2024.03.25 プレミアリーグ観戦記
役割を変えたウーデゴーアとベン・ホワイト…アーセナルの得点力が格段に高まった理由。
「アスレティック」が、興味深いスタッツを紹介しています。記事のテーマは、「アーセナルは、サカとウーデゴーアの攻撃力を解き放つために、ベン・ホワイトをどのように活用したか」。得点力不足で接戦続きだった序盤、左右のウインガーを封じられて試行錯誤した中盤、ゴールラッシュで8連勝の後半で、右サイドがどう変わったのかを分析したレポートです。
ジョーダン・キャンベル記者が提示したのは、シーズンの序盤・中盤・後半のウーデゴーアの変化です。疲労の蓄積で3試合を欠場するまでの9試合が序盤。腰痛が癒えて復帰した後、新たな役割を進化させるために苦しんだ年末までが中盤で、怒涛のプレミアリーグ8連勝が後半です。キャプテンのスタッツを見ると、攻撃における関与度がいかに高まったかがよくわかります。
当初はビルドアップに絡まず、ストライカーやサカに近いエリアでプレイしていたウーデゴーアは、12月から右のインサイドで上下動を繰り返すコントロールタワーとなっています。以下の数字は、すべて90分あたりです。ボールタッチは最初の9試合が59.8、年末までが80.6、直近は82.6。パス本数も35.9から57.7、59.8と段階的に増えています。
最も明快に変わったのはチャンスクリエイトで、序盤は1.3、中盤は3.0で、後半は3.5。ビッグチャンスクリエイトも0.2、0.6、0.8と着実に伸びており、当初は0.7だったスルーパスは1.4と倍増しました。ポジションが下がったのに、決定的な仕事が増えたのはなぜでしょうか。記者がキーマンに指名したのがベン・ホワイトというわけです。
今季のアーセナルのアタッキングエリアを見ると、左サイドが28.6%、センターが30.6%、右が41.1%と、サカとウーデゴーアのサイドが主軸となっています。ガブリエウとジンチェンコが出遅れたため、開幕当初はベン・ホワイトはCBで、トーマスが偽SBとして右サイドに入っていました。ジンチェンコが復帰すると偽SBは左に移り、ベン・ホワイトも持ち場に戻っています。
当時の課題は、得点力不足とカイ・ハヴェルツの停滞でした。ジェズスは負傷で開幕に間に合わず、3試合2ゴールと順調に滑り出したエンケティアは、その後は6戦ノーゴール。ウーデゴーアが上がるフォーメーションのなかで、カイ・ハヴェルツは攻め上がりのタイミングをつかめず、中盤でつなぎ役のようになっていました。
10節からウーデゴーアが3試合リタイア。プレーメイカーが戻ってくる直前にベン・ホワイトが負傷し、こちらも3試合は先発から外れています。4番、7番、8番が揃わなかったこの時期は、サカが孤立するシーンが目立っていました。ウーデゴーアが後方でボールを散らすようになったのは、3人が右サイドに固定されてからです。
12月9日のアストン・ヴィラ戦を1-0で落としてから、FAカップ3回戦でリヴァプールに0-2で敗れるまでの1ヵ月は、公式戦7試合で1勝2分4敗。この間は左ウイングがノーゴールで、サカも1発しか決めていません。ガナーズ対策を講じてくるチームを、いかに崩すか。苦しんでいたアーセナルが変わるきっかけとなったのは、レッズに敗れた後のドバイ合宿でした。
あらためて戦術を見直したとはいえ、ウインターブレイク直後のクリスタル・パレス戦の5-0圧勝は、リフレッシュ効果のほうが高かったのだと思います。右サイドが大きな変化を遂げたのは、リヴァプールとの首位攻防戦のハーフタイムにジンチェンコがリタイアしてからでした。左サイドにキヴィオルが入ると、ベン・ホワイトがセンターに顔を出すようになりました。
中央に絞ると、パサーに徹する傾向があるジンチェンコに対して、ベン・ホワイトの偽SBは独特です。MFを追い越してセンターに上がる理由は、ウーデゴーアが前に出すパスの選択肢を増やすため。中央からいきなりサカの外にまわり込むオーバーラップは、数的優位を築いてフリーでクロスを入れるためです。ジンチェンコより明快に動くのも、彼の特徴のひとつでしょう。
これによってキャプテンのチャンスメイクが増え、厳しいマークを外すシーンが増えたサカは直近の7試合で7ゴールと無双状態に突入しました。「アスレティック」の記事は、右サイドの攻略法にフォーカスしているのですが、ここではチーム全体に対する波及効果に触れたいと思います。新たな戦術の恩恵を受けたのは、キヴィオルとアンカー、そして左のインサイドMFです。
ベン・ホワイトが高度な連携で中央と右サイドをカバーしてくれるので、キヴィオルの役割がシンプルになり、得意の守備と前線へのつなぎに集中できるようになりました。ウーデゴーアが下がってくることでジョルジーニョの負担が減り、右サイドでタメを作れると、左のインサイドMFの攻撃力を活かしやすくなります。
ジョルジーニョやウーデゴーアのフォローで、前に出る機会が増えたデクラン・ライスは、直近5試合で3ゴール3アシスト。ドバイ以降のマルティネッリとトロサールは、いずれも4ゴールです。右サイドは3人の連携とジョルジーニョの関与によってサカの自由度が高まり、左サイドはキヴィオルがワイドに常駐することでウインガーの孤立を防いでいます。
一連の変化を見ると、「アルテタ監督は戦術の引き出しが少ない」という指摘は誤りであることがわかります。ただし、連携やポジショニングを緻密に組み立てるためにレギュラーを固定しがちであるとはいえるでしょう。サブの選手の特性を活かすBプランまでは手がまわっていないようで、今季のラスト15試合は先手必勝です。
ジンチェンコが始めた偽SBをトーマスにトライさせたシーズンは、最もセンスがあるのはベン・ホワイトだったというオチで終わりそうです。グーナーのみなさんには釈迦に説法みたいなお話ですが、これから彼らと戦うチェルシー、スパーズ、マンチェスター勢のサポーターの方々は、アーセナルの戦い方にも注目していただければと思います。
ジョーダン・キャンベル記者が提示したのは、シーズンの序盤・中盤・後半のウーデゴーアの変化です。疲労の蓄積で3試合を欠場するまでの9試合が序盤。腰痛が癒えて復帰した後、新たな役割を進化させるために苦しんだ年末までが中盤で、怒涛のプレミアリーグ8連勝が後半です。キャプテンのスタッツを見ると、攻撃における関与度がいかに高まったかがよくわかります。
当初はビルドアップに絡まず、ストライカーやサカに近いエリアでプレイしていたウーデゴーアは、12月から右のインサイドで上下動を繰り返すコントロールタワーとなっています。以下の数字は、すべて90分あたりです。ボールタッチは最初の9試合が59.8、年末までが80.6、直近は82.6。パス本数も35.9から57.7、59.8と段階的に増えています。
最も明快に変わったのはチャンスクリエイトで、序盤は1.3、中盤は3.0で、後半は3.5。ビッグチャンスクリエイトも0.2、0.6、0.8と着実に伸びており、当初は0.7だったスルーパスは1.4と倍増しました。ポジションが下がったのに、決定的な仕事が増えたのはなぜでしょうか。記者がキーマンに指名したのがベン・ホワイトというわけです。
今季のアーセナルのアタッキングエリアを見ると、左サイドが28.6%、センターが30.6%、右が41.1%と、サカとウーデゴーアのサイドが主軸となっています。ガブリエウとジンチェンコが出遅れたため、開幕当初はベン・ホワイトはCBで、トーマスが偽SBとして右サイドに入っていました。ジンチェンコが復帰すると偽SBは左に移り、ベン・ホワイトも持ち場に戻っています。
当時の課題は、得点力不足とカイ・ハヴェルツの停滞でした。ジェズスは負傷で開幕に間に合わず、3試合2ゴールと順調に滑り出したエンケティアは、その後は6戦ノーゴール。ウーデゴーアが上がるフォーメーションのなかで、カイ・ハヴェルツは攻め上がりのタイミングをつかめず、中盤でつなぎ役のようになっていました。
10節からウーデゴーアが3試合リタイア。プレーメイカーが戻ってくる直前にベン・ホワイトが負傷し、こちらも3試合は先発から外れています。4番、7番、8番が揃わなかったこの時期は、サカが孤立するシーンが目立っていました。ウーデゴーアが後方でボールを散らすようになったのは、3人が右サイドに固定されてからです。
12月9日のアストン・ヴィラ戦を1-0で落としてから、FAカップ3回戦でリヴァプールに0-2で敗れるまでの1ヵ月は、公式戦7試合で1勝2分4敗。この間は左ウイングがノーゴールで、サカも1発しか決めていません。ガナーズ対策を講じてくるチームを、いかに崩すか。苦しんでいたアーセナルが変わるきっかけとなったのは、レッズに敗れた後のドバイ合宿でした。
あらためて戦術を見直したとはいえ、ウインターブレイク直後のクリスタル・パレス戦の5-0圧勝は、リフレッシュ効果のほうが高かったのだと思います。右サイドが大きな変化を遂げたのは、リヴァプールとの首位攻防戦のハーフタイムにジンチェンコがリタイアしてからでした。左サイドにキヴィオルが入ると、ベン・ホワイトがセンターに顔を出すようになりました。
中央に絞ると、パサーに徹する傾向があるジンチェンコに対して、ベン・ホワイトの偽SBは独特です。MFを追い越してセンターに上がる理由は、ウーデゴーアが前に出すパスの選択肢を増やすため。中央からいきなりサカの外にまわり込むオーバーラップは、数的優位を築いてフリーでクロスを入れるためです。ジンチェンコより明快に動くのも、彼の特徴のひとつでしょう。
これによってキャプテンのチャンスメイクが増え、厳しいマークを外すシーンが増えたサカは直近の7試合で7ゴールと無双状態に突入しました。「アスレティック」の記事は、右サイドの攻略法にフォーカスしているのですが、ここではチーム全体に対する波及効果に触れたいと思います。新たな戦術の恩恵を受けたのは、キヴィオルとアンカー、そして左のインサイドMFです。
ベン・ホワイトが高度な連携で中央と右サイドをカバーしてくれるので、キヴィオルの役割がシンプルになり、得意の守備と前線へのつなぎに集中できるようになりました。ウーデゴーアが下がってくることでジョルジーニョの負担が減り、右サイドでタメを作れると、左のインサイドMFの攻撃力を活かしやすくなります。
ジョルジーニョやウーデゴーアのフォローで、前に出る機会が増えたデクラン・ライスは、直近5試合で3ゴール3アシスト。ドバイ以降のマルティネッリとトロサールは、いずれも4ゴールです。右サイドは3人の連携とジョルジーニョの関与によってサカの自由度が高まり、左サイドはキヴィオルがワイドに常駐することでウインガーの孤立を防いでいます。
一連の変化を見ると、「アルテタ監督は戦術の引き出しが少ない」という指摘は誤りであることがわかります。ただし、連携やポジショニングを緻密に組み立てるためにレギュラーを固定しがちであるとはいえるでしょう。サブの選手の特性を活かすBプランまでは手がまわっていないようで、今季のラスト15試合は先手必勝です。
ジンチェンコが始めた偽SBをトーマスにトライさせたシーズンは、最もセンスがあるのはベン・ホワイトだったというオチで終わりそうです。グーナーのみなさんには釈迦に説法みたいなお話ですが、これから彼らと戦うチェルシー、スパーズ、マンチェスター勢のサポーターの方々は、アーセナルの戦い方にも注目していただければと思います。
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