脅威のトッテナム、試行錯誤のアーセナル&マン・ユナイテッド~プレミアリーグ第2節総括
「2013-14シーズンも、開幕からの2試合は連勝スタートでしたよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、いやいや、中身が違います。ソルダードのPK2発で、クリスタル・パレスとスウォンジーに1-0、1-0と辛勝だった昨季は、明らかに攻撃の多彩さを欠いていました。しかし今季は、緒戦のウエストハム戦こそ追加タイム3分に新人エリック・ダイアーが決勝ゴールと、1年前同様の「辛勝スタート」ではあったものの、24日のQPR戦は見事な4-0圧勝。今季のプレミアリーグ昇格チームのなかでは、いちばん連携が心もとないQPRを割引する必要はあるかもしれませんが、それでもポチェッティーノ・サッカーには、昨季のヴィラス・ボアス体制には感じられなかった期待感があります。キーワードは、「ショートカウンター」「ラメラ・シャドリの再生」「斜めのラン」です。
すごかったのは、エリク・ラメラ。ラッキーボーイ、エリック・ダイアーに今季2点めを決めさせたCKや、前線への質の高いフィードもさることながら、まず挙げたいのは「鬼気迫るチェイシング」。QPRの自陣でのパス回しを執拗に追いかけ、足をひっかけ、敵陣でボールを奪取すると、素早くショートカウンターのスイッチが作動します。トッテナムの攻撃が効果的だったのは、中から外、外から中と、斜めに選手が走ることで、相手のマークを混乱させていたこと。先制点のシーンで、右サイドのシャドリへクロスを出したのは、左に流れていたアデバヨル。3点めが圧巻で、右にいたラメラが左サイドにドリブルで持ち込み、左足の完璧なクロスは中央で空いていたシャドリのヘッドにぴったりでした。昨季の決め手だった天才エリクセンの超絶FKはこの日も一直線にバーを叩き、4点めのカウンターでダメを押したアデバヨルは、もう1~2点獲ってもおかしくありませんでした。
2ゴールを決めたシャドリと、2アシストのラメラが、昨季と何が違うかといえば、プレイエリアを限定されなくなったことではないでしょうか。サイドに押し込められる時間が長く、フォローがないため縦に持ち込むしかないシーンが多かった昨季は、特にラメラは窮屈そうにプレイしていました。この試合の彼らとアデバヨルを観ていると、セインツのジェイ・ロドリゲスとララナ、リッキー・リー・ランバートの速攻を思い出します。新生トッテナムは、プレミアリーグ上位対決で、相当いい試合をするとみます。たった2試合での躍進予想は気が早いかもしれませんが、昨季「惨敗ダブル」だったマンチェスター・シティとの対決が楽しみです。
逆に難しいと思ったのが、アーセナルの4-1-4-1(あるいは3センター)と、マンチェスター・ユナイテッドの3バックです。アーセナルは、アルテタかフラミニを中盤の底に置き、ウィルシャーとラムジーを中央に並べる布陣にトライ。ウィルシャーとラムジーの攻撃力をより高い位置で活かすとともに、中に3枚並べることで、守備を厚くする狙いもあるでしょう。しかし、この形でエジルやカソルラを外に置くと、彼らが中に入ってきたときに真ん中が渋滞するシーンが多く、外に張り付けるとなると、エジルの繊細なパスやカソルラのシュート力など、そのよさが半減します。
「エジル、カソルラ、ロシツキにも中央でハードに守備をさせる」ぐらいの覚悟があれば、3センターのローテーションの選択肢も増えていいと思いますが、そこまでやれないのであれば、4-2-3-1でクリエイティビティのある選手をトップ下に置いたほうが結局、機能すると思います。現状は、抱えているメンバーと戦術にギャップがあるようにみえますが、ヴェンゲル監督には、どこまでのヴィジョンがあるのでしょうか。4節のマンチェスター・シティ戦が最初の試金石になりそうです。
ファン・ハール監督が気になるのは、選手の可能性を広げる起用をするのではなく、開幕2戦で早くも選手の能力を見切っているようにみえるところです。香川真司のサイドやセントラル起用を諦め、フェライニをフィットさせる手段は考えず、エレーラを「10番の選手」といい切ってしまうオランダ人監督に、昨季、適材適所よりコンセプトを優先して何人かの潜在能力を眠らせたヴィラス・ボアス氏がオーバーラップするのは私だけでしょうか。ディ・マリア、ロホの加入で強くはなると思われますが、マタ、香川真司、エレーラ、キャリック、フレッチャーらをどう組み合わせて有機的な攻撃ができるようにするのか。「中央問題」が解決しなければ、サンダーランドだけでなく、多くの中堅・下位チームに勝ち点を持っていかれることになるでしょう。
昨季の課題をひとつひとつつぶしにいっているリアリスト、モウリーニョ監督と、3-4-1-2という自らのコンセプトに選手を当て込もうとしている理想主義者、ファン・ハール監督。プレミアリーグ4位に手が届くのであれば、今季はモウリーニョ氏の背中が見えなくなってもやむなしですが、同じリアリストが舵を取るトッテナムやリヴァプールを今のやり方でかわすのは、相当なカリスマと腕力が必要になるのではないかと不安です。しかし、モウリーニョさんは素晴らしいですね。ジエゴ・コスタとセスクがこれだけ早くフィットしているのは、監督の手柄だと思います。レスター戦は、前のめりになり過ぎて冷や汗をかきましたが、プレミアリーグ下位クラブ相手に攻めあぐむゲームが多かった昨季の課題は、セスク、オスカルがサイドや前線を走らせる「縦の崩し」でかなり解消できそうです。
誤解のないように添えますが、私は、アーセナルやマンチェスター・ユナイテッドに「元に戻せ」といっているわけではありません。「新しいトライと今までの長所をうまく融合させること」「現在の顔ぶれとやろうとしていることにズレがあれば、補強や選手の能力開発できちんと解決すること」「難しいと判断したら、速やかに違うやり方を求め、固執しないこと」ができればいいと思います。…ああ、せっかくいろいろ観たので、「ニューカッスルの決定力問題」「アストン・ヴィラをなぜ降格候補と予想するか」など、書きたいことが多々あったのですが、長くなりましたので、それはまたの機会に。本日はこれから、早くも、マンチェスター・シティとリヴァプールの「昨季プレミアリーグ1位2位対決」です。みなさま、くれぐれも健康には気をつけて楽しんでください。眠いです。
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スパーズの2連勝は、確かに去年のそれとは別物なんですが
ダイアーのもたらした奇跡と、チーム不安定の昇格チーム相手だから当然、という見方も出来て、浮かれてはいられません
QPR戦を見て思ったのは、去年はボールの取りどころがハッキリしなかったチームが
今年は明確に前から奪いに行っていることですかね
カブールを起用してもなお、ここまで無失点の要因はここにあると考えてます
この戦術がドルトムントレベルになれば、マンC相手にも好ゲームを期待出来るはず
スパーズの調子と戦術が本物かどうか、は次のリバプール戦で分かるでしょうから
それまではあまり期待せずにいたいと思いますw
更新お疲れ様です。
ジルーが3ヶ月の離脱という噂です。フォーメーション問題もそうですが、怪我人も1試合ずつ増えていて、ユナイテッド同様キビシイ状況です。
スパーズ推しさん>
日曜日、楽しみですね。あれだけプレスかけられれば、リヴァプールは苦しみそうです。
せおさん>
エヴァートン戦の最後、立てなかったですからね。キャンベルがブレイクするとか、サンチェスが暴れてくれるなど、ピンチをチャンスにするような選手が出てくれるといいですね。
スパーズを応援しているので記事に取り上げてくれて嬉しいです。
今オフはあまり動きはなかったですが昨オフにたくさん動いたので、個人的には「足して2で割って今年もそこそこ補強した」と思うようにしています(笑)
あと、気を使ってもらったのかもしれませんが、1-5,0-6だったシティ同様、0-5,0-4とリヴァプールにも「惨敗ダブル」をくらっています(笑)
次節のレッズ戦で少しでもその借りを返してほしいな~と思っています。
aienさん>
極めて個人的な思いですが、リヴァプールもさることながら、プレミアリーグ王者を倒してほしいな、というのがありまして。マンチェスター・ユナイテッドにとっては最大のライバルであり、独走してほしくないというのもあり。トッテナムには、自らも参戦しつつの「混戦メーカー」を期待しております。
コメントをされている方がスパーズサポばかりの中恐縮ですが、同じく私もスパーズサポで記事に取り上げて頂いて嬉しく思っております。
管理人様の仰るように今節のハイプレッシャーは大変期待が持てました。次節のリヴァプール戦で上位相手にどの程度戦えるのかわかると思いますので、あまり期待はしないようにしつつも楽しみに週末を待ちたいと思います。