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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

なぜ、彼はいなかったのか。トルコに旅立ったメスト・エジルに思うこと。

オーバメヤンの素晴らしいゴールシーンの後、10人になったチェルシーの攻撃を冷静に跳ね返すアーセナルの選手たちを見ながら、私は彼のことを考えていました。メスト・エジルは、なぜここにいないのか。2週間前、「未だプレミアリーグを再開していないメスト・エジルに思うこと」という記事を書いたときは、最終節のワトフォード戦か、FAカップ決勝のチェルシー戦のベンチ入りを期待していました。7月26日のホーム最終戦の前に、10番について問われたアルテタ監督は、「試合に出られる状態だ」とひとこと。率直な表現を好む指揮官が、彼に関する質問を避けたがっているのは明らかでした。

プレミアリーグで8位に終わったアーセナルにとって、ウェンブリーで開催されるFAカップ決勝は、最も重要なゲームでした。エジルは、顔を見せるのか。淡い期待は、聖地に帯同する30名の発表によって打ち砕かれました。メスト・エジルは、20名までOKの登録メンバーから外れただけでなく、10名の帯同メンバーにも入らず、クラブの許可を取ってトルコに渡ったと報じられました。試合に出られなくても、仲間とともにタイトルを祝福する姿を見られれば、少しは気も晴れるだろうと思っていたのですが…。オーバメヤンやニコラ・ペペ、ダニ・セバージョスがいいプレイをするたびに、釈然としない気分が募るばかりでした。

初めてのタイトルを手にした後、エジルとグエンドゥジについて聞かれたアルテタ監督の答えは、「彼らは役割を果たした。タイトルに値する」「今はこの瞬間を楽しもう」。敗戦の後でも、プレスに対して誠実に対応してきた指揮官のコメントは、1ヵ月半前とは別人のようにそっけない言葉になっていました。6月に入ってからの彼の言葉を辿ると、当初はいかに期待していたか、その後どれほど絶望したか、それぞれが手に取るように伝わってきます。


「彼に対してフェアに接しており、多くの試合で私が求めるプレイを見せてくれた。しかし、ここ数週間で、さまざまなことが彼の周りで起こった。すべての選手のタイミングを尊重しなければいけない。ときには時間がかかるものだ」「私は、メストのベストを誰よりも求めている。対話は続いている。今、いえるのは、何も問題がないということだ。彼とはうまくいっている」(6月18日、マンチェスター・シティに敗れた直後のプレスカンファレンスにて)
「プレイしたいという気持ちがあれば、全員が喜んで迎え入れるだろう。私はいつも、ベストを尽くそうと考えてほしいと思っている。選手を疑ったことは一度もない」(7月1日、ノリッジ戦の前日会見にて)
「彼のコンディションは上がっている。出場する可能性はある」(7月14日、リヴァプール戦の前日会見にて)


もしかしたら、メスト・エジルはメンタルの問題を抱えているのではないか。ウナイ・エメリもミケル・アルテタも、負傷とも不調ともいえずに苦しんでいたのではないか。これが真相だとすれば、きっかけは2018年5月に撮影されたエルドアン大統領とのツーショットでしょう。あのとき、エジルに集中した囂々たる批難の声は、一個人が耐えられるとは思えないほど激しいものでした。「政治的な意図はなかった」「家族の故郷である国のトップに敬意を払っただけ」「トルコの大統領でもドイツでも、自分の行動は変わらなかった」と反論した10番は、「勝てばドイツ人、負ければ移民」という言葉を残して、沈黙を守るようになりました。

2017-18シーズンは、公式戦35試合で5ゴール14アシスト。信頼していたアーセン・ヴェンゲルがクラブを離れた2018-19シーズンは35試合6ゴール3アシスト。出場機会が激減した今季は23試合1ゴール3アシスト。完全にフォームを崩してしまったエジルは、プレミアリーグだけで19アシストを記録した4年前の輝きを取り戻せるのでしょうか。プレミアリーグNo.1の週給35万ポンドを得ているプレーメイカーに対して、メディアは相変わらず辛辣で、試合に出場しない理由を追及する手を止めません。

「2021年の夏になる前に、メストが移籍するとは思わない。しかし、契約が満了になったらアーセナルを去る可能性は90%と見ている」。代理人のエルクト・ソグト氏の言葉は、フットボールに対する情熱やモチベーションを失ってしまったかに見える10番の無言の抵抗をフォローしているようにも思えます。事実はどうあれ、レジェンドと称されるはずだったタレントが何らかのダメージを負ったまま、孤立しているとすれば、ただただ残念です。


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“なぜ、彼はいなかったのか。トルコに旅立ったメスト・エジルに思うこと。” への2件のフィードバック

  1. 田吾作 より:

    気持ちって本当に大切だと思います。 ファンはある意味娯楽としてスポーツを観戦し、マネージャー、プレイヤーはその期待に応えようとプレイするから重圧はひどいものでしょう。 ミスをすると仕事を失いかけるようなヒドイバッシング。 GKとしてはいつかのCL決勝の人もそうですよね。 プロというのは重圧との戦いなのだと思います

  2. グーナーです より:

    たまたまネトフリの「サンダーランドこそ我が人生」を観たあとだったのですが、不調のチームや選手に対して「うわぁ、そこまで言うかよ」という怒声を浴びせるというのはプレミア問わずトップリーグの選手なら避けては通れないでしょう。
    無論、それが正しい姿だとは全っっっく思いませんが。
    そして、それに耐えきれない選手も一定数必ずいると思います。

    僕はエジルが好きです。
    間違いなく、今までのアーセナルの選手で一番。

    今まではずっと「いつか帰ってきてほしい」と思い続けてきました。
    でも今は、お別れを言うときがきたのかもな、と思っています。
    今のアーセナルというクラブに、エジル一人に時間を割ける余裕がないのは明らかです。
    チームが全力で前にすすむなかで、エジルとの距離は深刻なまでに開いたように思います。

    アーセナルというクラブ、ロンドンという街にどうしてもいたくないのであれば、それはもうエジル個人の幸せを追い求めてもいいのではないでしょうか。
    それがトルコなのか別のリーグなのか、またはフットボール自体からの引退なのか。

    どのような結末になっても、僕の中でのエジルは世界最高のMFです。

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