マグワイアは本領発揮とはいえず、成功したビッグネームはマティッチとブルーノ・フェルナンデスぐらいです。
2019年には、ザルツブルグのハーランドとバーミンガムのベリンガムを引き入れようとして、ドルトムントに完敗。欧州スーパーリーグへの参加表明による混乱の責任を取り、2021年に辞任したウッドワードの最後の仕事は、4200万ポンドのヴァランと7300万ポンドのジェイドン・サンチョ、スールシャールを困惑させたCR7の獲得と、カマヴィンガの獲り逃しでした。
ウッドワード時代の最後に就任した初代SDのジョン・マータフは、激痛の人選ミスです。サンチョもヴァランも、8500万ポンドのアントニーと7000万ポンドのカゼミーロも、壊れた信号機としかいいようがありません。獲得自体を不要だったとはいいませんが、ライバルなしの単独交渉で相手の言い値に乗っかってしまったのは、クラブの財政にダメージを与える大きなエラーです。
かくしてマンチェスター・ユナイテッドは、ビッグタイトルとは無縁となり、補強予算を満足に用意できないクラブになってしまいました。そんななかで、クラブの立て直しを図るサー・ジム・ラトクリフと新たな経営ボードには、これまでにはなかった期待感があります。「ESPN」のマーク・オクデン記者は、新体制による変化について、3つのポイントを挙げています。
最も大きな変化は、補強戦略です。「大金を投じて成功を買うより、ネクストムバッペと契約したい。ムバッペを買うのはさほど賢いこととはいえない。誰でも価値がわかるからだ。難しいのは、次のムバッペ、次のベリンガム、次のロイ・キーンを見つけることだ」。サー・ラトクリフの言葉通り、ザークツィーとレニー・ヨロはワールドクラスに育て上げたいタレントです。
2つめの変化は、余剰戦力の売却のジャッジがスピーディーになったこと。オクデン記者によると、サー・ラトクリフは過去5年の選手の売買について査定を行い、「過剰な移籍金の支払いと、高騰を招いた優柔不断なジャッジ」「フリーエージェントを回避するための狙いなき契約延長」を排除するという方針を打ち出したそうです。
3つめは、選手の売買に関するテン・ハフ監督の役割を縮小したこと。「ESPN」のレポートは、就任初年度の補強失敗について「指揮官がほしがったバルセロナのフレンキー・デ・ヨンクを深追いしすぎて補強が遅れ、開幕からの連敗でパニックを起こしてカゼミーロに飛びついてしまった」と指摘しています。
専門メディアのシニアライターの秀逸な記事は、ポイントを3つに絞っているのですが、私は4つめの変化も重要と考えています。「柔軟な獲得戦略と的確な契約」。3400万ポンドのバイアウト条項があったザークツィーの獲得においては、選手を先に口説き落としてボローニャと交渉。レアル・マドリードに行きたがっていたレニー・ヨロは、クラブとの合意で先手を取っています。
リールに5200万ポンドを提示したのは、3000万に満たない額を提示していたレアル・マドリードの巻き返しを封じるためでしょう。所属クラブを味方につけてから選手を説得し、一気に獲得に漕ぎ着けたプロセスは見事でした。ヴァランとカマヴィンガの争奪戦で敗れた苦い過去があるだけに、今回の逆転は感無量です。
ファン・デ・ベークやグリーンウッド、カンブワラの売却においては、相手が承諾しやすいように初期費用を軽減しつつ、彼らの成長や復活を見越して、次の移籍金からマージンを得るセルオン条項を付けています。交渉のクオリティも、今までの経営ボードとディレクターと比べると明確に向上しているといえるでしょう。
今後はさらに、2025年に契約が切れるマグワイア、リンデロフ、ワン=ビサカと、既に引き合いがあるマクトミネイとカゼミーロも売却となる可能性があります。加えて、プレミアリーグにフィットしていないアントニーは、週給7万ポンドを負担するクラブがあればローン移籍を認めると伝えられています。
「シャツが売れる選手から シャツの売上が伸びる選手へ」。補強戦略と交渉の戦術を変えたマンチェスター・ユナイテッドは、数年後にはビッグタイトルを争えるポジションに戻ってくるのではないでしょうか。ホイルンド、ガルナチョ、メイヌー、アマド・ディアロ、ザークツィー、レニー・ヨロらが主力として活躍する未来のチームが、今から楽しみです。
アルバロ・フェルナンデス、ファン・デ・ベーク、カンブワラ、グリーンウッドの売却で手に入れる総額は4890万ポンド。高額サラリーのヴァランとマルシアルが退団したことで、固定人件費は大幅な減額となっています。新体制になってから3週間。補強戦略、交渉のプロセス、契約内容は、エド・ウッドワードやジョン・マータフが君臨した悪しき時代とは明確に変わっています。
サー・アレックス・ファーガソンが勇退してからの3年は大混乱で、成長を見据えた補強はルーク・ショーとマルシアルのみ。彼らとファン・マタ以外に、長く貢献してくれた選手はいませんでした。ジョゼ・モウリーニョを招聘した2016年からの補強は、ピークを過ぎたベテランと移籍金が上がりきったワールドクラスばかりでした。
イブラヒモヴィッチ、ファルカオ、カバーニ、クリスティアーノ・ロナウドは全員2年以内にアウト。高値で引き入れたディ・マリア、ポグバ、ルカク、ムヒタリアン、アレクシス・サンチェス、マグワイアは本領発揮とはいえず、成功したビッグネームはマティッチとブルーノ・フェルナンデスぐらいです。
2019年には、ザルツブルグのハーランドとバーミンガムのベリンガムを引き入れようとして、ドルトムントに完敗。欧州スーパーリーグへの参加表明による混乱の責任を取り、2021年に辞任したウッドワードの最後の仕事は、4200万ポンドのヴァランと7300万ポンドのジェイドン・サンチョ、スールシャールを困惑させたCR7の獲得と、カマヴィンガの獲り逃しでした。
ウッドワード時代の最後に就任した初代SDのジョン・マータフは、激痛の人選ミスです。サンチョもヴァランも、8500万ポンドのアントニーと7000万ポンドのカゼミーロも、壊れた信号機としかいいようがありません。獲得自体を不要だったとはいいませんが、ライバルなしの単独交渉で相手の言い値に乗っかってしまったのは、クラブの財政にダメージを与える大きなエラーです。
かくしてマンチェスター・ユナイテッドは、ビッグタイトルとは無縁となり、補強予算を満足に用意できないクラブになってしまいました。そんななかで、クラブの立て直しを図るサー・ジム・ラトクリフと新たな経営ボードには、これまでにはなかった期待感があります。「ESPN」のマーク・オクデン記者は、新体制による変化について、3つのポイントを挙げています。
最も大きな変化は、補強戦略です。「大金を投じて成功を買うより、ネクストムバッペと契約したい。ムバッペを買うのはさほど賢いこととはいえない。誰でも価値がわかるからだ。難しいのは、次のムバッペ、次のベリンガム、次のロイ・キーンを見つけることだ」。サー・ラトクリフの言葉通り、ザークツィーとレニー・ヨロはワールドクラスに育て上げたいタレントです。
2つめの変化は、余剰戦力の売却のジャッジがスピーディーになったこと。オクデン記者によると、サー・ラトクリフは過去5年の選手の売買について査定を行い、「過剰な移籍金の支払いと、高騰を招いた優柔不断なジャッジ」「フリーエージェントを回避するための狙いなき契約延長」を排除するという方針を打ち出したそうです。
3つめは、選手の売買に関するテン・ハフ監督の役割を縮小したこと。「ESPN」のレポートは、就任初年度の補強失敗について「指揮官がほしがったバルセロナのフレンキー・デ・ヨンクを深追いしすぎて補強が遅れ、開幕からの連敗でパニックを起こしてカゼミーロに飛びついてしまった」と指摘しています。
専門メディアのシニアライターの秀逸な記事は、ポイントを3つに絞っているのですが、私は4つめの変化も重要と考えています。「柔軟な獲得戦略と的確な契約」。3400万ポンドのバイアウト条項があったザークツィーの獲得においては、選手を先に口説き落としてボローニャと交渉。レアル・マドリードに行きたがっていたレニー・ヨロは、クラブとの合意で先手を取っています。
リールに5200万ポンドを提示したのは、3000万に満たない額を提示していたレアル・マドリードの巻き返しを封じるためでしょう。所属クラブを味方につけてから選手を説得し、一気に獲得に漕ぎ着けたプロセスは見事でした。ヴァランとカマヴィンガの争奪戦で敗れた苦い過去があるだけに、今回の逆転は感無量です。
ファン・デ・ベークやグリーンウッド、カンブワラの売却においては、相手が承諾しやすいように初期費用を軽減しつつ、彼らの成長や復活を見越して、次の移籍金からマージンを得るセルオン条項を付けています。交渉のクオリティも、今までの経営ボードとディレクターと比べると明確に向上しているといえるでしょう。
今後はさらに、2025年に契約が切れるマグワイア、リンデロフ、ワン=ビサカと、既に引き合いがあるマクトミネイとカゼミーロも売却となる可能性があります。加えて、プレミアリーグにフィットしていないアントニーは、週給7万ポンドを負担するクラブがあればローン移籍を認めると伝えられています。
「シャツが売れる選手から シャツの売上が伸びる選手へ」。補強戦略と交渉の戦術を変えたマンチェスター・ユナイテッドは、数年後にはビッグタイトルを争えるポジションに戻ってくるのではないでしょうか。ホイルンド、ガルナチョ、メイヌー、アマド・ディアロ、ザークツィー、レニー・ヨロらが主力として活躍する未来のチームが、今から楽しみです。
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