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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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サー・アレックス・ファーガソンがグローバルアンバサダーを退任…カントナと記者の怒りと嘆き。

「彼の銅像も撤去されるのでは? 毎日磨く費用が浮くでしょう。台座の文字を取り外して売り払うかもしれません。最近は、金属のクズでもそれなりの値段で売れるようです。あるいは、彼が獲得したプレミアリーグのトロフィー13個のレプリカも溶かしてしまうとか。チャリーン!」(ニック・ミラー/アスレティック)

現地メディアの記事を読むと、感情的になっている記者が多いようです。2013年の勇退以降、マンチェスター・ユナイテッドのグローバル・アンバサダーとクラブディレクターを務めてきたサー・アレックス・ファーガソンが、契約満了で退任すると報じられています。今、最も熱くなっているのは、この人でしょう。

「サー・アレックス・ファーガソンは、クラブでやりたいことを死ぬまで何でもやっていいはずだ。これほど敬意を欠くことがあるか。ひどいスキャンダルだ。サー・アレックス・ファーガソンは永遠に私のボスだ!アイツら全員、袋詰めにしてやる!」(エリック・カントナ)

2013年10月17日に締結された契約が更新されなかったのは、INEOSグループが推進しているコスト削減の一環と見られています。マンチェスター・ユナイテッドは先月、2023-24シーズンの決算について、1億1320万ポンドの損失が生じたと発表しました。過去最高の6億6180万ポンドの売上を計上しながらの赤字となれば、経費を見直すのは当然です。

INEOSグループのコストカットは徹底しています。今季中にクラブのスタッフを250人削減。月平均の従業員数1112人は、マンチェスター・シティの520人の倍以上で、エド・ウッドワード時代の放漫経営のツケを払わなくてはなりません。生産性が低いと見做されたテレワークは5月に禁止。同じ時期に行った自主退職の募集は空振りに終わっています。

彼らのブーイングが鳴り響いたのは、マンチェスターダービーのFAカップファイナル。ウェンブリー行きのスタッフ専用送迎バスは、20ポンドでした。往復400マイルのツアーは食事も自腹で、「東京から大阪が、行って帰って4000円なら安いよね!」といった声はもちろん皆無です。優勝を祝うパーティーはなし。クラブが発行するクレジットカードも召し上げられています。

そんななかで、御大の退任。「いわゆる円満退社で、今後も非常勤の取締役として支援してもらう」という話に納得するOBやサポーターは見当たりません。年間の報酬は216万ポンド(約4億2000万円)。250人の解雇による1000万ポンドを並べると、それなりの額ではありますが、クラブを愛する人々の多くは「アンバサダーの貢献度はプライスレス」と考えています。

マン・ユナイテッドをよく知る記者とカントナの非難をひとことにまとめると、「そこじゃねえだろう!」。トランスファーマーケットで2億ポンドを投じながら、その1/100を惜しんでクラブのシンボルを失うのは自殺行為であり、カルチャーの破壊だと主張しているのです。ニック・ミラー記者は、多くのファンや関係者の思いをわかりやすく代弁しています。

「彼の報酬は、年間収益6億6200万ポンドの0.3%。週給に換算すると4万ポンド弱だ。イギリスの平均年収より高いが、フットボールの世界ではわずかな金額だろう。ユナイテッドのような名門クラブなら、第3GKに支払うレベル。アントニーの移籍金の2.4%でしかない。スタンドに座っている82歳の男が、過去2年でアントニー以上の貢献をしたというのは酷だろうか?」

INEOSがドライで、カルチャーを解さないとはいいません。彼らも必死で、クラブの再生について打ち手を検討しているのだと思います。ただし、「似たような肩書きの経営ボードのメンバーを先に外せ」という声にはうなずかされます。イングランドの誰もが尊敬の念を抱くクラブの顔は、守ってほしかった。退任自体より、こんな判断をしなければならない現状が残念です。

「引退してもクラブとの関係は終わりません。今後は一緒に苦しむのではなく、見守ることを楽しみます。終了間際のゴール、逆転…敗戦でさえもユナイテッドという素晴らしいフットボールクラブの一部です。信じられないほどの素晴らしい経験をしました。とても感謝しています。そして、大変な時期にスタッフと選手たちがいてくれたことにも触れておきましょう。これからは、新しい監督のそばにいてあげてください」(2013年5月12日 オールド・トラフォードにてアレックス・ファーガソン)

このブログを始めたのは、2012年11月。彼の最後のシーズンでした。苦しかった11年を一緒に見守り、時に歓喜を分かち合ってきたのだなと思います。厳しい言葉もお金の話も呑み込んで、この現実を静かに受け止めましょう。これからも、オールド・トラフォードでチームの勝利を喜ぶ姿を見続けられますように。(サー・アレックス・ファーガソン 写真著作者/Austin Osuide)


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“サー・アレックス・ファーガソンがグローバルアンバサダーを退任…カントナと記者の怒りと嘆き。” への2件のフィードバック

  1. minus zero より:

    マンチェスター・ユナイテッドというクラブ全体ではなく、部門別で採算を見て、是々非々の判断ということなのでしょうが、ここまで小刻みにコストカットをしてくる現状の経営体質を見ていると、サッカーの内容以前に、「(契約延長したばかりの)テン・ハフの違約金払いたくない」という思惑が、監督人事に影響しているのでは? とややうがった見方をしてしまいます。

  2. ぎぐ爺 より:

    自分から「そろそろ潮時だ」と言った、とか
    新監督に、”実績は疑いないけど、どうしてもファーギーが承服出来ない人物”
    (お隣さん、マージーサイド方面…とか)が決まったから。とかなら兎も角
    ただコストカットの為だとしたら、アホですね。

    ただでさえ、結果も出ず内容も不甲斐無くて、ローカルファン以外の
    新規ファンを獲得出来ていないだろうに、ファーギー時代にファンになった人々に
    クラブを見放されたらどうなるか、少し考えれば解るだろうに。。

    チームに上昇の兆し見え始めて、それが継続出来そうだっていう時期なら
    まぁ、理解も出来ますが。

    この話といい、10万収容の新スタジアム構想、サウスゲイトを買っているとか聞くと
    ラトクリフも期待できそうにないですね。

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