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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【Tottenham×Newcastle】イサク7戦連発!イヴ・ビスマとマディソンを外したのは妥当だったのか?

アンジェ・ポステコグルーの先発メンバーを見たとき、「満身創痍」という言葉が脳裏をよぎりました。プレミアリーグ20節のランチタイムキックオフ。トッテナム・ホットスパー・スタジアムに乗り込んできたのは、公式戦5連勝と絶好調のニューカッスルです。エディ・ハウのチームは、トナーリをアンカーに据えてから攻守のバランスが向上しており、この5試合は16ゴール1失点という圧倒的な数字を残しています。

対するスパーズは、守護神ヴィカーリオとロメロ、ファン・デ・ウェン、ウドジェ、ベン・デイヴィスを負傷で欠いています。レギュラーのDFで元気なのは、守備より攻撃を強みとするペドロ・ポロのみ。ただでさえ厳しい状況のなか、ロンドンは風邪が蔓延しており、サブの選手たちの多くがコンディションに問題を抱えていました。

「ラドゥ(・ドラグシン)とアーチー(・グレイ)は、1週間ずっとベッドで寝たきりだった。フレイザー(・フォースター)は今も寝たきりで苦しんでいる。他にも厳しい選手が数人いる。ハーフタイムの時点で、ラドゥはもう何もできなくなっていた」(アンジェ・ポステコグルー/ニューカッスル戦後の会見にて)

ヴィカーリオとフォースターが不在のゴールマウスには、25歳のブランドン・オースティン。アカデミー出身の第3GKは、スラヴィア・プラハからアントニン・キンスキーが来ればさらに序列が下がると見られており、最初で最後のプレミアリーグになるかもしれません。ペドロ・ポロ、ドラグシン、アーチー・グレイ、ジェド・スペンスの4バックは、前からのサポートが必要です。

しかし中盤も、軸となるロドリゴ・ベンタンクールをイエロー累積5枚で欠いています。今季の公式戦で、18歳のルーカス・ベルヴァルがパペ・マタル・サールと一緒にプレイしたのは127分だけです。イヴ・ビスマをベンチに置くという不可解な選択をした指揮官は、ソン・フンミンとジェームズ・マディソンも先発から外すという驚くべきプランでキックオフを迎えました。

「序盤は走力とエネルギーが必要で、試合が進んだら途中出場の選手たちの経験が活かされると考えた。うまくいったと思う。いい終わり方だった。試合の入りもよかった。われわれの足を止めた原因はフットボールではなかった。それがすべてだ。ソニー、ビス、マディソンは経験豊富で、フレッシュな状態で出られれば、フィジカルだけでなくメンタルもサポートしてくれる」

最前線のソランケの後ろに、ヴェルナー、クルゼフスキ、ブレナン・ジョンソン。指揮官が振り返ったように、4分の先制ゴールは幸先いいスタートでした。右サイドでキープしたブレナン・ジョンソンが後ろのペドロ・ポロに預け、ダイレクトで上げたクロスが中央に入ると、ボトマンに競り勝ったソランケのダイビングヘッドが右隅に決まりました。

このゴールは、エディ・ハウが抱えていた唯一の不安を突いた一撃ともいえます。イサク、アンソニー・ゴードン、ジェイコブ・マーフィー、ブルーノ・ギマランイス、ジョエリントン、トナーリは現在のベストメンバー。最終ラインの左右に配されたリヴラメントとルイス・ホールも、いつもの布陣です。問題はCB。ダン・バーンとボトマンは、2人ともレフティです。

シェア、ラッセルズ、クラフトを失った指揮官の窮余の策。昨年の3月に前十字靭帯損傷という重傷を負ったボトマンは、10ヵ月ぶりのプレミアリーグで、右のCBはヨング・アヤックス(アヤックスのリザーブチーム)に所属していた2018年11月以来でした。復帰戦でいきなり失点に絡んでしまったCBにとって、2分も経たないうちに決まった同点ゴールは、最高の精神安定剤でした。

失点の発端は、左にいたアーチー・グレイに預けたGKオースティンのスロー。イサクに寄せられたCBがパペ・マタル・サールに縦パスを出すと、数的優位を認識していたジェイコブ・マーフィー、トナーリ、ブルーノ・ギマランイスが一気に詰めてきました。振り向きざまに中央に送ったボールはズレてしまい、右に出そうとしたベルヴァルがジョエリントンにカットされました。

こぼれ球を拾ったブルーノ・ギマランイスは、迷わずボックス左のアンソニー・ゴードンにラストパス。追いかけたドラグシンは足を出せず、左足の鋭いシュートが右のサイドネットに収まりました。ここからはニューカッスルペースに傾きましたが、スパーズのカウンタ―も鋭く、11分のソランケとパペ・マタル・サールの連打は迫力がありました。

32分のマグパイズの決定機は、ボックス右に転がしたブルーノ・ギマランイスのスルーパスがきっかけでした。ジェイコブ・マーフィーの高速グラウンダーがニアに入ると、フリーだったイサクのタッチは左にアウト。イサク、ブルーノ・ギマランイス、トナーリと右につながった38分のアタックも、ジェイコブ・マーフィーの速いボールが攻防のポイントとなっています。

中央にいたドラグシンはグラウンダーに触ったのですが…。後ろにこぼれたボールがイサクの足元という最悪の場所に流れ、コースを変えただけのフィニッシュがネットに届きました。ニューカッスルのエースは、プレミアリーグで7試合連続ゴール。ドラグシンは、ハーフタイムにレギロンに後を譲っています。ビハインドを背負ったスパーズは、後半開始から攻勢に転じました。

55分のパペ・マタル・サールのミドルをドゥブラフカが左に弾くと、詰めたブレナン・ジョンソンのシュートはニアポストにヒット。ポステコグルー監督が、経験豊富な3人を投じて勝ちにいったのは62分でした。指揮官は「3人が出場してから、大きな違いが生まれた」と絶賛しておりましたが、「主導権は握ったもののチャンスは創れなかった」が妥当な評価でしょう。

3人合わせてもシュート1本とチャンスクリエイト1回で、後半のスパーズのオンターゲットは1本のみ。97分にペドロ・ポロのクロスに合わせたソランケのヘッドは、ドゥブラフカががっちりキャッチしています。最近調子を落としていたソン・フンミンはともかく、ジェームズ・マディソンとイヴ・ビスマを先発させなかった采配は、意見が分かれるところでしょう。

タッグを組んで戦った経験が豊富なイヴ・ビスマとパペ・マタル・サールで最終ラインの前のスペースをケアして、前半の失点を最小限に抑えるという戦い方もあったのではないかと思います。ジェイコブ・マーフィーのエリアが手薄になることが多く、グラウンダーのコースをカットする前に入れられるシーンが続いたのが大いに気になりました。

1-1となってから本領発揮のボトマンは、90分に負傷リタイア。深刻なケガでないことを祈ります。敗れたスパーズは、12月以降のプレミアリーグで1勝2分5敗。ペップとアモリムの不振が話題になっていますが、11月3日のヴィラ戦からホームで勝っていない彼らのほうが、より厳しい状況に見えます。次節はノースロンドンダービー…内科も外科も大賑わいの今は、最悪のタイミングといわざるを得ません。


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