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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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苦闘するエンソ・フェルナンデスと復活のカイセド…明暗分かれる1億ポンドの2センターの現状。

エンソ・フェルナンデスがベンフィカから移籍したのは、2023年の冬のデッドラインデー。移籍金は1億700万ポンドで、ジャック・グリーリッシュのプレミアリーグレコードを塗り替えたと話題になりました。その7ヵ月後、モイセス・カイセドが最高額を更新。2023年8月14日にブライトンからやってきたセントラルMFは、総額1億1500万ポンドと伝えられています。

両者ともに、2031年までの超長期契約。1億500万ポンドでも騒がれなかったアーセナルとデクラン・ライスは、彼らに感謝しなければなりません。高額移籍金ランキングの歴代ワンツーとなったチェルシーの中盤は、当然ながら最強でなければなりません。しかし、マウリシオ・ポチェッティーノとともに戦った初年度は、真価を発揮したとはいえませんでした。

ウェストロンドンで過ごした1年めを振り返ったカイセドは、「最初は大変だった。ビッグクラブで、移籍金が高かったこともあり、プレッシャーに苛まれた」と率直に語っています。エンソ・フェルナンデスとの連携はスムーズとはいえず、攻守ともに安定感を欠く要因のひとつとなりました。アーセナルの倍以上となる63失点を喫したチェルシーは、7位に終わっています。

エンソ・マレスカ監督の下で戦う2024-25シーズンは、クラブにとっても2人にとっても勝負の時。7節を終えて4勝2分1敗の4位は、まずまずのスタートです。しかし2センターのスタッツを見ると、光と影のコントラストが鮮明になりつつあります。カイセドのタックル27回は、レスターのエンディディに次ぐリーグ2位。守備のタスクのクオリティは高まっています。

90分あたりで見ると、昨季のタックル成功1.4回は2.3回となり、成功率も50.5%から59.3%に上がっています。56.2%だったデュエルの勝率は、60.5%。マロ・グストやフォファナとの距離が近くなり、広範囲のカバーを求められなくなったのが、落ち着きと集中力を取り戻した最大の理由でしょう。近い将来、エンゴロ・カンテと比べられる存在になるのではないでしょうか。

対してエンソ・フェルナンデスは、気になる数字があります。90分あたりのパス成功数は、ポチェッティーノ時代の63.4本から44.3本に激減。成功率も86.9%から83.2%に落ちています。ロングフィードも5.2から3.3にダウン。68.6%だった成功率は、65.5%です。「今までよりポジションが上がり、チャレンジするフィードが増えた」なら、攻撃のスタッツが伸びるはずですが…。

シュート数は1.9から0.7に下がり、未だゴールとアシストはゼロ。チャンスクリエイトは1.3から1.4とさほど変わりません。左のインサイドのエリアでプレイする機会が増えたMFが、攻撃を活性化していないのは明確で、サンチョ、ムドリク、ペドロ・ネトは全員ノーゴールです。守備においても、「ドリブルで抜かれた回数が13」というリーグワーストを記録しています。

マレスカ監督は、エンソ・フェルナンデスの役割について「ポゼッションを取っているときは攻撃的なMF、守備にまわる時間はホールディングMF」と説明し、好例としてデクラン・ライスとイルカイ・ギュンドアンの名前を挙げています。前に出たら、ボールへの関与度も守備力も下がってしまった23歳のキャプテンは、指揮官のオーダーに応えられるのでしょうか。

レスターから来た指揮官は、昨シーズンのチャンピオンシップでともに戦ったキアナン・デューズバリー=ホールがこの役割をこなせるとわかっています。どちらがカイセドとコンビを組むにしても、デクラン・ライスのようにウインガーを勝負させるパスが増えれば、ジェイドン・サンチョやミハイロ・ムドリクが完全復活となる可能性が高まります。

明暗分かれる2人のセントラルMFは、総額2億ポンドにふさわしいコンビに発展するのでしょうか。マーカーを背負って苦闘するシーンが目立つエンソ・フェルナンデスは、デクラン・ライスを参考にすればいいのではないかと思われます。逆サイドから攻める際はボックスの手前まで上がり、左にボールがあるときは引いて受けて前に出す…。


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