プレミアリーグ2016-17現地観戦記 (3)純粋ということ~FAカップ準々決勝・アーセナルVSリンカーン
グーナーのみなさま、お待たせいたしました。本日は、イギリスに滞在している本ブログ特派員より、来季監督問題が何かと騒がしくなっているアーセナルについてのレポートが届きました。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、FAカップと今後、数回にわたって現地レポートを掲載させていただきますが、今回は感動のFAカップ準々決勝レポートでございます。さっそく、どうぞ!
3月の初めに渡英して、プレミアリーグのリヴァプールVSアーセナルから観戦している特派員ですが、ここまでの試合はともかくとして、まずはアーセナルVSリンカーンの試合の現地レポートをお届けいたします。この日、アーセナル以上に楽しみだったのは、リンカーンサポーターのみなさんの様子です。FAカップでは、いわゆるノンリーグ、つまりはアマチュアクラブが何かの拍子に勝ち上がり、プレミアリーグのビッグクラブと当たることがあるのがおもしろいところ。こういうクラブがたとえばアーセナルとやることになると、ホームであれば「おらが町にアーセナルがやってくる!」と盛り上がり、アウェイであれば「おらがチームがエミレーツスタジアムで試合をする!」と盛り上がる、どっちにしても一大イベントになるわけです。
アーセナルは5回戦でもカンファレンス・ナショナル(5部相当)のアマチュアクラブ、サットン・ユナイテッドと対戦しましたが、珍しくクジ運に恵まれて6回戦の対戦相手も5部のリンカーン、通称「インプス(IMPS)」。しかし、対戦当時、5部で17位だったサットンと異なり、リンカーンシティは5部では首位のチーム。今のアーセナルに油断は禁物……と思いつつ、「さすがに負けることはないだろう」と、私自身も若干お祭り気分でスタジアムに向かいました。
同じTシャツを着ている人が何人かいるのでよくよく見てみると……“IMPS ON TOUR”とあって、これはリンカーンの今シーズンここまでのFAカップの戦績を並べたもののようですね。なになに?初戦はGUISELEYというクラブ相手に0-0で引き分け再試合だったんですね。その後もイプスウィッチ相手に再試合を1回演じ、その後2部でトップのブライトン、プレミアリーグのバーンリーを破り、計8試合をこなしてエミレーツスタジアムにたどり着いたようです。ほのぼのしているなあ!と思ったものの、“GIANT KILLER bring on the Arsenal”の文字には、気弱なアーセナルサポーター(私のことだ)をビビらせる効果もそれなりにあったのでした。
前回同様「あーキーパーの人かなー?」なんて思ってたら、ユニフォームに着替えてびっくり!なんと9番をつけたストライカー、RHEAD選手だったんですね。さすがにスピードはありませんでしたが競り合いに負けないジャンプ力の持ち主で、試合中は結構悩まされることになるのですが、このときはそんなことは知る由もありませんでした。
25分頃、5部相手にここまで無得点のアーセナルにサポーターが若干の落ち着かなさを感じ始めたころには“Shall we sing a song for you?”、アーセナルがやっとのことで1点先制したときには、なぜか大拍手と”We are the IMPS”の大合唱。中でも傑作だったのは、何かのはずみに歌い出した“We are top of the league! We are top of the league!”というチャント。確かに!あなた方のリーグではトップだもんね。恐れ入りました!(笑)
これもまた、ノンリーグのクラブがトップクラブに対抗するための戦い方……熱い熱いサポーターにもリスペクトの気持ちでいっぱいですが、監督もなかなかのものではありませんか。試合後、いつもは対戦相手の監督とグラスを交わさないことで有名なヴェンゲル監督が、ここの監督であるコウリー兄弟のために90分も時間を割いたと報道されましたが、なんとなくわかる気がします。
それを待っていたかのように、満員のアウェイスタンドからは万雷の拍手が響きます。大冒険を終えたリンカーンの、愛と感謝に満ちたグランドフィナーレ……監督の去就やチーム内不和の噂に揺れるアーセナルのサポーターにとって、それは心底胸を打たれるシーンでした。
試合後、日本から来ていた友人グーナーたちとパブで語り合い、帰途に就く頃には、満月だったこの日の月もすでに高く昇っていました。「僕らが二度と純粋を手に入れられなくても」。スガシカオの「黄金の月」の一節がふと頭をよぎり、あらためて、今日目の当たりにしたリンカーンの純粋さと、アーセナルの置かれた現状を静かに思うのでした。われわれの冒険もまた、続くのです。
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観戦&更新お疲れ様です。ほのぼの&純粋のリンカーンの雰囲気が伝わってきます。監督の指示を聞く選手たち、少年どころか青年からおっさんにかかっているはずなのに素直ですね。
純粋にサッカーを楽しむ・強敵に挑む・大舞台でプレーする。大きな喜びを持った対戦には、日頃クサクサしがちのビッグクラブサポーターの魂を癒す効果があるかもしれません。
今年の冬に、7部からコーエン・ブラマルを獲得したのもモチベーション・純粋さのエネルギーに期待してのことかもしれません。ちょいとずれた例えですが、お腹いっぱいのオオカミよりも餓えた犬の方が強いはず。
え、ちょっと待ってください、なんですか終盤10行の怒濤の泣かせる展開は。油断していたところに弾丸ミドルが突っ込んできた気分です。
スガシカオさんで例えられていましたが、ぼくが最近思っていたのはThe Birthdayというバンドの歌詞で「変わらないでいるために変わる」というものです。
ぼくたちが変わらずアーセナルを好きでいるためには、ヴェンゲルという監督が変わるのか、戦術が変わるのか、選手が変わるのか、ファンが変わるのか。
いずれにせよ、今何かを変えなければ、このままの関係性でいられなくなるのだなと思っています。
いい話だった。
だしまるさん>
ビッグクラブは疲れているのか、欧州でもハングリーさを感じられない試合がときどきありますね。FAカップは、下部リーグに魂のこもった戦い方を見せてもらって原点に変えれるいい機会でもありますね。マン・シティと引き分けたハダースフィールドも素晴らしかったです。
ひろとさん>
その言葉は、今のアーセナルにぴったりですね。選手にも変わってほしいなと思うこともあります。
エッジさん>
特派員になりかわり、ありがとうございます!