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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

データと現場の声で見えてきた!アーセナルの負傷者数がリーグワーストとなった理由。

サリバとノアゴーアは打撲、カイ・ハヴェルツとノニ・マドゥエケは膝、インカピエとマルティネッリは鼠径部、トロサールとモスケラは足首、サカはハムストリングで、ガブリエウは内転筋。プレミアリーグ制覇をめざすアーセナルが、2年連続で負傷者の多発に苦しめられています。トップチームの25人のうち、17人が負傷欠場ありという状況は、尋常ではありません。

ウーデゴーアは肩が癒えた後に膝を痛め、ギョケレスは筋肉系の負傷で離脱しています。今年の1月に前十字靭帯を損傷したガブリエウ・ジェズスは、復帰までに11ヵ月を要しました。もはやケガのデパート、ケガ万博。フットボールにおける身体的トラブルの症例の見本を作るなら、ノースロンドンに半年ほど滞在するのが最も手っ取り早い方法といえそうです。

最新の症例は、ベン・ホワイト。序盤戦の打撲でフォームを崩し、ティンバーの活躍をベンチで見守り続けてきたSBは、4試合連続出場でハムストリングが悲鳴を上げてしまいました。これによって、アーセナルはメモリアルな数字を記録しています。昨シーズンの開幕以降の負傷が100件。こちらも順位テーブルのTOPで、ブライトンと3件差のデッドヒートを繰り広げています。

アーセナルは、なぜこれほど負傷が多いのでしょうか。最初に挙げるべきは、試合の多さです。昨シーズンは、カラバオカップとチャンピオンズリーグでベスト4に進出。今季のCLは6戦全勝で、国内カップも順調に勝ち上がっています。スカッドの大半が自国の代表選手という事実も添えるべきでしょう。ガブリエウが負傷したのは、セネガルとのフレンドリーマッチです。

ここまでは、前提です。さらに踏み込んで、窮状の理由を考えろといわれれば、プレミアリーグファンの多くが「運動量を求められるアルテタ戦術」「過酷なトレーニング」を指摘するのではないかと思われます。しかしこれらは、印象や誤解もあるようです。負傷者の離脱試合数ランキングの上位には、走行距離はさほどないストライカー、ウインガー、CBの名前が並んでいます。

2025-26シーズンの出場メンバーをチェックしてみると、中盤とSBは軒並み元気で、デクラン・ライス、ズビメンディ、エゼ、ミケル・メリノ、ヌワネリ、カラフィオーリ、ルイス=スケリーは負傷離脱なし。フル稼働だったティンバーは、CLのクラブ・ブルッヘ戦を見送っただけです。13試合を欠場してTOP3に食い込んだウーデゴーアは、3回とも試合中のアクシデントでした。

中盤のパサーやプレーメイカーの運動量より、前線と最終ラインのトランジションを気にするべきでしょう。アルテタ監督のシステムは、ハイプレスとハイラインが基軸です。ストライカーはチェイシングし続け、ウインガーはスプリントが多く、CBは広いエリアのカバーを求められます。前からのプレスが機能すれば、MFが全力で戻るシーンは自ずと減っていきます。

ズビメンディとカラフィオーリについては、指揮官とスタッフがトレーニングの量と出場時間を厳格に管理しているようです。裏を返せば、サリバとガブリエウを同じ時期に失うという状況は、想定外だったのかもしれません。モスケラとベン・ホワイトの負傷は、レギュラーの離脱やコンディション不良のしわ寄せという面もありそうです。

トレーニングが厳しいというイメージについては、「テレグラフ」のサム・ディーン記者が「アーセナルのコーチングスタッフの間では、トレーニングが足りないという意見が広がっている」とレポートして、誤解を払拭しようとしています。90分を戦った後、腱が回復するのに72時間かかるといわれていますが、ミッドウイークに試合があると、疲れを残したまま本番突入です。

「シーズンを通して、アーセナルの選手たちがトレーニングを通じて筋肉や腱を強化する機会は非常に限られている。彼らは試合に出て、数日間で回復し、そしてまた試合に出場する。アーセナルはサポーターの期待に応え、筋肉系の負傷についてリサーチした。その結果、選手たちが最高速度に到達しようとしているときに、危険が及ぶことが多いと判明している」

「ヨーロッパの大会に出場するクラブは過密スケジュールのため、出場した選手たちの回復が優先され、トレーニングで生体力学的な負荷を継続的に与えることができない。つまり、試合が要求する身体的負荷は、トレーニンググラウンドでのリカバリーセッションで再現できないレベルにあるのだ」(サム・ディーン)

ここまでに紹介したデータや現場の声から話をまとめると、アーセナルの負傷者続出の原因は、「ハイプレス・ハイラインでストップ・アンド・ゴーが多い戦術」「過密スケジュール」「回復途上の選手の起用」「主力の離脱からの連鎖」となります。改善策は「大胆なターンオーバー」「スローペースに落とす時間帯を増やす」といったあたりですが…。

これらを言い換えると、「サブ主体で勝て」「早い時間にセーフティーリードを築け」となります。負傷撲滅のための策は、勝利から遠ざかる策でもあり、簡単にできるものではありません。本日はエヴァートン。ギョケレスはみんなのために、前半のうちにハットトリックを決めてください。みんなが疲れてきたら、ジェズスやヌワネリにがんばってもらいましょう。異議なしということで、いいでしょうか?


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