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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

ゴール欠乏症に改善の兆しは見られず…現地記者が指摘する「テン・ハフが解任に至った理由」

ロンドンスタジアムのウェストハム戦を2-1で落とした翌日の朝、キャリントンに足を運んだエリック・テン・ハフは、オマール・ベラダCEOとダン・アシュワースSDに解任を告げられました。「昨シーズンから今シーズンにかけて、結果もパフォーマンスも十分ではなかった」「現在のパフォーマンスレベルに言い訳の余地はない」。プレミアリーグ14位に転落したチームに、改善の兆しはありませんでした。

終始、穏やかな雰囲気だったと伝えられた会合の後、キャリントンを出ようとした元監督は、黒いメルセデスの後部座席で身をかがめていました。メディアに表情を撮られたくなかったのでしょう。ウェンブリーのマンチェスターダービーを制し、解任を免れた指揮官は、契約延長からたった116日で未来を失うことになりました。

彼の解任を正当化したい人に、自説の根拠となる数字を選ぶ苦労はありません。2023-24シーズンは、プレミアリーグ創設以来の最低となる8位フィニッシュ。新シーズンは、以前から抱えていた課題がさらに深刻になっています。開幕から9試合で8ゴールは18位。これほどゴールを決められないのは51年ぶりで、同じく8ゴールだった1973-74シーズンは2部に降格しています。

「アスレティック」が欧州のクラブの戦術分析で活用しているプレイスタイルホイールを見ると、マンチェスター・ユナイテッドのポゼッションは平均レベルで、攻撃はカウンターに依存しています。昨季プレミアリーグでボックスに通したパスとクロスは、1位のブルーノ・フェルナンデスが216本で、2位のダロトは79本。完全なるキャプテン依存症でした。

ガルナチョとラシュフォードの単独突破と、ブルーノの多彩なパスしか基本戦術がなかったチームは、8番のリスキーなパスをカットされると即座にピンチに陥っていました。昨シーズンのマン・ユナイテッドがカットバックから許したチャンスは68回。彼らより多かった4チームのうち、3チームはチャンピオンシップに降格しています。

90分あたりで17.4本の被シュート数は、シェフィールド・ユナイテッドに次ぐ2位で、下がりすぎる最終ラインと戻りが遅い前線の間の広大なスペースを埋められずに終わっています。2024-25シーズンに入っても、カウンターを多用しカウンターでやられる状況は変わっておらず、8ゴール11失点。ホームで0-3のレッズ戦とスパーズ戦は、解決策がないと自白するような負け方でした。

ウェストハム戦の2センターは、カゼミーロとエリクセン。テン・ハフの初年度に3位躍進のシンボルと称えられた2人のベテランMFは、広大なスペースでミスを繰り返し、放出候補となっていました。沈黙し続けるアントニーと、起用法が未だ定まらないメイソン・マウントの移籍金を足せば、ハリー・ケインを獲得できたでしょう。

今季の新戦力も、まずまずの出来といえるのはマズラウィのみ。デ・リフトは冷静さを失うシーンが目立ち、ザークツィーはほしいボールをもらえず、ウガルテはメイソン・マウントやアムラバトと同じ道を辿っているように見えます。あまりにも厳しい数字とスカッドの状況を確認すれば、サー・ラトクリフと経営ボードの決断にうなずくしかありません。

「テレグラフ」のジェームズ・ダッカー記者は、失敗の理由として、「共感力の欠如」「人材マネジメントの力量不足」「苦手な英語によるコミュニケーション」を挙げ、「夏にコーチに就任したレネ・ハケとファン・ニステルローイに期待した効果はなかった。むしろ、ファン・ニステルローイの存在が邪魔になってしまった」と続けています。

期待感に満ちた1年と、屈辱にまみれた1年5ヵ月。巻き返すための時間は充分にありました。前線も後方も、それぞれのゴール前でミスが減らないのは、指揮官の言葉に心を動かす選手がいなくなっているからでしょう。ついぞ見られなかった理想のゲームモデル。ファン・ニステルローイを暫定監督に据えたクラブは、後任の人選を急いでいると報じられています。


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