偏愛的プレミアリーグ見聞録

エティハドで開催されたプレミアリーグ28節の延期試合は、8連勝のマンチェスター・シティと残留をめざすウェストハムの対戦でした。上位のチームが、何としても降格を避けたいチームに足を取られるという結末はよくある話。2週間前のハマーズ戦で、2-0から追いつかれて落胆したグーナーたちは、同じ結果を期待したのではないでしょうか。

立ち上がりから押していたのは、やはりマン・シティです。9分にグリーリッシュのグラウンダーをマフレズが左足で合わせると、右に反応したファビアンスキがセーブ。30分に左から放ったグリーリッシュの一撃は、ニアポストにヒットしました。2分後、ハーランドをポストに使って前線に飛び出したロドリのシュートは、右のポストを叩いて逆サイドに転がっていきました。

前半は0-0。圧倒的な強者を見ながら、ブラジルに一方的に攻め立てられながら、GKジーダのミスを突いて伊東が決めた「マイアミの奇跡」を思い出していました。デブライネを欠いたホームチームは勝ち切れるのか。優勝争いを盛り上げるアップセットは起こるのか。ドキドキが一気に醒めたのは、セカンドハーフが始まって間もない50分でした。

中央やや左からのFKをマフレズが右に浮かすと、完璧なヘディングを突き刺したのはナタン・アケ。54分にグリーリッシュに預けて中央でリターンをもらったハーランドは、ファビアンスキのマークでコースを塞がれ、強引なキックをブロックされました。アーセナル戦で2-0からイーブンに戻したアウェイチームは、残り20分まで1-0で耐えていたのですが…。

71分、楔のパスを受けたダニー・イングスの落としをベルナルド・シウヴァがさらい、グリーリッシュにボールが渡ってカウンター発動。中央からドリブルで上がった10番は、右から左に流れてきたハーランドに完璧なラストパスを通しました。ラインの背後に出たエースは、ファビアンスキが出てくるのを見てチップキック。GKの頭上に浮いたボールは、枠の中に落下しました。

85分に、マフレズのCKのクリアを左足で叩いたのはフォーデン。エメルソンのかかとに当たってコースが変わり、逆に動いたファビアンスキは反応できませんでした。結局、3-0。ハーランドの1発を演出したグリーリッシュは、デブライネの不在を忘れさせる素晴らしいパフォーマンス。エースのプレミアリーグ35発は、シアラー＆アンディ・コールの34を超えるレコードです。

彼が決めた試合は、プレミアリーグ19勝3分、チャンピオンズリーグ5勝1分、国内カップ2勝でトータル26勝4分と負けなし。9連勝中のプレミアリーグでは、欠場したレッズ戦以外の8試合すべてでゴールかアシストを記録しています。

「彼がわれわれと一緒にいることを、誰もが喜んでいる。この記録は、遅かれ早かれ破られるだろう。おそらく、未来の彼自身によって。これからも決め続けるはずだからね。アンディ・コールやアラン・シアラーは信じられないようなストライカーだけど、彼は匹敵すると思う」（ペップ・グアルディオラ）

首位に復帰したマン・シティは、残り5試合を4勝1敗でOK。リーズ、エヴァートン、チェルシー、ブライトン、ブレントフォード…最後の2戦はやっかいですが、ニューカッスル、ブライトン、ノッティンガム・フォレスト、ウルヴスに全勝というアーセナルよりはラクなミッションです。

デジタルにいえば、マン・シティの最短優勝は、5月14日の36節。両者ともに勝ち続ければ、5月24日に開催される32節の延期試合のブライトン戦がXデーとなります。しかし実勢としては、アーセナルがマグパイズ戦でポイントを落とせば決まりでしょう。「まだまだわからない」というためには、次節のエティハドでリーズが王者に勝つぐらいのインパクトが必要です。

「ただでさえ最強のチームに、世界一のストライカーが加わって優勝」という驚きのないストーリーに抵抗感を覚えつつ、毎年のように新たなスタイルを導入しながら、終盤にはきっちり仕上げてくるペップを素直に称えたいと思います。「CLとの両立は大変」「簡単には決まらない」と、ぎりぎりまでいい続けたい気持ちはあるのですが、何しろハーランド…。