2024.12.16 プレミアリーグ観戦記2024-25プレミアリーグ観戦記
【Saints×Tottenham】容赦ないブーイングとチャント…前半で5失点、ラッセル・マーティン解任!
プレミアリーグで19位に沈むウルヴスが、ガリー・オニール監督の解任を発表したのは日曜日でした。後任の候補がおらず、1月までは安泰といわれていた指揮官が、いきなり切られてしまったのは、ウェストハム戦の後に内紛が勃発したからでしょう。ショーン・デリーコーチと衝突したマリオ・レミナが奪われたキャプテンマークは、ネルソン・セメドに渡っています。
不穏な空気が流れるなかで、モリニューのイプスウィッチ戦は1-2。ラストプレーのCKをジャック・テイラーに頭で押し込まれた瞬間、黄色いシャツを纏った10人は棒立ちとなり、タイムアップの笛が鳴る前に座り込む選手もいました。敗戦が決まると、マテウス・クーニャとアイ・ヌーリがピッチサイドで激怒。アイ・ヌーリは、スタッフに抱えられてトンネルに向かいました。
就任以来初めて、プレスルームで選手たちを批判したオニール監督は、自らのこめかみに拳銃を突き付けたも同然でした。ウルヴスは、日曜日にステートメントを配信。フットボールの監督が解任となる決め手の大半は、選手との確執かサポーターの不評です。17位のレスターと5ポイント差というポジションより、主力と揉めたことのほうが問題にされたのではないかと思われます。
そして昨夜は、過去に35例しかなかった日曜日のナイトゲームが2試合開催されました。チェルシーVSブレントフォードと、サウサンプトンVSトッテナム。リヴァプールとアーセナルがドローに終わっていたので、2位のチェルシーをメインで観ていたのですが、10分も経たないうちに、脇で流していたスパーズに目を奪われてしまいました。
この試合をフラットに表現すると、「暫定12位と不振のトッテナムが最下位とアウェイで戦うゲーム」ですが、見方を変えると「解任が噂される監督同士のサバイバルマッチ」です。ラッセル・マーティンとアンジェ・ポステコグルー。スピーディーなパスサッカーを標榜する頑固者という共通項がある一方で、両者に対するサポーターの評価は真逆です。
キックオフ前から、指揮官への不満を隠さなかったセインツのサポーターたちは、15分もしないうちに「Russell Martin, your football is xxxx(書けない言葉)」と煽るようになりました。開始30秒、右サイドからドリブルで上がったのはジェド・スペンス。2022年にノッティンガム・フォレストから2000万ポンドで移籍したSBは、入団から881日めで初のプレミアリーグ出場です。
縦のスルーパスで抜け出したジェームズ・マディソンが冷静に左に決め、24歳の苦労人は初出場から1分以内で初アシストという快挙を成し遂げました。当然のように攻め続けたスパーズの2点めは12分。右サイドからのアーリークロスをベドナレクがクリアし切れず、左に流れたボールに走り込んだソン・フンミンが左足で蹴り込みました。
地鳴りのようなブーイングの後、指揮官を糾弾するチャントが聞こえ始めると、左サイドのソン・フンミンが中央にグラウンダーを通しました。ソランケはプッシュできず、こぼれ球を無人の枠に流し込んだのはクルゼフスキ。ボーンマスから来たストライカーが、決めたかったと天を仰いだのは、もはや勝負を争う試合ではないと見切っていたからでしょう。
0-3となった直後、マーティン監督は前線のスレマナを下げ、DFのネイサン・ウッドを投入。最初のラウンドでセコンドがタオルを投げ込むようなボクシングを見せられれば、高額のチケットを握りしめた観客が激怒するのは避けられません。自陣左でボールを奪ったウドジェがソン・フンミンにつないだ25分、中央に出たラストパスを足元に収めたのはパペ・マタル・サールです。
3人をあっさりかわしてゴール前に出たMFは、今季プレミアリーグ初ゴールを左隅に流し込みました。0-4となると、帰り支度をすませたサポーターが次々とゲートに向かっています。静かになったセインツのファンに代わって、高らかにチャントを響かせるスパーズサポーターは、チームを称えているわけではなさそうです。
ウドジェのリタイアを見て、「またケガ人かよ!」と苛立っていた彼らは「We want Levy out」と訴えています。23年めになるダニエル・レヴィ会長は、相変わらず財布の紐が堅く、夏にDFを強化しなかったために不振に陥っていると抗議されている最中です。ポステコグルー監督のアグレッシブなフットボールは、若い選手たちだけでなく、サポーターにも支持されています。
マーティン監督は、前半のタイムアップを待たずにドレッシングルームに向かいました。5点めが入ったのは、その直後の追加タイム4分。ソン・フンミンがボックス左に長い縦パスを通すと、角度のないところでトラップしたジェームズ・マディソンが、切り返しから逆のサイドネットに叩き込みました。
最下位が定位置となり、解任寸前といわれる監督のチームがボコボコにされているのが目に留まり、「公開処刑か?六条河原の晒し首か!」と悪趣味な目線で追っていた私は、ハーフタイムにソン・フンミンが下がったのを見て冷静になりました。5ゴールのうち4ゴールはキャプテン絡みだったので、ここから0-10はないでしょう…。
2019年10月のレスター戦は0-9。2021年2月のマンチェスター・ユナイテッド戦も0-9。ときどき記録的な大敗が話題になるセインツは、後半はシュート7対2&オンターゲット2対1と生まれ変わり、0-5のままでタイムアップとなりました。いや、変わったのはスパーズのほうですね。ゴールラッシュに参加できず、シュート1本に終わったソランケにとっては悔しい一戦だったはずです。
一夜明けた本日、サウサンプトンがマーティン監督の解任を発表しました。今季プレミアリーグ最少の11ゴール、ウルヴスに次ぐ36失点、1勝2分13敗。前半が終わる前にパブに向かうサポーターの姿を見ると、やむなしとしかいいようがありません。後方からつなぐパスサッカーにこだわった38歳の若き指揮官は、自分のスタイル以外で戦う絵が描けなかったのでしょう。
最下位のクラブに完勝したスパーズですが、絶対的守護神とCB3人、さらにウドジェまで負傷離脱となれば、サポーターのみなさんがストレスを溜めるのも理解できます。苦しい戦いが続きそうですが、4位との5ポイント差は射程圏内で、楽しみな若手が揃っています。マンチェスター勢やヴィラに圧勝したアンジェボールを、これからも見続けられればと願っています。
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