メスト・エジルはドイツの誇りであり、勝者である~代表引退宣言に寄せて。
ブンデスリーガ、ラ・リーガ、プレミアリーグで素晴らしいプレイを披露し続け、2014年にドイツを世界一に導いたワールドクラスが、これほどの重い言葉を残して代表を去らなければならなかったという事実に、心が痛みます。政治的な背景について、私は語る言葉を持ちえません。われわれが近隣の国と微妙な関係になることがあるように、メスト・エジルを生んだ国もさまざまな問題を抱えているというだけに留めたいと思います。何事もなく過ぎることはないとわかっていても、家族のためにトルコのトップからの招待を断れなかったというエジルの心情を尊重します。しかし、彼の行動は、ドイツにもトルコにも政治的に利用されてしまいました。「自分が語ったのはサッカーであって、政治ではない」いう主張をそのまま受け止めてもらうのが、いかに難しいかを、あらためて感じさせられる事件でした。
スポーツが政治に支配されないために、われわれファンにできることがあるとすれば、ひとりひとりが「そういうのはやめませんか」と声を挙げることでしょう。TwitterやFacebookがある今なら、大きなムーブメントを起こすことができるかもしれません。触れれば批判を受ける可能性があるなかで、プレミアリーグのレジェンドと、エジルのチームメイトが発した思い溢れる声をリスペクトしたいと思います。
「Massive Respect(多大なる敬意を/リオ・ファーディナンド)」
「Surreal that someone who has done so much for his country on and off the pitch has been treated with such disrespect. Well done @MesutOzil1088 for standing up to this behaviour!(国のために戦った人間が、ピッチの内外で非礼な扱いを受けているのはシュールだ。そんな振舞いに対して立ち上がったメスト・エジル、よくやった!/エクトル・ベジェリン)
そして、エジルのここ数年のプレイをくさしたバイエルンのウルリッヒ・ヘーネス会長や、彼は敗者であり悲しい幕引きだったと評したセバスチャン・ヴォルフ氏に対しては、「エジルはあなたがたの誇りであり、勝者だ」といわせていただきたい。
1990年のワールドカップイタリア大会決勝でドイツに敗れたディエゴ・マラドーナは敗者か?いいえ、1986年にメキシコのアステカで行われたファイナルで、ブルチャガに通した決勝スルーパスは後世に語り継がれる極上の1発でした。2006年のドイツでマテラッツィに頭突きを見舞い、PK戦に参加できなかったジネディーヌ・ジダンは敗者か?いいえ、1998年のスタッド・ドゥ・フランスで優勝候補ブラジルを沈黙させた2発のヘッドは、フランスを世界に認めさせる歴史的なパフォーマンスでした。2014年と2018年に敗れ去ったアンドレス・イニエスタは敗者か?いいえ、2010年のオランダとの決勝を制した延長戦の冷静な決勝弾は、クラブレベルでは証明されていたスペインの強さを知らしめる貴重な一撃でした。エジルもまた、勝者です。南米で行われたワールドカップで、欧州勢として初めて戴冠に辿り着いた近年最高のチームの一員です。
プレミアリーグでエジルの素晴らしいプレイに心を躍らせているグーナーのみなさんは、このたびのエースの宣言に、さまざまな想いを巡らせていることと思います。最後にひとつ、提案です。10番の言葉を信じて、復活を願いませんか?彼は、ドイツやドイツ人に背を向けたわけではなく、グリンデル会長をはじめとする現体制の自分に対するスタンスに抗議しているのです。
「ドイツFAからこのような扱いを受けるなら、望まれていないと感じるなら、僕はもうドイツ代表のユニフォームを着ることはできない」「差別と軽蔑のなかでプレイすることはできない」
ワールドカップ惨敗の傷が癒え、世界最強の国が誇りを取り戻したとき、ドイツFAがいま一度エジルをリスペクトしていることを表明し、稀代の司令塔が代表の10番を身に纏ってプレイする日が来ることを祈ります。プレミアリーグでも勝者となり、34歳で参加することになるカタールで、円熟味という言葉が似合うパスワークを見せてもらえれば最高です。2004年に代表引退を発表した後、翌年に復帰し、34歳となった2006年のドイツで、「ラ・マルセイエーズ」を歌わずに母国を決勝に導いたマドリードの先輩、アルジェリア系フランス人ジネディーヌ・ジダンのように。
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更新ご苦労様です。
涙出そうです。
ありがとうございます。
DFBの会長がコメントを出せと公式に発言されてから、この日が来るのは分かってましたが、どのニュースを見ても政治的な話が絡む為、モヤモヤとした内容ばかりで…
プレーそのものだけにスポットを当てて下さったこの記事がとても嬉しく頭下がる思いです。 これからは全力でアーセナル1筋で頑張ってくれることを祈ります。
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彼は勝者、この言葉に溜飲が下がります。
他の誰が何を言おうと、エジル本人が感じたことは、彼にとっての事実です。周りがあれこれ詮索し、尾びれ背びれをつけるのはおかしい。彼が言う自らのルーツに対する敬意を推し量るべきです。…と、思ってました。
これがアーセナルの今シーズンにとってのモチベーションの一つになってくれることを願います。
彼が勝者であることを、チーム全体で、スタジアム全体で証明してほしいです。
更新ありがとうございます。
ガナーズとして、彼が勝者であることをサポートしたいと思います。
ベジェリンありがとう!
素晴らしい記事です。
国、団体、組織のトップの人達の頭のレベル低下は、世界的なものですね。
悲しくなります。
エジルはアーセナルの宝です。
ドイツ国民にとっても、走りに走り、汗を流して戦ってくれた宝だと思うのですが。
自分のルーツにプライド持つことは当たり前で、そこは汲み取ってやれないもんかね?
んで、トルコ側もムカつくわー。
似たような問題を自身のルーツに抱える仲間達もいるし、言葉をかけてもらえるはず。
クラブではサッカーに純粋でいさせてあげたい。
エジルのボールタッチに沢山の拍手が降り注がれる事を期待して、今季も愛をもって応援します。
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これは心に突き刺さりますね。
エジル、頑張れ。
私はサッカーを愛する人間です。
こんな事で表舞台から選手が去るのは残念でなりません。
お互いの個人の思想だからぶつかる事はあるかもしれないが、こんな結末は誰も望んでいないはず。
もう終わった事なのでどうしようもないけれど、とにかくエジル、頑張れ。
ユナイテッドサポですが、全力で応援します。
この話題を取り上げて下さりありがとうございました。
更新ありがとうございます。
エジルに対するリスペクトのある文章に、とても嬉しい気持ちになりました。
この2日ほど?随分と心を引っかき回された状態だったので、ジダンやイニエスタの経歴などをなぞりつつエジルを勝者であるとの意見には救われました。
彼が代表に戻れるのか、戻るのかどうかは分かりません。
私としてはそれよりも、彼が今後ドイツ国に帰ることすら困難にならないだろうかが心配です。
もしも彼が引退の場をドイツのクラブで考えていたとしたら。それも難しいのでしょうか。
ロンドンに住む選択肢やトルコに住む選択肢もあるでしょうが。。。
せめて、ドイツにおいてサッカーの面での功績だけは忘れ去られてほしくありません。
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Kicker誌日本版、熟読させていただきました。
うーん、何というか、本当に残念でなりません。
エジルにはちゃんとしたスタッフやブレーンは付いてたんでしょうか。
協会の初動対応もなってないし。エジルサイドの対応もギュンドアンに比べるとちょっと・・・
2年前に息子がトルコに観光旅行に行くと言い出して(政情不安で断念しましたが)それ以来トルコ関連のサイトを継続してみてまして、エルドアンってホントに厄介な人なんですよ。
繰り返しますが、この件でエジルの栄光とドイツサッカーへの貢献が色あせることは絶対に無いと思います。
すてきな
エジルの全文を読んで涙が出ています。
パフォーマンスの批判は受ける、ただアイデンティティに関わる部分の批判は絶対に受けられないと言う彼の主張をドイツ国民が読み取って内省してくれることを祈りたいです。
へーネス会長等を非難する声明がドイツ代表の仲間や連盟から出ますように。
同じ日本人の中ですら 関東関西で差別があるくらいです。
それこそ、生まれで差別をなくそうと言うのは現実味がありません、しかし、こういう出来事を見ると悲しい気持ちになりますね。
悲しいですが、これが人間社会の中で生きるという事である。と勉強にもなりますね
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同じ日本人の中ですら 関東関西で差別があるくらいです。
それこそ、生まれで差別をなくそうと言うのは現実味がありません、しかし、こういう出来事を見ると悲しい気持ちになりますね。
悲しいですが、これが人間社会の中で生きるという事である。と勉強にもなりますね
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誠実な記事ありがとうございます。
かつてのトルコの英雄ハカン・シュキュルの話が記事に出ていて、あわせて考えさせられるものでした。エジルに大統領との会談を断ることはできなかったのかもしれない、などとも想像しました。
https://globe.asahi.com/article/11671521