偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグで、12回連続のPK成功。「1年2ヵ月の間、PKを外したことがない」と表現すると、誰かがやっていそうです。しかしこれまで、ハーランドもサラーも、ハリー・ケインもルーニーもシアラーも、何本か蹴るとどこかで失敗しています。トッテナム戦の2発で達成したコール・パルマーのリーグレコードは、称えられるべき偉業でしょう。

マンチェスター・シティでプレミアリーグデビューを果たしたのは、19歳だった2021年8月。錚々たるメンバーのなかで出番を得られなかったレフティは、最初の2シーズンはリーグ戦18試合ノーゴールという冴えない数字しか残せませんでした。チェルシーに移籍したのは、2024年9月。オプション込みの総額4500万ポンドには、高すぎるという声もありました。

プレミアリーグ初ゴールは、入団から5試合めのPK。ターフ・ムーアのバーンリー戦の50分、ヴィチーニョに倒されたのはスターリングでした。この頃のチェルシーはPKキッカーが決まっておらず、彼が「自分が蹴るべき」と主張しなければ、偉大なレコードは実現しなかったでしょう。マン・シティでチームメイトだったトラフォードの逆を突き、右隅に決めています。

これが合図だったかのように、直後の4試合でPK3発。ダヴィド・ラヤは読みが外れ、ヴィカーリオは両手で弾いたボールがサイドネットに飛び込み、エデルソンはノーチャンスでした。コール・パルマ―がオープンプレーから初ゴールを決めたのは、12試合めのマンチェスター・ユナイテッド戦で、その前のPK4本がなければ「補強は失敗か？」と騒がれていたはずです。

2024年の初PKはフラム戦で、右に飛んだレノは逆を取られています。初めてのパネンカは、ホームのバーンリー戦の先制ゴール。翌週のマンチェスター・ユナイテッド戦では、オナナと対峙して2発決めています。最初のキックは右隅で、逆に反応したオナナは「同じコースに連続で蹴ったことはない」と聞いていたのかもしれません。同点ゴールの2本めも、右のサイドネットでした。

2023-24シーズンの最後のペナルティは、6-0圧勝のエヴァートン戦。既にハットトリックを達成していた20番に対して、ノニ・マドゥエケが蹴らせろと詰め寄り、キャプテンのコナー・ギャラガ―に諫められたシーンは、翌日のメディアの見出しになっています。オナナと同様にピックフォードも、「4本連続で右隅はないだろう」と思っていたのかもしれません。

初年度は、トータル9本。今季の最初のPKは6節のブライトン戦で、フェルトンゲンの逆を突いて左隅に流し込んでいます。ヤヤ・トゥレの11本連続を一気に抜き去ったトッテナム戦の2発は、左のサイドネットとパネンカ。彼のキックに触った唯一のGK、グリエルモ・ヴィカーリオがいたら、マン・シティで活躍したセントラルMFがレコードをキープしていたのでしょうか。

彼がPKを決めた10試合は7勝3分。3つのドローのうち2つは、アーセナル戦とマン・シティ戦の貴重なゴールです。リーグレコードを達成した理由を挙げるなら、「キックが正確で、狙い通りのコースに蹴れる」「どのコースでも蹴り方が変わらないので、ぎりぎりまで見極めようとするGKは間に合わない」の2点でしょう。

プレミアリーグで最多の56本を決めたアラン・シアラーは、失敗が11本。22歳にして12本を決めているコール・パルマーは、今のペースが続けば6年後に頂点に立つことになりますが、さすがに57本連続成功というホラームービーは成立しないでしょう。レコードにピリオドを打つのは誰か？最注目は、2月1日のスタンフォード・ブリッジです。

2ヵ月後のウェストハムの指揮官は、フレン・ロペテギでしょうか。チェルシー戦で指揮を執る監督には、プレミアリーグでPKストップ11回のレコードを持つウカシュ・ファビアンスキの起用をおすすめします。蹴る前に動いたら負け、蹴ってから動いても遅い。ここはやはり、最も多い右隅と読んで蹴る瞬間に動くか、いちかばちかでパネンカに賭けるか、あるいは…。（コール・パルマー　写真著作者/Truth619）