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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Arsenal×Wolves】ラウル・ヒメネスは頭蓋骨骨折。冷静でいられなかった105分。

衝撃の一戦でした。アーセナルの敗戦、そしてラウル・ヒメネスの痛ましい事故。試合が始まって20分を過ぎても両者ともシュートがなかったのは、退屈なゲームだったからではありません。キックオフから4分30秒、ウィリアンが蹴ったCKの直後に起こったアクシデントで、プレミアリーグでは異例の10分の中断があったからです。ニアでボールに反応したダヴィド・ルイスとラウル・ヒメネスが激突。頭部を激しく打ち付けた2人の選手はピッチに倒れ込み、動きませんでした。

インパクトの瞬間の弾けるような音を聞いたメディカルスタッフは、大変なアクシデントが起こったと瞬時に判断し、2人に駆け寄りました。アーセナルのCBは起き上がり、ピッチの脇に座り込んで頭に負った裂傷の治療を受けています。今季プレミアリーグで9戦4発のウルヴスのエースは、まったく動けません。タッチラインでは、18歳のファビオ・シウヴァが準備完了。ヌーノ・エスピーリト・サント監督は、深刻な表情でうつむいています。

私は、ライアン・メイソンを思い出していました。トッテナムからハル・シティに移籍したMFは、2017年1月22日のチェルシー戦でガリー・ケーヒルと接触し、頭蓋骨骨折の重傷を負いました。14枚の金属プレートと28本のボトルを埋め込み、42針を縫う治療を受けた25歳のイングランド代表は、顔面と身体の麻痺を乗り越えてフットボールができる状態に回復したのですが、ピッチに戻れると背中を押すドクターはひとりもいませんでした。「もう1度、似たようなことがあれば命に係わる」と諭されたライアン・メイソンは、現役続行を断念しました。

10分を超える治療の後、ラウル・ヒメネスは担架で運ばれ、ゲームは再開。スコアが動いたのは、27分でした。右サイドでキープしたアダマ・トラオレが縦へのワンタッチでティアニーをかわしてクロスをフィード。昨季プレミアリーグのリヴァプールとのホームゲームで、リーグNo.1のSBともいわれるアンディ・ロバートソンをちぎりまくった馬車馬に1対1で対峙すれば、何度か抜かれるのは覚悟しなければなりません。ファーに浮いたボールに走り込んだデンドンケレのヘッドがクロスバーを直撃。リバウンドを拾ったペドロ・ネトがダイレクトでネットに突き刺しました。浮き球を競ったベジェリンも、ゴールライン上でクリアしようとしたガブリエウ・マガリャンイスも無力でした。

アーセナルの反撃は29分。スルーパスで左から抜け出したティアニーが、オーバメヤンが走り込むエリアにクロスを入れると、ストライカーの前に戻ったコーディーがスライディングで足に当て、同点ゴールを回避。直後のショートコーナーからウィリアンがファーに浮かすと、ガブリエウの完璧なヘッドが左隅に吸い込まれました。1-1、同点。アーセナルは左サイドのサカとティアニーが可能性のある崩しを繰り返し、ウルヴスはペドロ・ネトとアダマ・トラオレの突破力が脅威となっています。

アウェイチームの勝ち越しゴールは42分。ゴール前で奪ったボールが右サイドに出ると、ティアニーを背負ったアダマ・トラオレが巧みなターンでジャカをかわして縦にフィードしました。このボールを受けたネトがドリブルで左に流れると、チェックしたダヴィド・ルイスとベジェリンは足を出せずに左足のシュートを許してしまいます。SBに当たってコースが変わり、レノは体でブロックするのが精一杯。ガブリエウのスライディングをボールを浮かしてかわしたポデンスが、無人のゴールに流し込みました。

シュートが打てないアーセナル。ベジェリンが中に絞る工夫は、ライン際に残ったウィリアンの孤立を招いているようにしか見えません。出しどころがなく苛立つジャカと、横へのパスが目立つダニ・セバージョス。55分もかかった前半のホームチームのシュートは、3本に留まっています。オーバメヤンのタッチはわずか8回、うち2回はキックオフです。

頭に巻いた包帯に血を滲ませていたダヴィド・ルイスは、ハーフタイムにリタイア。最終ラインに入ったのはホールディングです。50分、ボックス脇をベジェリンが突破。待ち焦がれたチャンスで、クロスをもらったサカは左足のボレーをミスしてしまいました。右からボックスに侵入したアダマ・トラオレをガブリエウが引っかけたように見えた54分のシーンは、ウインガーのシミュレーションというジャッジに助けられました。ウィロックは何もできず、プレミアリーグ9戦2発と不振のエースに勝負できるボールは入りません。

64分のショートコーナーは、ウィリアンが斜めに出したボールでサカがゴールライン際に飛び出しますが、クロスに反応したホールディングのヘッドは浮いてしまいました。この直後、アルテタ監督はウィリアンをネルソンにチェンジ。残り時間が20分を切っても、ガナーズは打開策を見出せません。73分、バックパスを受けたルイ・パトリシオのトラップをオーバメヤンがさらいますが、シュート体勢に入るのに時間がかかり、右隅を狙ったコントロールショットはコーディーがブロック。アルテタ監督は80分にジャカを下げ、ラカゼットとオーバメヤンが並ぶ4-1-3-2にシフトしました。

82分、ベジェリンのクロスを叩いたオーバメヤンのヘッドは惜しくも左にアウト。ストライカーが競り勝ったのは、ラカゼットがニアに入ってくれた効果でしょう。ゲームは1-2のままでタイムアップ。オーバメヤンのボールタッチは、レノよりもひとつ少ない23回に終わりましたが、左右からクロスが上がり続けた最終盤の猛攻はひと筋の光のように感じられました。執拗に張り付くマーカーの注意を逸らす存在が近くにいれば、絶対的エースは得点力を取り戻すのではないでしょうか。

心がざわつく105分。ウィリアンがCKを蹴るたびに、あのシーンが頭をよぎりました。ラウル・ヒメネスは頭蓋骨の骨折と診断され、手術は成功したと伝えられています。今はただ、回復を祈ることしかできません。


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“【Arsenal×Wolves】ラウル・ヒメネスは頭蓋骨骨折。冷静でいられなかった105分。” への1件のコメント

  1. 飯田 より:

    本当に素晴らしい選手なだけにこれからも活躍してもらいたいですが、そんなことより今は何よりも無事と回復をしてもらいたいですね。

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