2025.09.16 マンチェスター・ユナイテッドの話題
それでもマンチェスター・ユナイテッドは、ルーベン・アモリムを信頼し続けるのか?

デュエル勝利も45対48で、パスの数字と重ね合わせると、「奪ったボールをつないで優位に立った」と思われそうです。守備のスタッツも、タックル成功は13対23、インターセプトは10対13。「ハーランドさえいなければ勝っていた!」と主張する根拠は充分に揃っているといえるでしょう。しかし実際は、ハーランドに追加点をゲットされた53分まで、シュートは1本でした。
最終的なスタッツが拮抗した理由を簡単に説明すると、「3-0でリードしたマンチェスター・シティがスイッチを切ってから数字を積んだ」となります。今季の全体についても、同じことがいえるでしょう。1試合あたりのシュート17.5本、クロス成功6.5本、敵陣ボックスでのタッチ128回はすべてNo.1で、xG(ゴール期待値)8.3はマン・シティに次ぐ数字です。
マンチェスター・ユナイテッドの4試合で最初に着目すべき数字は、「4ゴールのうち2つがオウンゴールでPKがひとつ、オープンプレーからのゴールはエンベウモの1発のみ」です。アーセナル戦は残り20分を切ってからシュート9本、バーンリー戦は6本、マンチェスターダービーは10本。これらは相手が引いてからで、PKを除くオンターゲットはアーセナル戦の3本だけでした。
あらためて今季のチームの映像とスタッツをチェックしてみると、「開幕のアーセナル戦はよかったが、その後は停滞」と評するのが妥当でしょう。最初の4試合で4ポイントは、プレミアリーグ創設以来の最悪のスタート。アモリム就任以降のプレミアリーグは8勝7分16敗と苦しんでおり、勝率25.8%は1958年のジミー・マーフィーに次ぐ下から2位です。
「4バックから3バックへのシフトは時間を要するので、しばらくは見守るべき」といった主張の有効期限は切れたのではないでしょうか。2015-16シーズンにレスターの監督に就任したクラウディオ・ラニエリは、7試合めのアーセナル戦でカンテを中盤センターに下げ、次のノリッジ戦でダニー・シンプソンとフクスをSBに据えて、堅守速攻のスタイルを確立させています。
その翌年にチェルシーを率いたアントニオ・コンテは、5節からリヴァプールとアーセナルに連敗し、3バックへのシフトを決断。3-4-3のWBに配したヴィクター・モーゼスとマルコス・アロンソが大当たりで、リーグレコードとなる13連勝で首位を快走しました。異なる戦術を操る彼らの共通項は、適材適所と能力開発を両輪でまわしてトロフィーに辿り着いたことです。
対して10ヵ月めのルーベン・アモリムは、ラシュフォードとガルナチョを追放し、サンチョとアントニーは活かせず、ホイルンドとオナナは自信を喪失してしまいました。カゼミーロはテン・ハフの初年度のレベルにはほど遠く、センターにまわしたブルーノ・フェルナンデスは2列めの飛び出しへの対応という弱点を克服できておらず、ルーク・ショーは凡庸なCBと化しています。
シェシュコはこのままいけば、迷えるホイルンドの足跡をトレースしそうです。スポルティングCP時代に重用されていたウガルテは、パスワークにおけるミスが目立っています。強みを発揮できる場所がわからないメイヌーは、冬に移籍を検討するのではないでしょうか。指揮官がこだわる3-4-2-1で輝いているといえるのは、パトリック・ドルグとアマド・ディアロぐらいです。
マンチェスターダービーでは、敵陣ボックスでの29回のタッチのうち、ドルグが12回。シェシュコとブルーノはゼロで、逆サイドのマズラウィは2回と歪な戦い方になっていました。1-0の後半スタートから、ハーランドに決められるまでの時間帯を見ると、ボックス内で触っているのはドルグとマズラウィだけで、前線の3人には狙いも連動性も感じられませんでした。
ハーフタイムの監督の指示を最も反映させやすい時間帯に一方的に攻め立てながら、左からのクロスは水色のシャツが密集しているニアのみ。最初はファー、2度めはセンター、3度めはCBの間で勝負できる態勢になっていたシェシュコを活かす策はなかったのか。今までよりパスの精度が低かったホームチームを崩せなかった最大の理由は、戦術にあったのではないかと思います。
経営ボードがルーベン・アモリムを見限れないのは、4-3-3や4-2-3-1では戦いづらいスカッドにしてしまったからでしょう。昨シーズンの後半戦の惨状が脳裏をよぎると、再びスイッチングコストをかけると考えるだけで心が震えます。ならば、このままでいくのか。開幕からの4試合を1勝1分2敗で、7失点。リーグ2のクラブにも2失点を喫して負けたとなれば、非常事態です。
セントラルMFを獲れればという声には、「クロップのラストシーズンを思い出そう」と返したくなります。ヘンダーソン、ファビーニョ、ナビ・ケイタが退団し、カイセドとラヴィアを獲り損ねてから遠藤航とフラーフェンベルフで間に合わせ、31節まで首位にいたチームです。さらなる強化は、ブルーノ、メイヌー、ウガルテ、カゼミーロを最大限活かしてからのお話です。
アモリムに対する落胆は、個々のメンバーへの期待の裏返しでもあります。エンベウモとアマド・ディアロの右サイドのコンビは楽しみです。ブルーノとシェシュコは、戦術次第でホットラインといわれるようになれるかもしれません。チームプレーヤーのメイソン・マウントをサイドというアイデアはどうか。メイヌーもカゼミーロもドルグも、もちろんマテウス・クーニャも…!
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