シュート、ドリブル、ゴールが激減…新生リヴァプールでモー・サラーが孤立している理由。

これまでのリヴァプールの戦いぶりを見ると、最も気になるのは快勝といえる試合がひとつもないことです。2点差以上の勝利は、4‐2だった開幕節のボーンマス戦のみ。この試合も2-0から追いつかれており、フェデリコ・キエーザの勝ち越しゴールは88分です。プレミアリーグに昇格したばかりのバーンリーとの一戦も、95分のPKというきわどい勝利でした。
スタッツをチェックしてみると、最初に目を引くのはリーグ9位の7失点です。イブラヒマ・コナテの不安定な守備に加え、夏に獲得したジェレミー・フリンポンとミロシュ・ケルケズの試行錯誤も、リードを守り切れない理由のひとつになっています。前線で力を発揮できているのはエキティケだけで、ヴィルツ、イサク、ガクポ、サラーは足し算になっていないようです。
とはいえ、「ヴィルツがプレミアリーグに慣れればOK」「イサクの調子が上がれば勝ち続ける」といった見方は、部分的です。前線を俯瞰すると、最大の問題はウインガーの停滞でしょう。昨シーズンのプレミアリーグで38試合29ゴール18アシストのサラーと、35試合10ゴール5アシストのガクポは、開幕戦以降の5試合でオープンプレーからのゴールがひとつもありません。
33歳になったエースは衰えてしまったのか、新たなシステムで活かされていないのか。ここからは、サラーに関する気になる数字を挙げていきます。結論からいえば、「個人もチームも問題を抱えている」といえそうです。「FOTMOB」のデータを見て、あらためて驚かされたのはドリブル成功数で、昨季の58回に対して今季はたった1回。成功率も44.6%から20.0%に減っています。
突破力が落ちているという現象から、個人のスピードダウンという結論を急ぐと、実状を見誤るかもしれません。引き続き、他のスタッツもチェックしていきましょう。90分あたりのシュート数は、3.4本から1.7本。オンターゲットは1.6本から0.8本と、いずれも半減となっています。昨季のゴールの大半はボックスの右からですが、今季は右から枠内に打ったのは3回だけです。
90分あたりのボールタッチは、2024-25シーズンが49.7回で、今季は43.4回。ボックス内に限ると、10.5回から6.0回に減っています。右サイドでキープする機会はさほど減っていないのですが、打てるエリアでもらえる頻度は確実に落ちているといえます。サラーはなぜ、孤立する時間が増えたのか。「スカイスポーツ」のニック・ライト記者が、興味深い事実を指摘しています。
「年齢のせいもあるかもしれない。サラーは6月に33歳になった。しかし、これまで彼の活躍を支えてくれていたプレーヤーの不在の方が、より大きな要因のように見える。リヴァプールは、トレント・アレクサンダー=アーノルドを失ってしまった。彼の退団は、誰よりもサラーに大きな影響を与えている」
「右サイドの連携は、おそらくチームの最大の強みだった。アレクサンダー=アーノルドからサラーが受けたパスの量だけでなく、その種類によるところが大きい。『Opta』のラインブレイクパスのデータからもそれが見て取れる。アレクサンダー=アーノルドは昨シーズン、サラーに対して147本も通している。これはプレミアリーグの他のペアより36%も多い」(ニック・ライト)
なるほど。ラインの裏にアタッカーを送り出すパスを見ると、2位はグヴァルディオルからジェレミー・ドクの108本で、3位はティーレマンスからモーガン・ロジャースの93本。4位はアーセナルでもチェルシーでもなく、コナテからサラーの89本です。アルネ・スロットの初年度が、いかにサラー仕様だったかがよくわかる数字です。
アレクサンダー=アーノルドがサラーに通したラインブレイキングパスの本数を、90分あたりに換算すると5.6本。今季のスタッツを見ると、右SBに入ったショボスライは3.5本で、ブラッドリーは3.3本となっています。「使われるタイプ」のフリンポンはTOP10に入っておらず、3位はサイドチェンジのボールを頻繁に入れるファン・ダイクの1.5本です。
左サイドのケルケズとガクポも、似たような問題を抱えているのかもしれません。イサクやヴィルツを組み込んだ新システムを機能させるとともに、顔ぶれが変わったフルバックからの供給力を高められれば、エースのゴールシーンと圧勝のゲームを増やせるでしょう。今夜のチェルシー戦は、あらためて右サイドの攻略法に注目してみたいと思います。
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