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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Fulham×Everton】お見事、ロベルト・マルティネス!知将が演出した鮮やかな劣勢巻き返し劇場!

リヴァプールが7連勝、エヴァートンは4連勝と、現在無敵のマージ―サイドコンビ。しかし、好調とはいえエヴァートンにとっては、この時期クレイヴン・コテージで戦うフラムとのアウェイゲームは、嫌な一戦だったでしょう。プレミアリーグ最下位となり、残留に向けて必死のフラムは開き直るしかない状態。よりプレッシャーがかかるのは、プレミアリーグ4位まであと4勝ち点と上が見えてきたエヴァートンのほうです。前日、クリスタル・パレスとのアウェイ戦で、プレミアリーグ首位を走っていたチェルシーが敗れたばかりです。

ゲームが始まると、これはこれで予想通り。前日の試合で、クリスタル・パレスが前半途中からチェルシーを圧倒し始めたように、手ごたえを感じながら攻撃を仕掛けているのはホームで戦うフラムのほうです。CBジャギエルカ不在のエヴァートンは守備に不安を抱えており、デンベレ、リチャードソン、ホルトビーが前に圧力をかけてくるフラムの攻撃を抑えきれず、シュートまで持ち込まれるシーンが目立ちます。攻めても、ルカクに効果的なパスが出せず、デュルフォーは完全に空回り。両者に対する予備知識なしで、前半終了時にこのゲームの結果を予想してもらったら、過半数はフラムの勝利かドローにチップを張ったことでしょう。

さて、この試合のおもしろさは、「プレッシャーのかかる手負いの下位チームとの戦いで、劣勢に立った知将ロベルト・マルティネスは何をしたのか」というテーマにあります。後半開始と同時に、エヴァートンを率いて1年めのスペイン人監督は思い切った手を打ってきます。ロス・バークリーを外して、ナイスミス。決して選手層が厚くないエヴァートンだけに、この交代は驚きでした。しかも、不調のデュルフォーではなくバークリー。マルティネス監督の意図は、最近FW起用が多かったナイスミスをルカクの近くにつけてトップの孤立を防ぎ、ゴールに近いところまで一気にボールを持っていこうということなのでしょう。であれば、サイドのデュルフォーではなく中でプレイする機会が多い選手を代えるのも理解できます。しかし、それにしても大胆ではあります。

この交代は、後半が始まってわずか5分少々で最初の成功を迎えます。右からのCKのこぼれ球を、強烈な左足ボレーで叩いたのはナイスミス!記録上は、目の前にいきなり現れたボールをゴールに蹴り込んでしまったGKストックデールのオウンゴールとなりましたが、これはナイスミスに記録をつけてあげるべきファインゴールでした。ここから、エヴァートンの攻撃が活性化し、前半とは別のチームになります。

65分のルカクのシュートが決まっていれば、エヴァートンの勝利はここで揺るぎないものになったと思われますが、スコアは1-0のまま終盤戦に突入します。69分、マルティネス監督が切った2枚めのカードは、ケヴィン・ミララス。攻撃に貢献できなかったデュルフォーは、ここでアウトとなります。しかし71分、左からドリブル突破を始めたのは、こちらも途中出場のフラムMFデヤガでした。大きなステップのドリブルから、中に入って2人のDFを翻弄した背番号24の右足シュートは、ニアサイドぎりぎりに吸い込まれるスーパーミドルで1-1、同点。プレミアリーグ残留をめざすフラムも、簡単に土俵を割るわけにはいきません。

1-1のまま時間は過ぎ、残り時間が15分を切ると、マルティネス監督が最後のカードをさらします。中盤を落ち着かせていたレオン・オスマンを下げ、投入したのは1月にスパルタク・モスクワから獲得したエイダン・マクギーディ。ギャレス・バリーとマッカーシーの守備の負担が増えるのを承知で、前線に張ったルカク、ミララスへのパス供給源を増やして勝ち越し点を獲りにいくという采配です。そしてその3分後、この采配がピタリとはまります。

80分、GKハワードからのパスをハーフラインを越えたあたりで受け、すぐに前を向いたマクギーディは、右から前線に流れてきたミララスに必殺ラストパス!これを受けたミララスは、左サイドに流れながら、GKと左ゴールポストの狭いすき間を抜くシュートを突き刺します。交代選手が全員ゴールに絡むという見事な采配で、エヴァートンがついに勝ち越し!87分に、ミララス、レイトン・ベインズとつないだボールを中央で受けて、ダメ押しの3点めを決めたのもナイスミスです。結局、エヴァートンが1-3でフラムを下し、アーセナルにプレッシャーをかける5連勝を決めました。

マルティネス監督の交代には、意図とストーリーがありました。残り時間が45分あった最初のカードは、ディフェンスにリスクをかけずに前の打ち手を広げるナイスミス。2枚めは、さらに前線を強くするミララス。残り13分となった最後の打ち手は、ミララス、ルカク、ナイスミスと揃った役者たちをうまく動かすパスが出せるマクギーディ。そしてここで、初めて守備のリスクをとります。いやいや、お見事。選手たちには、かなり明確に指揮官の意図が伝わったのではないでしょうか。

昨日、プレミアリーグ7位で来季の欧州へのステージ進出が危ぶまれているクラブの監督が、「誰が監督をやっても苦戦はまぬがれなかった。アレックス・ファーガソンでも結果は同じようなものだっただろう」などと、とんでもない発言をしておりました。そんなことはないでしょう。負けそうなゲームをイーブンに持ち込み、五分五分の戦いを勝ちに持っていくのが監督の仕事です。何なら来季、あなたとマルティネス監督をトレードして、プレミアリーグを戦ってみましょうか、モイーズ監督!…悪くないな、そのアイデア。ふふ。

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“【Fulham×Everton】お見事、ロベルト・マルティネス!知将が演出した鮮やかな劣勢巻き返し劇場!” への2件のフィードバック

  1. ふらんすぱん より:

    名前をカタカナ表記にする際、一般的に書かれる書き方と違っていて抵抗を覚える。

    ネイスミス→ナイスミス
    デウロフェウ→デュルフォー

  2. makoto より:

    選手や監督の名をカタカナにするのは確かに難しいと思います。母語表記と英語表記がゴチャゴチャですから。
    確かにカタルニア語ではジェラール・デウロフェウになりますが、英国ですから英語表記でよいのでは。

    —–
    ふらんすぱんさん londres nordさん>
    これはですね、どう書いてもツッコミをいただくんですね。アーセン・ヴェンゲルさんも微妙です。ユーヴェのジョレンテは、バスクではジョレンテではないそうですし、ベルギーは言葉が複数あるのでこれも難しい。英語で伸ばす音はフランス語ではあまり伸ばさなかったりもしますし、ドイツ語の「シュターディオン(スタジアム)」は、地方によっては伸ばすところが違います。

    「一般的」というほうが、突如変わったりすることもあります。私が使っている書き方で、いちばん「違うんじゃない?」といわれそうなのはノーウィッチだと思いますが、これは完全に出遅れましたね…。今は大多数が「ノリッジ」で、これが言語に近いのは間違いありません。

    コロコロ変えると、いつも読んでいただいている方を困惑させるような気がして、大きな理由がなければそのままにしています。大勢の方が「読みにくい」とおっしゃる表現、表記があれば、そのときは検討したいと考えています。

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