現地紙が激賞する岡崎慎司のパフォーマンス。ゴールシーンのクレバーな動きを詳細分析!
2017年10月21日、リバティ・スタジアム。クレイグ・シェイクスピア前監督が、上位以外とは1勝3分と踏ん張っていたにも関わらず解任となった後の最初のゲーム。岡崎慎司は、クラウディオ・ラニエリも前指揮官もそうしてきたように、ジェイミー・ヴァーディの脇でキックオフを迎えました。「BBC」の表記は4-4-1-1。この日の岡崎のプレイは、2トップの一角というよりトップ下あるいはセカンドストライカーという表現のほうがぴったりでした。
開始1分、さっそくレスター得意のカウンター。マフレズのパスをハーフライン手前で受けた日本代表ストライカーは、中央をスプリントしながらヴァーディが右に流れたのを確認し、モーソンに当てながらも強引なパスをチームNo.1の点取り屋に通します。ヴァーディが左のオルブライトンにサイドチェンジのボールを出すと、ゴールに向かうクロスをバックヘッドで狙ったのは岡崎慎司。左に倒れたファビアンスキが必死に弾き、先制とはいかなかったものの、小柄なFWの抜け目なさが光ったシュートシーンでした。
さらに10分、シンプソンのスローインを胸でトラップした岡崎は、ボックス脇でブリットンをかわすと中央でフリーだったオルブライトンに完璧なラストパス。決めなければいけないボレーを打ち上げてしまったサイドアタッカーは、しばし頭を抱えた後、ひとりで決定機を創った同僚にOKサインを送りました。24分、スワンズの右からのクロスが逆サイドに流れると、追いついたオルブライトンの縦パスが岡崎に通ります。逆サイドを走っていたマフレズへのロングフィードは、アウトにかかって前方に流れてしまったものの、判断は的確だったと思います。ゴールライン際でトラップしたマフレズが持ち直して仕掛け、ニアに速いクロスを入れると、フェデリコ・フェルナンデスがヘッドに当てるもボールは右のサイドネットに一直線。アウェイのレスターが、幸運なオウンゴールで先制しました。
前半を0-1で折り返したレスターは、49分にいかにも彼ららしいカウンターを炸裂させます。岡崎のゴールを、詳細に振り返ってみましょう。右サイドからトム・キャロルがFKを中央に入れたとき、20番はオルブライトンとともに壁に収まっていました。クリアを自陣中央のマフレズが競ると、こぼれ球をエンディディがオルブライトンにつないでカウンターがスタート。11番がドリブルを始めた瞬間、岡崎はヴァーディの次に高い位置にいました。左サイドから縦に持ち込むオルブライトン。前にいた岡崎は、一気にゴール前までスプリントするか、オルブライトンに寄ってパスをもらい、中央のヴァーディあるいは逆サイドに展開するのがセオリーです。ところが、20番はゆっくり走っており、セントラルMFのエンディディが追い抜いていきます。スプリントすればゴール前で勝負できるのに…私は不満でした。ストライカーらしくないと思いました。
ところが、オルブライトンが切り返しを入れて右足に持ち替えた瞬間、黒いユニフォームが一気に加速してボックスに侵入するのが視界に入りました。右にいたマフレズにロングフィードが届くと、岡崎はボールに気を取られたオルソンの背後からラインの裏に抜け出します。マフレズが左足で巧みにニアに出すと、岡崎慎司はファビアンスキの前で触り、左隅に流し込みました。気づくのが遅れて岡崎の背中を見ていたモーソンは、ネットに吸い込まれたボールを思い切り蹴って悔しい気持ちをむき出しにしています。好調のストライカーは、「ボールがサイドに出た瞬間にスプリントしよう」とイメージしながらエンディディの背中を見ていたのでしょう。タイミングを遅らせ、オルソンとモーソンの視界から外れてゴール前に飛び出したのは狙い通りだったのだと思われます。
以前にラニエリ監督が「シンジはオフ・ザ・ボールの動きの質が高い」とほめておりましたが、こういうプレイこそがイタリア人監督をうならせたのだと思います。「あの時は、ボールが来れば決められるとわかっていた。僕の時間だった」。タイミングを完璧に操った岡崎慎司のゴールが、レスターの今季プレミアリーグ2勝めを決定づけました。「シンジは素晴らしい。ポゼッション以外のパートで、彼は仕事をしてくれる。6番のポジションのMFに対してどう対処するべきかを把握しており、レオン・ブリットンに対するプレイにとても満足している」。アップルトン暫定監督は、大活躍のストライカーを手放しで激賞しています。
久しぶりのチームの勝利にテンションが上がった地元紙「レスター・マーキュリー」も、岡崎慎司を「player of the season so far(ここまでのプレーヤー・オブ・ザ・シーズン)」とほめちぎっていました。「彼はただのラッキーチャーム(幸運のお守り)ではない。ピッチにいればチームのパフォーマンスが上がる。MFとヴァーディをつなぐリンクマンとしての技量は不可欠」「スウォンジー戦ではより大きな仕事をした。パスを左右に散らし、マフレズの最初のゴールのチャンスメイクを行い、オルブライトンのためにボックス内でスペースを見つけた」「今季プレミアリーグで岡崎がいた440分は9ゴール、彼がいなかった370分は3ゴール。WBA戦で彼を外したクレイグ・シェイクスピアのミスは高くついた」。あまりにも熱い激賞は、日本のメーカーにまで及んでいます。
「maybe he has new studs on his Mizuno boots because he kept his balance throughout too.(たぶん、彼はミズノ製のシューズの新しいスタッドを手に入れたのだろう。素晴らしいボディーバランスをキープし続けている)」
ワンタッチでシンプルにプレーして、パス&ムーブを徹底したと語るストライカーは、プレミアリーグ3年めにして最高の数字を残すのではないかと思います。今季のプレイをまだ観ていないという方は、ぜひチェックしてみてください。最注目ポイントは、素晴らしいパスワークとインテリジェンス溢れるポジショニングです。
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