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【Liverpool×Watford】EL決勝と来季を見据えるクロップ監督、イメージ通りの2-0完勝⁉

あまり話題になりませんが、今季プレミアリーグ36節までのワトフォードの失点42は、昇格1年めのクラブが残した数字としては素晴らしいと思います。これより少ないのはTOP6のみ。ワトフォードは、ウェストハムの47、リヴァプールの48より少ない失点でシーズンを終えようとしています。キケ・フローレス監督は、試合によってはスタメンの国籍が全員違った多国籍軍をよく束ねました。プレミアリーグ37節のアンフィールドでも、9ヵ国の選手を並べてリヴァプールに挑みます。対するヨーロッパリーグのファイナリストは、オジョ、スチュワート、ジョーダン・アイブ、フラナガンを先発に据えるターンオーバー。トップにはベンテケ、CBにルーカスを抜擢してシュクルテルと組ませたクロップ監督は、早い時間の先制点で、ゲームを優位に進めたいところです。

8分にジョー・アレンがミスパスをイガロに拾われ、超ロングシュートを喰らったシーンはヒヤリとさせられましたが、アルベルト・モレノとフラナガンが左右からクロスを入れてくるレッズの攻撃はスピーディで、迫力があります。12分にはハーフラインから中央に持ち込んだオジョが左に展開し、コウチーニョが得意の切り返しからきわどいシュート。1分後、オジョがベンテケに合わせたクロスは、今日のレッズの狙いのひとつでしょう。17分に鋭い出足でイーブンのボールを自分のものにして、巧みなタッチでつないだジョー・アレンは相変わらず元気で、こういったプレイに惜しみない拍手が送られるのがアンフィールドです。

ワトフォードのアンヤがカウンターから持ち込み、思い切りよく左足のシュートを放ったのは25分。この1分後には、縦パス一発でイガロが抜け出しかけ、ぎりぎりで追いついたシュクルテルが足を出してCKに逃げるシーンがありました。イガロとディーニーという強力な前線が自慢のワトフォードは、いいときはカウンターがはまりまくる一方で、中央偏重の単調な攻撃を読まれてシュートが打てなくなる試合もあります。33分のベンテケの直接FKは壁がブロック。ここまではうまく戦っていたアウェイチームは、35分に先制点を奪われてしまいました。

ハーフラインを過ぎたあたりの中央からのFKだったのに、スチュワートのすぐ脇にコウチーニョがいたのは、練習していた形だったからではないでしょうか。キックが正確な10番がすかさず前線のベンテケにロングボールを送ると、完璧なヘディングの落としに飛び込んだのは、やはりこの人、ジョー・アレン!前半はこの1点でハーフタイムとなりましたが、レギュラーメンバーを半分落としたレッズの攻撃は悪くありません。急造CBコンビはポジショニングの悪さが目立ち、シュートに対する対応が曖昧になるシーンがあったものの、これを修正できれば順当勝ちでゲームを終えられるでしょう。

48分、コウチーニョからベンテケにパスが出たカウンターは、折り返しをもらったコウチーニョのボレーがうまく当たらず。49分にもベンテケとの絡みからシュートを放ったコウチーニョは、プレミアリーグで最もシュートに対する積極性が高いMFでしょう。55分には、レッズの弱点が出てしまい、あわや同点というピンチがありました。アンヤのパスをディーニーにスルーされて股を抜かれたルーカスと、トラップしたイガロに一発で無謀なスライディングを仕掛けたアルベルト・モレノ。狙いすぎた一撃が左に外れて助かりました。ビジャレアルとのアウェイ戦でも判断ミスとマークミスを犯して失点の原因となった左SBは、ゴール前での冷静な対応も覚えなければなりません。

61分にコウチーニョと代わってピッチに入ったフィルミーノは、15分後に貴重な仕事をしました。アブディのFKやベルファイスのミドルにゴールを脅かされていたリヴァプールは、アンヤのパスをオジョが敵陣でインターセプトし、ショートカウンター。パスの出し先を窺いながらゴール前まで持ち込んだフィルミーノが意を決して左隅にシュートを放つと、ゴミスが弾き切れずにボールはネットに転がります。82分にペナルティエリアのすぐ外で相手ボールをカットし、ジョー・アレンの戻しを受けて右足で狙ったベンテケの一撃は、コースを切ったゴミスがセーブ。87分、右サイドに出たルーカスから縦に走ったフィルミーノにパスが出て、ゴールライン際からのグラウンダーをファーのアイブが合わせた決定機は、ポストにぶつけて3点めはなりません。イガロに悩まされ続けた守備陣は、ノーマークにすることだけはなく最後まで守り切りました。2-0、タイムアップ。ランダルとブラナガンにもプレミアリーグのピッチを踏ませたリヴァプールにとっては、目先の勝ち点と未来への準備を両立させた最高の勝利だったのではないでしょうか。

クロップ監督は、来季のヨーロッパリーグの出場権など見ていない、とはいい過ぎでしょうか。指揮官が考えているのは、ヨーロッパリーグ決勝に向けてのコンディショニングと、より多くの選手たちに「らしさ」を発揮してもらい、来季のステップアップにつなげることのようにみえます。ロジャース監督でも16勝10分10敗のプレミアリーグ8位はいけたはずですが、クロップ監督でなければ、欧州のファイナル進出と数字では表せない次につながる若手の成長は残せなかったのではないかとあらためて感じたゲームでした。

GKは要強化。最終ラインは、ナサニエル・クライン、デヤン・ロブレン、マティプあるいはジョー・ゴメスまではOKで、アルベルト・モレノにはポジションを脅かされるような守備に長けたライバルが必要でしょう。エムレ・ジャン、ルーカス、ヘンダーソンに、ジョー・アレンがもうひと皮剥けて、スチュワートの成長が加わるならセントラルも強くなります。オジョがトップレベルで常時使えるようになり、刺激されたジョーダン・アイブが自分の持ち味を磨き、クロップスタイルへの理解が深まったララナ、ミルナー、フィルミーノ、コウチーニョにマルコヴィッチまでいれば2列めも充足。上が停滞すれば、ロシターやブラナガンが彼らに取って代わるでしょう。2年めのベンテケが、プレミアリーグデビューシーズンの19ゴールの輝きを取り戻し、さらにやってくれそうなオリギ、負傷さえなければワールドクラスのスタリッジ、巻き返しを期すダニー・イングスのFW陣…。

楽観シナリオではありますが、こうして並べると、今季のトッテナムが後ろ重視の補強で成功したように、GKと左SBを獲るだけでもリヴァプールは相当強くなりそうです。ゲッツェ、香川真司、グロスクロイツ、スボティッチといった若手を育て、大型移籍に頼らないチーム作りでドルトムントを強くしたクロップ監督は、既に舞台裏ではノーサンキューを連発しているかもしれません。楽しみです、2016-17のニュー・レッズ。

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“【Liverpool×Watford】EL決勝と来季を見据えるクロップ監督、イメージ通りの2-0完勝⁉” への8件のフィードバック

  1. リバサポ より:

    来季はグルイッチもいますよ…
    クロップの補強第1号です。

  2. イスタンブールより より:

    ELファイナルが楽しみになってきました!
    ところで、スカウサーのロシターは契約延長の動きは無く、レンジャーズと交渉中だそうです。

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    クロップさんはまだ1人も補強してないってのが凄いですよね。全然チームの雰囲気が前とは違います。
    リバプールは今後数年で何かを成し遂げそうな気がします

  4. makoto より:

    リバサポさん>
    そうでした。シーズンいっぱいセルビアでしたっけ。デル・アリのようにブレイクしたらいいですね。

    イスタンブールより さん>
    決まりますかね。もったいないです。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    冬には新しい選手は来なかったですからね。コンセプトと戦術の注入だけで、相当チームを変えましたよね。

  5. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    ワトフォードには、このメンバーでしっかり勝ちきれてよかったです。ロジャーズも好きな監督でしたし未来を考える事ができましたが、ヨーロッパを知るクロップだともっとポジティブな未来を想像できます。まずはEL決勝をモノにし未来の布石にしていきたいです。最後にアカデミー出身のロシターの移籍は残念です。

  6. nyonsuke より:

    更新お疲れ様です。

    クロップ監督でなければEL決勝と来季への展望はなかったとの意見には至極同感です。
    ロジャース前監督も好きな監督でしたが、クロップ監督ほどのマネージメントに達するにはあと数年必要だったでしょう。
    しかもELでのアンフィールドでの一体感をみてしまうと、クロップ監督のレッズ就任はまるで運命だったかのようです。
    これほどアンフィールドに似合う監督はいないと思います。
    まずはEL制覇、そして夏の補強からの来季、楽しみでしかたありません。
    補強に関してはどのような方針でいくのか興味があります。
    リーグのみであればスパーズのように後のみと割り切っても面白いですが、結局ヨーロッパを闘えるほどの戦力ではありませんでした。
    クロップサッカーは周知の通りかなりのインテンシティーを要するので、もしCL出場の場合は各ポジションにそれなりの補強が必要ではと思いますが、クロップ監督はどうするでしょうか。
    これまでつらいシーズンが続いただけに、ファンとしてはクロップ監督による栄光の時代の幕開けとなってくれるとうれしいです。

  7. queen より:

    これだけのメンツですと、まずは人員整理をどうするかも考えた方がいいかもしれませんね。仮にワントップなら、候補はオリギ、イングス、スタリッジ、ベンテケで、この中の少なくとも一人はベンチ外になるでしょうから。もし、ベンテケが粘り強く競争を受け入れるなら良いですが、「スタメンじゃないと嫌だ」ということであれば、移籍を視野に入れるのも一つの選択かと(自分も管理人さん同様、復活を期待してはいますが)。
    ちなみに補強は、レノ、ベン・デイビスとかはどうかなと思いました。

  8. より:

    かかる負荷も上がってますので3列目以降は補強必須ですけど、ELの決勝に進めるとは思ってませんでした。
    クロップ監督のおかげで最近はレッズのことばかり考えてます。
    レッズの順位は6位争いとスパーズの躍進までは開幕時の予想が結構あたったかな、と思います。
    まあシティが4位以下に落ちる姿は絶対に想像できないとか外してますけどw

    ロシターって3列目の印象が強かったですけど、2列目でしたっけ?
    ともかくブラナガンというアカデミー期待の星とマルコに加えてルイス・アルベルトも帰ってきそうなので確かに不要ですね。

    3列目はアレンもヘンダーソンもケガが心配なので補強が必須です。カンと3人では厳しいです。
    ルーカスは走力の低下が顕著なのでCB以外使えなくなってきました。スチュアートでは攻撃力不足。
    グルイッチは将来には少し期待していますけど、技術と判断スピードがプレミアレベルにないと思ってます。
    数が足りずにヘンダーソンが壊れたことを考えると、カンを守るためにも1人即戦力がほしいです。

    両サイドバックの控えにしろCBにしろジョーゴメスは重いケガ明けなので1000分プレー出来ればいいなーと思ってます。
    ミルナーに左SBでレギュラーやってほしいのでモレノを超える左SBより両サイドできる控えがほしいです。
    CBもコロ退団の恐れが出てきましたし、サコはドーピングで長期出場停止でしょうし補強が必須だと思います。

    補強もそうですが、25名の枠に対してU21含めて50名くらい選手を抱えてますので相当数の放出が必要です。
    テイシェイラやウィズダムなどの22歳以上の中途半端な選手が対象になりそうですけど、若手も多少は切られるでしょうね。
    ブラナガンを除くとぎりぎりライアン・ケントしか若手・U21組には可能性を感じないですけどちょっと残念ではあります。

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