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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

アーセナルはなぜ、U-20の出場時間が減ったのか?プレミアリーグのユース育成、若手抜擢に関する雑感。

フットボールクラブのアカデミー運営には、3つのメリットがあります。ひとつめは、クラブのアイデンティティの創出。10代の頃から応援していた選手がトップチームでスターになれば、地元のサポーターの情熱は高まり、グローバルなブランディングにも効果があるでしょう。2つめは、高額な移籍金をかけずにワールドクラスをスカッドに加えられることです。

3つめは、育成した選手の売却で収入を得られること。アブラモヴィッチ時代に最強のユースチームを築き上げたチェルシーは、莫大な収益を得ています。いい選手は自チームで活かし、それなりの選手は他クラブに売って、インフラや教育への投資を回収するのが基本的なモデルです。フィル・フォーデンをマーケットで手に入れるとなれば、1億ポンドでは到底足りないでしょう。

近年は、若手中心のチームづくりを敢行したアーセナルの生え抜きが話題になっていました。ブカヨ・サカ、エミール・スミス・ロウ、エディ・エンケティア、リース・ネルソン、フォラリン・バログンらがトップチームに昇格し、ウーデゴーア、ベン・ホワイト、冨安健洋らと融合したチームは、2021-22シーズンのプレミアリーグ最年少チームとなっています。

アーセン・ヴェンゲルの長期政権が終わり、立て直しが必要だった時期は、戦術のクオリティを高める効果的な策でした。しかし優勝を争うレベルになると、ユースの育成と若手の青田買いでは弱点を強化し切れなくなります。デクラン・ライス、カイ・ハヴェルツ、ティンバー、カラフィオーリらを獲得した今は、アカデミー出身者がステップアップしづらいチームです。

プレミアリーグにおける21歳未満の選手の出場時間を見ると、アーセナルは2023-24シーズンも今季も18位。下にいるのはフラムとウェストハムだけです。17歳のヌワネリと18歳のルイス=スケリーを足しても、途中出場7回で67分。中盤も最終ラインもレギュラーの壁は厚く、この数字が飛躍的に上がるイメージはありません。

中小クラブで実績を積んだ若手がビッグクラブにチャレンジするルートは、今後もメインストリームであり続けるでしょう。一方でアカデミーで育った選手たちは新卒採用のようなもので、同世代でも即戦力の技術者に勝つための武器がありません。昨年の夏に、「コール・パルマーは、ジェレミー・ドクやフリアン・アルバレスより上」と、いい切れる人はいなかったはずです。

現在のプレミアリーグで、最も生え抜き&青田買いを活用しているクラブはどこでしょうか。今季のリーグ戦におけるクラブ育成選手(15歳~21歳の間に3シーズンをクラブで過ごした選手)の出場時間比率をチェックしてみると、サカが体を張っているアーセナルは14.5%で4位。TOP3はマンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、ブライトンです。

メイヌーやガルナチョの定着で22.1%のマン・ユナイテッドも、ケレハー、アーノルド、カーティス・ジョーンズが活躍しているリヴァプールも、ここ数年は主力が続々と退団し、モデルチェンジを図っていたチームです。3位のブライトンは、「安く買って高く売る」というモデルが確立しており、優秀な原石発掘スキームはすべてのクラブに注目されています。

なぜ、こんな話を始めたのかというと、チド・オビ=マルティンやヌワネリ、マルク・ギウ、マイキー・ムーアといった輝かしい原石の未来が気になったからです。ビジネスとしては、500万ポンドで手に入れたカイセドを1億1500万ポンドで売るのが、最も効率がよさそうです。しかしこれは、育った選手を手離すのが前提のモデルで、チームの長期的な強化にはつながりません。

トロフィーをめざすとなると、ティーンエイジャーの成長を待つ余裕はなく、ギョケレスやオシムヘンに投資しようかという話になりがちです。サカやメイヌーのように定着するためには、監督、戦術、チーム状況など、運とタイミングも味方に付けなければなりません。若手にシフトしたチームでも、強くなると若手は抜擢されにくくなる…こんな世界で頭角を現す10代は、異次元の存在です。


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