偏愛的プレミアリーグ見聞録

強い。強いです。相手がプレミアリーグ昇格組のなかでいちばん戦力が貧弱なクリスタル・パレスだったことを割り引いても、正確で早いロングパスを左右に展開するリヴァプールの攻撃は迫力があります。スアレス、スタリッジ、ジェラードと、獲るべき人が前半のうちにきっちりゴールを奪い、リヴァプール、完勝です。

前半開始直後から、リヴァプールのワンサイドゲーム。スアレス、スタリッジは相変わらずキレてますが、このところ素晴らしいのが左SBのホセ・エンリケです。11分には、中央に走り込んでフリーになったモーゼスに、DFの合間を縫うようなグラウンダーのピンポイントクロスを通し、モーゼスのトラップミスさえなければ先制点というチャンスを演出。この挨拶代わりの1本で、クリスタル・パレスが警戒を強めればよかったのですが、態勢が整わないまま3分後にまたもやホセ・エンリケがオーバーラップ。スアレスとのパス交換からペナルティエリア左を突破し、フリーでゴールライン際からスアレスにリターン。これを受けたスアレスは、3人に囲まれ転倒しながら右足でボールを引っかけるトリッキーなシュートを決めて、1-0。エースの復帰後2試合連続ゴールで、コップのボルテージは一気に最高潮です。

さらに17分、今度は絶好調スタリッジ。左からペナルティエリア内に侵入し、DFを切り返し2回で簡単に振り切ると、角度のないところから逆サイドのネットを射抜く強シュート！これであっさり2-0。勝負は決まったといっていいでしょう。この日のクリスタル・パレスに、リヴァプールを上回れる要素はどこを探してもありません。前半で唯一惜しかったのは、ケベがゴール前でミドルシュートのコースを変えたシーンでしたが、これはミニョレがセーブ。反撃のきっかけをつかめないまま、絶望的な3点めが入ってしまいます。

37分、左からの突破が多かったリヴァプールが、右から崩しにかかります。ショートパスのコンビネーションで縦に飛び出したのはスターリング。抜けたら1点、というチャンスでしたが、抜かせなくても手で相手を倒したら、やはり1点です。転倒したスターリングをみて、主審は迷わずPKのジャッジ。これをジェラードがいつもどおりに決めて、前半だけで3-0です。

スアレスは、この後もキレまくりです。39分には左から突破して、ゴール前3メートルの位置にいたモーゼスにぶつけるような強いクロスを通しますが、シュートはバーをかすめてゴールならず。45分にはゴール中央で受けたボールを右に持ち込んでGKと1対1になり、GKの左脇を狙いますがこれはCK。終了間際の85分にも、やはり左サイドをひとりで完全に崩し、スタリッジのゴールポスト直撃のシュートを演出します。結局、追加点は入りませんでしたが、あまりのワンサイドな展開にチーム全体がペースを落としたがゆえの3点どまりで、相手が強く攻めてきていれば、スアレスとスタリッジでもう2～3点は獲ったでしょう。

ゲームは後半、FKからベイルのヘッドでクリスタル・パレスが1点を返しますが、これ以外にさしたるピンチもなく、3-1でフィニッシュ。相変わらず、セットプレイ時のニアにいる選手のケアに課題はありますが、サコ、コロ・トゥレ、シュクルテルのDFラインは及第点をあげていいでしょう。リヴァプールの怖さは、相手の守備が手薄と見るや、自陣深いところからでも速くて正確なロングフィードをサイドの選手にピタリと合わせられること。そして、サイドで受けても簡単に中に斬り込んでシュートまで持ち込んでしまうスアレスとスタリッジのスピードです。SBがスピードに弱いアーセナルや、サイドの攻め上がりを抑えられると攻撃力が大幅に落ちるマンチェスター・シティは、変幻自在のダブルエースに相当手を焼くのではないでしょうか。

そうそう、モーゼスの存在を忘れてはいけませんね。しかしこの日は決定機を2度もつぶしてしまうなど、彼の日ではなかったようです。チェルシーからきたバランス感覚に優れたMFが後ろから再三飛び出してくると、さらにマークが分散し、トップのふたりにチャンスが増えます。7-1で終わっていてもおかしくなかった会心の勝利で、リヴァプールはプレミアリーグ暫定首位。今夜、アーセナルと当たるWBAの健闘待ちです。