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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

素晴らしきマージーサイドダービー!破綻寸前だったエヴァートンを救った2人の功労者に称賛を。

グディソン・パークでの最後のマージーサイドダービーは、2‐2のドロー。エヴァートンの戦い方は、見応えがありました。デヴィッド・モイーズの狙いは明確で、「リヴァプールの最終ラインからのパスコースを遮断」。最大の目標は、サラーとショボスライを活かすライアン・フラーフェンベルフを殺すことでした。

ベトの脇にドゥクレを配したのは、チームで最も視野が広く、コーチングで周囲を動かせるからでしょう。ファン・ダイクやロバートソンにプレスをかけず、マック・アリスターやフラーフェンベルフへのパスコースにポジションを取ったベテランMFは、しきりに後方を確認しながらジェームズ・ガーナーやグイェに指示を出していました。

リヴァプールのスタッツを見ると、モイーズ戦術がいかに的確だったかがよくわかります。後方でまわさざるを得なくなったファン・ダイクのパス成功は105本。コナテも71本を記録する一方で、フラーフェンベルフは20本に抑えられました。マック・アリスターとともに、中盤からのチャンスクリエイトはゼロ。彼らがいい形で持てなければ、サラーとガクポが消えてしまいます。

サラーのシュートは2本のみで、敵陣ボックスでのタッチ1回は入団以来のワーストです。あの状態で1ゴール1アシストは、「サラーだから」でしょう。残り20分でダルウィン・ヌニェスに代えられたガクポはシュートもクロスもゼロで、味方に通したパスはわずか11本。プレミアリーグの首位チームがシュート6本に終わったのは、前線の守備とコンパクトな陣形が機能したからです。

モイーズの狙いを理解していたスロット監督は、61分に打開策を講じています。本領を発揮できなかったフラーフェンベルフをカーティス・ジョーンズに代え、より前方でプレイさせるとともに、イエローをもらっていたブラッドリーをアレクサンダー=アーノルドにスイッチし、中盤に厚みをもたらしました

セットピースからベトに決められた後、マック・アリスターのバックヘッドで追いついたリヴァプールは、後半はシュートを打てずに過ごしていました。逆転ゴールは73分。ボックスに走り込んでクリアを拾ったカーティス・ジョーンズが、ダルウィン・ヌニェスとのワンツーからシュートを放ち、こぼれ球をサラーという展開は、交代策が結実したといえるでしょう。

このままレッズが勝ち切っていれば、「大健闘のモイーズがサラーに平伏す」といった見出しが立っていたのではないでしょうか。98分のタルコフスキーの同点ボレーは、何でもないハイクロスにコナテが触れず、バウンドさせてしまったために紛れが生じました。あの時間帯まではゲームをコントロールできており、指揮官の責任を問うような失点ではなかったと思います。

デヴィッド・モイーズの帰還以来、エヴァートンはプレミアリーグで3勝1敗。18位ウルヴスとの差は10ポイントとなり、ブレムリー・ムーア・ドックの新スタジアムのオープンをトップリーグで迎えられそうです。ファルハド・モシリの放漫経営とコロナ禍のダメージで、破綻寸前に追い込まれていたクラブは、2人の功労者を忘れてはいけません

2022年2月にフットボールディレクターに就任したケヴィン・テルウェルと、2023年1月にフランク・ランパードの後を継いだショーン・ダイク。ニューヨーク・レッドブルズで辣腕を振るっていたテルウェルは、経営の安定というミッションにフルコミットし、的確なディールでスカッドをリニューアルしました。

2022年の夏に、トッテナムに移籍したリシャルリソンは6000万ポンドの収益。冬のマーケットでは、アンソニー・ゴードンを4500ポンドでニューカッスルに送り出しています。攻撃の主軸を手離す一方で、マクニール、アマドゥ・オナナ、ジェームズ・ガーナー、モペイに6600万ポンドを投じ、タルコフスキーをフリーで引き入れました。

チームの主力になれなかったのは、モペイのみ。パリから買い戻したイドリサ・グイェの200万ポンドは、バーゲン価格でした。高額サラリーだったアランとデルフの放出によって、人件費を圧縮したディレクターは、2023年の夏のマーケットでもモイーズ・キーン、タウンゼント、トム・デイヴィス、イオビ、ジェリー・ミナを売り切っています。

昨年の夏に1500万ポンドで獲得したエンディアイエは大当たり。2年前に3000万ポンドで手に入れたアマドゥ・オナナは、ニューカッスルへの移籍で5000万ポンドに値上がりしています。プレミアリーグに所属していたクラブで、2021年以降のマーケットにおける収支が黒字なのは、2600万ポンドを残したエヴァートンと300万ポンドのワトフォードだけです。

ランパードの下で18位に沈んでいたチームを預かったショーン・ダイクは、守備力の向上に特化し、2022-23シーズンを5勝6分7敗で終えて17位フィニッシュ。最終節のボーンマス戦を落としていれば、マージーサイドダービーは国内カップ限定となっていました。2023-24シーズンは、PSR違反で6ポイントを剥奪されながらも、13勝9分16敗の15位で残留となりました。

40ゴールは下から2番めですが、51失点はマン・シティ、アーセナル、リヴァプールのTOP3に次ぐ秀逸な数字です。これぞショーン・ダイク。クラブの最大の危機を乗り越えた指揮官は、昨年末からの6試合1ゴールという停滞で解任となってしまいましたが、マージーサイドの古豪の歴史に名を刻まれるべき存在です。

ケヴィン・テルウェルの契約は、シーズンが終わると満了になり、来季も残るかどうかはわかりません。彼の去就がどうなろうとも、フリードキン・グループとデヴィッド・モイーズはチームの強化を推進していくでしょう。最後にドローに持ち込んだマージーサイドダービーは、ブラムリー・ムーア・ドックでの復活を予感させる素晴らしい一戦でした。


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