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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

アーセナルは変わってしまった。不遇だったキーラン・ティアニー、惜別の69分。

レアンドロ・トロサールから、左サイドにパスが出たのは51分。逆サイドから走り込んだスターリングに届いたアーリークロスは、彼の真骨頂というべき素晴らしいボールでした。最初のタッチをディーン・ヘンダーソンにセーブされたスターリングは、こぼれ球に反応した2発めをバーに当て、チャンスは潰えました。

エミレーツで開催されたカラバオカップ準々決勝のクリスタル・パレス戦は、キーラン・ティアニーがグーナーに別れを告げるステージだったようです。イスマイラ・サールの縦のフィードをカットしたのは68分。ピッチに座り込んでレガースを外したフルバックは、すぐに立ち上がってスタンドを見上げました。

タッチラインには、ルイス=スケリーの姿があります。交代が告げられると、成り行きを見守っていたグーナーたちがスタンディングオベーション。ピッチに向かって拍手した後、ボスとハグをかわした背番号3が見えなくなると、スタンドの歓声は18歳の新鋭とブカヨ・サカを後押しするモードに切り替わりました。スコアは1-1、勝負はここからです。

アーセナルに入団したのは2019年の8月。彼はまだ22歳でした。左サイドで縦にスプリントする姿と、精度の高いクロスを見たとき、スコットランド代表でともに戦うアンディ・ロバートソンを超える存在になるのではないかとテンションが上がりました。クロスのクオリティは引けを取らず、3バックの左をこなすティアニーのほうが守備力は上でしょう。

2年前にリヴァプールに移籍したロバートソンがレギュラーに定着したのは、12月になってからですが、ヘルニアと肩の脱臼に悩まされたティアニーの本領発揮は、残り10試合を切ってからでした。2020-21シーズンからの2年は、チームに必要とされた充実の季節。彼を取り巻く環境が一変したのは、3度めの膝の負傷が癒えた2022年の夏でした。

マンチェスター・シティからやってきた オレクサンドル・ジンチェンコは、単なるポジション争いのライバルではなく、新たな戦術に対応できるかどうかを問いかけてくる存在です。偽SBでは、得意のオーバーラップと高速クロスを封印されるティアニーは、プレミアリーグの先発は6試合のみで、ヨーロッパリーグのノックアウトラウンドでも出番はありませんでした。

2022-23シーズンは、負傷がなかった唯一の年であるとともに、ウクライナ代表がもたらした複雑なシステムに苦しんだ1年でもありました。オフシーズンには、ユリエン・ティンバーが入団。ジンチェンコと冨安健洋がいるポジションのさらなる補強は、不要と宣言されたように見えます。セルティック復帰が囁かれたティアニーは、レアル・ソシエダにローン移籍となりました。

スペインでの新たな生活を楽しむ一方で、ハムストリングを3回も痛める厳しいシーズン。ノースロンドンに戻ってきたティアニーは、リッカルド・カラフィオーリまで加わったチームを見ながら、ユーロ2024で痛めたハムストリングの治療に専念する日々を過ごしていました。ようやく戻ってきたこの日は、復活のきっかけではなく、惜別の時間でした。

「アスレティック」のデヴィッド・オーンスタイン記者は、「アーセナルはティアニーとの契約延長オプションを行使しないと決めており、遅くとも夏には退団となる」と伝えています。アルテタ監督は、冬のトランスファーマーケットで関係を終える可能性を念頭に置いて、エミレーツの国内カップをグーナーの思いが伝わる場としたのでしょう。

トーマスやベン・ホワイトを偽SBにすれば、逆サイドは…という指摘には、「ガブリエウの脇に入る場面が多いポジションは、ティンバー、カラフィオーリ、冨安健洋などユーティリティが高いCBが適任」という切り返しが待っているのだと思われます。今はただ、不遇だったSBがぴったりはまるクラブから声がかかることを願うのみです。


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