偏愛的プレミアリーグ見聞録

パス成功率93%、4回のチャンスクリエイト、9本のクロス…プレミアリーグ29節のウェストハム戦で見せたパフォーマンスが、よほど衝撃的だったのでしょう。試合がないなかで、アクセス数を稼ぎたい現地メディアは、春のウーデゴーア祭りを繰り広げています。ノルウェー代表としてジブラルタルと戦ったワールドカップ予選で右足を捻ってリタイアしたというニュースと、本人や指揮官のコメントだけがリアル。「ウーデゴーアを完全移籍に切り替えられなかった場合、アーセナルはフィリペ・コウチーニョを2000万ポンドで獲得できる」という話は、少なくとも今のところはよくあるゴシップでしょう。

「バルセロナが財政難に陥り、値段を下げてでもブラジル代表MFを放出したがっている」「コウチーニョが100試合出場すると、リヴァプールに2000万ポンドを支払う契約になっているため、その手前で売却する意向がある」といった記事が一斉に出回ったのですが、半月板損傷で年明けから出場ゼロの選手をシーズン終了前に押さえにいく必要はありません。いちばんびっくりしたのは、「アーセナルがウーデゴーア移籍を実現できるかどうかは、リヴァプール次第」という「エクスプレス」の記事です。何がどうなったらそうなるのか、一瞬、思考停止に陥りました。

チャンピオンズリーグでリヴァプールがレアル・マドリードに勝ったら、既にラ・リーガ制覇が難しくなっているジネディーヌ・ジダンが解任される。ウーデゴーアを不要とする新監督などいないはずで、彼を評価していないジダンが残ればアーセナルが獲得できる可能性が高まる…。こうして書き記すと、実にまわりくどい理屈ですが、リヴァプール次第と見出しを打てば、「どうゆうこと？」と気になったプレミアリーグファンを釣れると考えたのでしょう。ああ、見事に釣られてしまいました。いや、話を戻しましょう。

さまざまなテーマで記事になっているウーデゴーアですが、グーナーが最も注目しているのは、シーズン終了後の身の振り方でしょう。ノルウェーの「VG」が渦中のプレーメイカーにインタビューを配信。「正直いって、まだ考えていない。夏まで契約があり、シーズンに集中している。今後については、安定と成長という言葉がキーになる」と語ったウーデゴーアは、プレミアリーグの印象とアルテタ監督の指導についてもコメントしています。

「最初からよかった。（プレミアリーグ参入は）適切だったと思う。早期にプレースタイルに慣れることができた。当初は自信なかったけど、毎日よくなっていると実感している。彼は本当にいい監督。凄い。学ぶべきことがたくさんある。私はただ耳を研ぎ、その言葉に注意を払う必要がある。彼は素晴らしい」

アルテタ監督も、マドリードからやってきたテクニシャンを絶賛。ウェストハム戦のパフォーマンスについて、「素晴らしいパフォーマンスだった。ゲームに対する読み、影響力、勝利に向かう気持ちを示してくれた」と評価した指揮官は、「才能があり、創造的なプレーヤーが好きだ。常にボールを持って事を起こすのを厭わず、よく動き、勤勉だ」と続けています。

ウーデゴーアがアーセナルに残るためのドアが開かれる前提条件は、アルテタ監督とエドゥTDがノースロンドンにこそ「安定と成長」があると口説き落とすことと、レアル・マドリードと本人のコミュニケーションが不調に終わることです。ウーデゴーアはプレミアリーグを選ぶのか。「フットボールロンドン」が伝える4000万ポンドで妥結できるのか。「11番の活躍でEL制覇」という快挙を達成できれば、クラブとサポーターの希望に近づくのではないでしょうか。私としては、うれしい話ではありませんが…。