偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスターダービーの同点PKと決勝ゴール、リヴァプール戦の同点ゴール、サウサンプトン戦のハットトリック。あの頃は、アマド・ディアロがいなかったらマンチェスター・ユナイテッドはどうなっていたのかと思っていました。大ブレイクしたレフティが、ピッチを離れてから5週間。今は、こう思っています。「ブルーノ・フェルナンデスがいなかったらやばかった」と。

2024‐25シーズンの公式戦で欠場したのは、ヨーロッパリーグのフェネルバフチェ戦と年末のニューカッスル戦のみで、いずれもレッドカードによるサスペンデッド。2020-21シーズンからの4年はプレミアリーグの出場が35試合以上で、あれほど走り回ってもケガをせず、キャプテンとして体を張り続けています。

今季プレミアリーグは6ゴール7アシスト。ゴールに関与した試合は6勝3分2敗というより、「ゴールもアシストもなければ3勝3分10敗」のほうがインパクトがあります。ルーベン・アモリムの就任後は、2列めと中盤センターを行き来しながら、重要なゲームで劣勢を覆すプレイを連発。リオ・ファーディナンドの「過小評価されている」という言葉には、うなずくしかありません。

マンチェスターダービーで逆転勝利につながるPKを決めると、リヴァプール戦では絶妙なスルーパスでリサンドロ・マルティネスの先制ゴールを演出しました。FAカップでも、アーセナル戦でガルナチョのグラウンダーを右隅に突き刺し、PK戦にもつれ込む激戦の勝利に貢献。レスター戦の終了間際には、FKをマグワイアに合わせて劇的な勝利の立役者となっています。

圧巻なのは、直近のプレミアリーグの2試合です。70分まで2-0で、xGが0.04というひどい状態だったエヴァートン戦は、2本のFKでドローに持ち込んでいます。72分のボックス手前からのチャンスを右隅に収めると、80分に中央に入れたFKのクリアをウガルテが左足のボレーで決めました。3‐2で競り勝ったイプスウィッチ戦も、すべての起点は8番のプレースキックでした。

左サイドからのFKをニアに入れたのは、0-1の22分。速いボールに頭を突き出したモーシーは、自らのゴールに押し込んでしまいました。4分後の逆転ゴールは、左からのCK。ファーにいたマグワイアのヘッドをセーブしたGKパルマーは、ダロトのボレーも右に弾き出したのですが、ゴール前に詰めたデ・リフトには対応できませんでした。

決勝ゴールは後半開始直後のCKで、右から中央に入れたボールはマグワイアの頭にぴったりでした。「2試合で5ゴールを生んだFKとCK」だけでも素晴らしいのですが、イプスウィッチ戦ではチーム最多のパス成功56本とチャンスクリエイト4回という数字も残しています。コンビを組んだウガルテは、パス成功が14本。10人になってから、いかに厳しい展開だったかがわかります。

2020年1月に入団してから、公式戦272試合89ゴール79アシスト。2019-20シーズンにはヨーロッパリーグで8ゴールを決めて得点王に輝き、2020-21シーズンは公式戦58試合28ゴール17アシストという素晴らしいスタッツを叩き出しています。2021-22シーズンのチャンピオンズリーグでは、6試合連続で7アシストを積み上げ、大会最多アシストとなっています。

テン・ハフの下で8位に終わった昨シーズンも孤軍奮闘で、ビッグチャンスクリエイト21回はTOPのモー・サラーに1差に迫る2位。キーパス114本はリーグ1位でした。1列下がってプレイする機会が増えた今季は、ビッグチャンスクリエイト12回は8位で、キーパス59本は4位。2つのランキングのどちらかで彼の上にいるMFは、デクラン・ライスとコール・パルマーだけです。

「ブルーノはとても軽視されている。キャプテンに向いていないなどという声は、彼のプレイのネガティブな面を掘り起こそうとしているだけだ」

「スタッツを見てみろ！マンチェスター・ユナイテッドと契約して以来、プレミアリーグでこれほど多くのチャンスを生み出したプレーヤーはいない。ケヴィン・デブライネでも、他の誰でもない。彼こそが誰よりも多くのチャンスを生み出している」（リオ・ファーディナンド）

プレミアリーグは絶望的なポジションですが、ヨーロッパリーグとFAカップという欧州へのルートはつながっています。ファイナルに進出した2020-21シーズンのELは9戦5ゴール4アシスト、2022-23シーズンのカラバオカップは5戦2ゴール1アシスト、昨季のFAカップは6戦3ゴール3アシスト。ノックアウトラウンドで力を発揮するキャプテンに、未来を託したいと思っています。