偏愛的プレミアリーグ見聞録

シュートを1本も打てずに終わったアストン・ヴィラ戦が終わったとき、「スカイスポーツ」が必ず話題にするだろうと思いました。ピエール・エメリク＝オーバメヤンは、左ウイングでプレイすべきなのか。9月15日にアーセナルとの契約を延長し、プレミアリーグNo.1となる週給35万ポンド超を手にしたストライカーは、開幕からの8試合で2ゴール1アシストと不振にあえいでいます。

「How is Mikel Arteta’s style impacting the Arsenal forward?（ミケル・アルテタのスタイルは、アーセナルのフォワードにどのようなインパクトをもたらしたのか）」。以前から、オーバメヤンが機能していないと指摘していた「スカイスポーツ」のポッドキャストは、アルテタ監督の就任前後の数字を比較しています。アーセン・ヴェンゲル、ウナイ・エメリ、フレディ・リュングベリのチームでは126分で1ゴールを決めていたストライカーは、アルテタ監督の下では173分に1ゴールとペースダウン。1試合あたりのシュート数も2.9から2.3と明らかに減っています。

プレミアリーグ2020-21シーズンのスタッツにフォーカスすると、パフォーマンスの低下はより顕著になります。8試合で放ったシュートはわずか10本。DFで1位のトレント・アレクサンダー＝アーノルドは13本、ハリー・マグワイアは11本を記録しており、セットピースしかチャンスがないCBを下回っています。「スカイスポーツ」のジェラルド・ブランド記者は、「週給35万ポンドの新契約で期待が高まっているにも関わらず、アルテタのシステムに組み込まれている。その要求に応じることは、ゴールを量産できないことを意味する」とレポートしています。

「疲れていたのかどうかは知る由もないが、日曜日の彼は楽しんでいないように見えた。アルテタはチームスピリッツをほのめかし、彼は毎週よくやっているというが、本人は自分自身に満足していないだろう」

これを受けて、「スカイスポーツニュース」のベン・ランサムさんは、「彼は守備の仕事をうまくやれることを証明した」と個人を評価しつつも、「堅牢であろうとするために、オーバメヤンがもたらす爆発的なXファクターを除去してしまっている」と批判。「ラカゼットも得点しておらず（今季プレミアリーグ7戦3ゴール）、フォワードのグループ全体の得点が少ないのが心配」「オーバメヤンを左サイドに置くのは正しいのか」と疑問を呈しています。

記事とスタッツをチェックして、「今の顔ぶれなら、オーバメヤンは中央で活かしたほうがいい」と、あらためて思いました。サラーやマネがゴールを量産できるのは、中央に巧みなパスワークとキープ力があるフィルミーノがいるから。マンチェスター・ユナイテッドがウイングとCFを入れ替えたのは、ドリブルに長けたマルシアルがタメを創れるので、ラシュフォードのスピードとカットインを活かせると判断したからでしょう。

ペップの戦術が、スターリングとマフレズが中央に斬り込んでくるのを前提としているのは、彼らにカットインのタイミングを指導したアルテタ監督が最も理解しているはずです。ラカゼットの問題は、ウイングがゴールを決めまくるチームのセンターに求められるキープやポストプレーが不足していることです。アーセナルの9番も9本しかシュートを打てておらず、アシストはゼロ。外にいる時間が長いオーバメヤンはクロスを17本しか入れておらず、65本のアーノルドや55本のロバートソンに大きく引き離されています。中に入って打つシーンが少なく、かといってサイドを突破してCFに決めさせているわけでもないとすれば、前線の配役を抜本的に見直したほうがいいのではないでしょうか。

中央にオーバメヤン、右はニコラ・ペペとウィリアンを併用し、左にサカ。ラカゼットとエンケティアの役割は、オプションとして2トップにスイッチする際のエースの相棒とスーパーサブ。今季プレミアリーグで15位の9ゴールしか決めていないチームは、「ワールドクラスのストライカーと左右のドリブラーにいかに決めさせるか」を突き詰めたほうがいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。首位レスターと6ポイント差の今なら、まだ間に合います。