あらためて考える「マンチェスター・ユナイテッドはなぜ、弱くなったのか!?」(前篇)
サー・アレックス・ファーガソンという偉大なトップが勇退した直後の今季は、次世代の体制構築のために多少しゃがむ、ということは想定していたのですが、プレミアリーグが残り10節となってもどんなサッカーがしたいのかが見えてこない、という惨状は想像していませんでした。本ブログでは、マニアックにならないように、今までは戦術の細かいところについてあまり触れてこなかったのですが、今回はマンチェスター・ユナイテッドの戦術的なウィークポイントについて、私なりの見解を記したいと思います。今のマンチェスター・ユナイテッドのサッカーで、気になるのは以下の3点。「ボールを獲る位置が不明確」「ペナルティエリアの中央やや外、いわゆるバイタルエリアが使えない」「外と中央の選手のコンビネーションがない」ということです。
「ボールを獲る位置が不明確」というのは、「どこから守備を始めるか」「どこでボールを奪うか」がチーム戦術として明確になっていないということです。たとえばバルセロナやドルトムントなら「ボールを失った直後」。バルサは奪われた選手が厳しくチェックにいき、ドルトムントは前の選手がコースを切って追い込んで後ろが詰める、など複数の人間で奪いにいきます。昨季までのバイエルン・ミュンヘンは、「ハーフラインを超えてきたら」スイッチが発動するチームでしたが、今季はベップ・グアルディオラがやってきたので、バルサに近くなっているかもしれません(チャンピオンズリーグを観る限りでは、あまり変わっていない印象ですが)。
チェルシーは、相手が中央突破がうまいプレミアリーグ上位チームのときは、ペナルティエリア外をセンターMFが埋めて、相手のワントップとその下の選手の自由を制限する守り方をしたりしますね。マンチェスター・ユナイテッドは獲り方が明確でないため、結局最終ラインが対応するシーンが多く、CBには大きな負担がかかっています。リオ・ファーディナンドやヴィディッチが全盛期より衰えているので、「ベテランに頼ったツケがまわった」という方もいますが、昨季の中心はジョニー・エヴァンスで特段ベテラン頼りだったわけでもなく、この指摘は短絡的でしょう。ちなみにライバルをみれば、昨季のプレミアリーグで明らかにミスが増え、下り坂と思われたジョン・テリーは今季見事に復活しています。ベニテスサッカーの攻撃は素晴らしいのですが、こと守備戦術においては、モウリーニョスタイルのほうが集団的であり、CBは対応しやすいのでしょうね。CBの個人能力云々の手前で、「ピンチにさらされる頻度がそもそも多いので、個人のミスがより目立ちやすい」のだと思います。
次に、「バイタルエリアが使えていない」というお話です。この言葉の定義はまちまちになっているのですが、ここでは「CBの前のスペース、主にペナルティエリアのやや外」としましょうか。このスペースを使うのがうまいのが、マンチェスター・シティのナスリ、ダヴィド・シルヴァ、ヤヤ・トゥレや、アーセナルのカソルラ、エジル、ロシツキ。そして言わずと知れたリヴァプールのSASですね。チェルシーがときどき、まったくシュートすら打てないチームになるのは、彼らは特定の選手が好調なときしか、このエリアをうまく使えないからだと思います。マンチェスター・ユナイテッドは、バイタルエリアをまったく使いません。香川真司やマタが空回りするのは、「彼らの持ち味であるここに入る動きに対して誰もパスを出さず、ときどきもらっても周囲が連動しないから」です。
バイタルエリアをうまく使うためには、「サイドの選手が中に絞る動きをする(マン・シティのヘスス・ナバス、サバレタ、アーセナルのカソルラ、リヴァプールのコウチーニョ)」「センターMFが中央に上がるか、サイドのフォローに入ってつなぐ(アーセナルのラムジー、マン・シティのヤヤ・トゥレ)」「トップの選手が裏に入ったり、戻ってDFを前につり出したりする上下の動きをする(スアレス、スタリッジ)」などが必要になってきますが、マンチェスター・ユナイテッドのセンターMFは深く、今季のファン・ペルシは他人のために動くことが極端に減っています。そのため、孤立したサイドはクロスを上げるしかなくなり、時折、中央でルーニーが何かをしようとしても相棒がいないため、うまく突破することができないのです。
長くなりましたね。この稿、次回の「あらためて考える”マンチェスター・ユナイテッドはなぜ、弱くなったのか!?”(後篇)」に続きます。
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読み応えあって面白いと思うよ。
このボリュームで続けてくれると嬉しいね。
プレミア大好き!さん>
ありがとうございます!