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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

赤字決算のリヴァプールは、サラー、ファン・ダイク、アーノルドを全員残留させられるのか?

He fires the bow, now give him the dough」。彼は弓を炎を放った、今こそ彼にお金を出そう…。アストン・ヴィラ戦の最終盤にモー・サラーのゴールを見届け、勝利を確信したサポーターたちは、エースの希望通りに契約を延長しろと煽りました。一方、ブライトン戦のスタンドには、「Stop exploiting loyalty(忠誠心に乗じて搾取するな)」と書かれたバナーが掲げられていました。

どちらも、アンフィールドの出来事です。選手に金を出してやれ、でもオレたちから取るな、赤字経営は勘弁してくれ…レッズサポーターに限らず、フットボールファンは無邪気に無理難題を突き付けます。「テレグラフ」のクリス・バスコム記者は、リヴァプールの現状の課題に対して、「受け入れがたい事実を認めなければならない」と警鐘を鳴らしています。

「リヴァプールがサラー、ファン・ダイク、アレクサンダー=アーノルドをキープしたいと考えているのは明らかだ。しかしこの世界では、成功を収めるための財務プランから逸脱することなく、契約切れが間近となった3人のスターに『ほしいものは何でもあげよう』とする余裕はない」

「33歳のファン・ダイクと32歳のサラーは、今までと変わらず素晴らしいプレーヤーだ。それでもリヴァプールでアナライズを担当する部門は、彼らが35歳と34歳になったに同じことがいえるか、リスク評価しなければならない。以前に契約を延長した32歳以上の選手(特にジェームズ・ミルナー)は、先発メンバーとして出られる保証はないと理解したうえで、減額を呑んでいる」

「ミルナーは、サラーやファン・ダイクのように毎週の活躍を期待されておらず、急激なパフォーマンスの低下に備えて単年契約にサインする用意もあったため、柔軟な対応が可能だった。要するに、サラーとファン・ダイクの傑出した能力が、検討を厳しいものにしているのだ。移り気なフットボールの世界では、今日は当たり前の財政的な選択が、来季の高額なミスにつながる」

「テレグラフ」の記事は、フットボール界隈の急激なインフレを指摘しています。2023年12月に、プレミアリーグが「スカイスポーツ」「TNTスポーツ」「BBC」と締結した放映権料は4年総額で67億ポンド(約1兆3200億円)。バブルが弾ける気配はなく、スターのサラリーは週給35万ポンドが相場となり、代理人のマージンは年間4億ポンド(約779億円)に膨れ上がっています。

欧州の研究機関「フロンティア・エコノミクス」が2021年に実施した調査によると、1992年のプレミアリーグ創設以来、選手のサラリーは2811%も増えており、アンフィールドのチケット価格は873%UPとなっています。リヴァプールの直近の決算は、5億9400万ポンド(約1157億円)の売上に対して税引き前で900万ポンドの赤字が出ており、コストダウンは必須のミッションです。

フットボールの論理では、サラー、ファン・ダイク、アーノルドに全員残留以外の選択肢はないでしょう。彼らも、リヴァプールにいたいと考えているようです。しかし財務の観点では、全員と契約を延長するのは得策ではないのかもしれません。誰かひとりを手離すとすれば、クラブ史上最高のウインガーか絶対的CBか、これからピークを迎えるはずのフルバックか…?

自分で振っておいて、こんな答え方もアレですが、「全員好きな選手なので、考えたくない」。アンフィールドに集うサポーターの横で「They fire the bow, now give them the dough」と叫びたい気分です。フェンウェイ・スポーツ・グループも、何とか全員を残したいと考えているのではないでしょうか。「経営の視点ではなく、心情的には」という但し書き付きかもしれませんが。


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