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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【現地レポート】”IT’S NOT OVER!!”…コクランが叫んだガナーズ快勝のグディソンパーク!

グーナーである本ブログ特派員が世界を駆け巡る「プレミアリーグ現地観戦記」、今回はグディソンパークで行われたプレミアリーグ31節、エヴァートンVSアーセナルのスタジアムレポートです。スタジアムにいなければわからないエピソードが満載!さっそく、どうぞ。

チャンピオンズリーグの敗退でスペインからロンドンに戻った筆者。カンプノウでの試合の翌日にロンドンに戻ると木曜日の夜。金曜日はさすがに疲れて1日ゆっくりしていたら、翌日のランチタイムにもうプレミアリーグの試合です。これが過密日程か……選手の疲れを身を持って感じることができました。やっぱりFAはプレミアリーグの日程を考え直したほうがいいと思います。

グディソンパークを訪れるのは今回2回目。公共交通機関で移動するとロンドンからリヴァプール・ライムストリート駅まで特急で2時間半~3時間、駅前のバスターミナルからバスに乗って20分程度と、日帰りできない範囲ではないのですが、今回はアウェイコーチに乗ることにしました。

アウェイコーチとは、観戦目的のサポーターを乗せてアウェイのスタジアムまで往復する長距離バスのこと。プレミアリーグならどのクラブでも、クラブ側が運営する形で用意されていいます。ちなみに先日のエミレーツ・スタジアムでのワトフォード戦では、電車でも1時間程度の距離にも関わらず、アウェイのワトフォードが数十台のアウェイコーチを仕立て、しかも運賃たったの1人1ポンドで運行。これをアーセナルがハルシティに勝った直後に発売すると、その日の夜中までに売り切れたというすごい話も。そりゃワトフォードが勝つわけだ。サポーターがアウェイの地に積極的に観戦に行ってくれることはクラブのメリットでもあるのです。

残念ながらアーセナルはアウェイサポーターにそこまで優しくないので、アウェイコーチはもうちょっとお値段が張ります。それでも、ホームスタジアム近辺からアウェイのスタジアムまで直行してくれて、お値段は電車と比べて半分程度。アウェイスタジアム近辺で寄り道する予定がなければ便利なサービスです。バスのチケットは、観戦チケットと同様、公式サイトから購入可能です。

と、ここまで公式アウェイコーチについてお話したものの、今回の筆者はこうした公式アウェイコーチではなく、現地サポーターズクラブが独自に運行しているコーチに乗せてもらうことになりました。エミレーツスタジアム周辺からの出発は朝6時。サポーターズクラブのバスともなると、メンバーも常連化していて、車内のおしゃべりもにぎやかです。真後ろの席の常連らしきお父さんは「今シーズンの順位は最終的にこうなるだろう」「補強では誰を獲得するべきか」といった話で、グディソンパークまで休憩を除いて約4時間強、ボリュームMAXのだみ声で熱く休みなくしゃべり続けていました。なになに?「ユヴェントスのディバラはいい。あれは第二のアグエロだ」ですって?他国リーグに疎い筆者は初めて聞いた名前でしたが、覚えておくことにしましょう!

さて、この日はアウェイコーチも早めに現地に到着。普通のスタジアムだとアウェイコーチ用の駐車場があり、そこに停車することが多いのですが、スタジアム周りの狭いグディソンにはそのスペースはないようで、近くの公園沿いの道路に路駐です。バスを降りてみると、道路沿いには大小さまざまなバスがずらり!なんと選手の乗るバスまで止まっています。

さらにはアーセナル関連のバスだけでなく、遠方からのエヴァートンサポーターを乗せたバスもあるようで、数十メートルにわたって路肩を占拠するバス、バス、バス。実は公園をはさんだ向こう側はリヴァプールの本拠地、アンフィールドなのですが、「同じ週にグディソンとアンフィールドの両方で同時に試合が行われることはない」という決まりになっている理由もよくわかります。両者とも、すぐ隣は住宅地という立地。こんな状況が徒歩15分ほどしか離れていない両スタジアムで同時に起これば、いかに地方都市リヴァプールとはいえ交通は大混乱でしょう。

せっかく時間があるので、グディソン・パークに乗り込む前にアンフィールドを見学していくことにしました。散歩がてら、両者の間に横たわる大きな公園を歩いていくと、10分もしないうちにスタジアム裏に到着です。

現在、アンフィールドは客席の増築工事中。来シーズンからは増築後の席数でチケットを発売するとの話を聞いたときには「いつ工事するの?」と驚いた筆者ですが、工事の様子を目の当たりにしてなるほど納得。工事は既存のメインスタンドの後ろ側を付け足す形で進んでいて、これならシーズン中の試合を通常通りこなしつつ、進めることができそうです。現在4万5000の席数が6万になるとのことですが、リバプールの人気を考えれば納得の席数。めちゃくちゃチケットが取りにくいスタジアムという悪評も、これで多少は改善されるのでしょうか。

試合時間も近づいていよいよグディソンパークへ。ここはクラシックな箱型のスタジアムで、裏手はすぐに住宅街といういかにもイングランドらしい造り。スタジアムへの入り口であるTurnstilsも、場所によっては直接公道に面しています。周囲の道路は車両通行止めになっていて、いくつかの露店が並ぶほか、もともとあるフィッシュ&チップスやファストフードの店に行列ができ、いかにも活気ある様子。そうしたもろもろを含め、ここはプレミアリーグの雰囲気を味わうのには最高のスタジアムの1つだなあと改めて感じます。

アウェイ席はバックスタンドの隅っこの一画。ロウワー(1階席)の5列目に陣取ったのはよいのですが、例によってアウェイサポーターは座りません!小柄な筆者は、前列にいるカサの高いオジサマたちに視界を阻まれ、目の前のサイドはともかく反対側のゴール前は全く見えないありさま。おかげで、ウェルベックのゴールもイオビのゴールも、雰囲気のみで「イェー!!!」と盛り上がるしかありませんでした(正確に言うと、ゴールネットが揺れるのは見えた)。2点目のイオビのゴールでは周りのお兄さんたちも「誰だった?エクター(ベジェリン)?エクターなのか!」と軽くベジェリンのチャントが起こりかけたり。アウェイ席のロウワーはテンヤワンヤです。

しかし、そんなこんなで早めにリードしたおかげもあり、アウェイスタンドは余裕の雰囲気。こんなときによく歌われる“We’re the Clockend♪””We’re the Northbank♪”というチャントも聞こえ始めます。そして個人的な印象ですが、旗色が悪いときにもあまり殺気立たないのがエヴァトニアン。2点目を取ったこちらがゴール裏のホーム席に向かって”Who are ya”(フワーヤと聞こえるあのチャント)と揶揄しても、何だか苦笑モードの和やかな雰囲気です。

と、そのうちに、例によって試合そっちのけでホーム席にちょっかいを出していたアウェイサポーターの空気がちょっと変わってきて、何やらエヴァートンサポーターとエールの交換のようなことをしている模様。見てみるとサポーターの視線の先にいたのは……なんと!まだまだ寒いこのリヴァプールで、マフラーと海パン一丁のエヴァートンサポーターです!アーセナルサポーターの呼びかけに応えて、ポーズを取ったり手を振ったりしていたこの人、ハーフタイムにはそのいでたちのままなぜかアウェイ席にまで入り込んで、やんやの喝采を浴びていました。

皆に“Speedo!Speedo!”と呼びかけられていたこの人、あとで知ったところでは、チャリティのためにこの格好で各スタジアムに出没している”Speedo Mick”さんという人。奥様がロンドンのホームレス支援のために働いており、友人の父がホスピスで亡くなったことをきっかけに募金を始めたそうで、ドーバー海峡を泳いで渡るチャリティにチャレンジしたのを皮切りに、2014-2015シーズンの夏から、そのスタイルのままスタジアムに現れるようになったとのことです。”Speedo”という愛称は、身につけている水着から来たのでしょう。日本語で言えば「海パンミック」というところでしょうか。アウェイ席に来ていたのも、募金を募るためだったのかもしれません。

そんな和やかなハーフタイムを経て後半。ようやく筆者から見えるサイドでアーセナルがゴールしてくれるぞ!と思っていたら、すでに2点取っているアーセナルは全然攻め上がってくれません。一度だけ、コーナーからジルーのヘッドが決まった!というシーンがありましたが、ファウルでノーゴール。気づけば交代交代で、ピッチ上にはディフェンダーばかり。

ギブスが左サイドに入るのにはもう慣れっことして、チェンバースがトップ下にいるってどういうこと!? 何というセコい(愛を込めて)戦法……さらに正直エヴァートンもゴール前での精度が低く、あまり怖くない印象でしたが、リーグ終盤のこの局面で、見事に勝ちをもぎとってくれたことには素直に感謝しなければなりませんね。見えないサイドではオスピナが相当傷んでおり、テレビ観戦のファンがやきもきしていたということは、あとからツイッターを見て知りました。

試合後、アウェイ席まで真っ先に挨拶に来てくれたのはコクラン。脱いだシャツを手に客席に近づく様子にはすでにただならぬオーラが漂っていましたが、物凄い形相でスタンドにシャツを投げ込み、“IT’S NOT OVER!!!(まだ終わってなんてないぜ!!!)”と叫んだ姿は、どれだけサポーターの心を奮い立たせたことか。ずっと「草食」なんて言われていたアーセナルに、今はこういう人がいるということを噛みしめつつ、スタンドをあとにする筆者なのでした。

熱くなったところで最後のおまけに、今回トライしたオヤツをご紹介。スタジアム内の売店で売られていた“Scouse pie”というパイです。リヴァプールなまり(ジェラードのしゃべりを思い出してください)のことを”Scouse”といいますが、同名の料理もあり、牛や羊と野菜を煮込んだシチューのことをこう言うそうです。Scouse pieの中身は、簡単にいうとポテトと牛肉……何かに似ていると思ったら、日本のビーフコロッケの中身そのものじゃないか!ちょっと口の中の水分を持っていかれる感じはありましたが、いかにもイングランドらしい、悪くないオヤツでした。

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“【現地レポート】”IT’S NOT OVER!!”…コクランが叫んだガナーズ快勝のグディソンパーク!” への3件のフィードバック

  1. ヤンガナ大好き より:

    現地観戦ならではの熱く暖かいレポートありがとうございます。バルセロナ戦と合わせて一気に読んでしまいました。オスピナのダメージはどうなることかと思いました。エバートンも何だか攻めるの申し訳ないな感で攻撃意識がトーンダウン。

    コクランいいですね。最後の最後まで応援し続けてこそ優勝の可能性は残ります。
    夢や奇跡は願わなければかないません。
    監督については賛否両論あると思いますが、変な雑音で選手の士気を下げるのだけは避けたいものです。

    "IT’S NOT OVER!!!(まだ終わってなんてないぜ!!!)"

    治安悪化しているので、欧州滞在&帰還までお気をつけてお過ごしください。

    —–
    現地グーナーさん、詳細レポートありがとうございます!グディソンパーク、スタンドがピッチに近く本当にプレミアリーグらしいスタジアムですね!スタジアムの外の雰囲気やアンフィールドと目とはなの先なのには驚きました。プレミアを間近で観れて本当に羨ましい限りです!

    何しろ嬉しかったのは試合後のコクランの熱いメッセージですね!まさに今、ガナーズに必要なのは彼のようにピッチで吠えて、鼓舞する熱いプレーヤーです。コクランはレギュラー奪取まで長い道のりを経た苦労人なので特に自分にとっても思い入れの強い選手です!ラストゲームまでタフな試合が続きますが、メンタルタフネスな彼の熱さで、最後の最後まで熱いゲームを期待しましょう!!

  2. makoto より:

    だしまるさん>
    ありがとうございます。ホントに、"IT’S NOT OVER!!!(まだ終わってなんてないぜ!!!)" です。

    ヤンガナ大好きさん>
    コクランは、情熱とインテリジェンスを両方併せ持つ素晴らしい人材だと思います。かっこいいですよね。

  3. とくはいん より:

    だしまるさん、お気遣いありがとうございます!コクランそうなんですよ。試合後こっちに向かって真っ先に歩き始めたのが彼だったんですが、凄い迫力。雑音をかき消すような存在感を発揮してほしいと思います!

    ヤンガナ大好きさん、グディソンは本当にいいスタジアムですよ!柱でゴール前が見えない席があるなど、見やすさや使い勝手の面では問題点もあるのですが、やはり残ってほしいスタジアムです。コクラン、個人的には未来のアーセナルのキャプテン第一候補だと思ってます。今回は本当に、サポまで元気づけられました!

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