イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

欧州スーパーリーグ雑感~ビッグ6のステートメントとメッセージに触れて。

I think it was nearly the worst idea I ever heard. It underestimated the power of the fans and how much they love football and it is for everybody. We are all happy the first battle is won but I think it is not over yet.

これまで聞いたなかで、最悪のアイデアだったと思う。ファンのパワー、サッカーをどれだけ愛しているかを過小評価していた。最初の戦いに勝てて、みんなハッピーだね。しかし、この話はまだ終わっていない。
ーサウサンプトンマネージャー、ラルフ・ハーゼンヒュットル


19日の唐突なアナウンスで一気にヒートアップした欧州スーパーリーグを巡る議論は、レアル・マドリードとバルセロナ以外の10クラブが撤退を表明し、ひとまずの決着を迎えようとしています。プレミアリーグのビッグ6が、いち早く離脱を決めたのは、フットボールの母国におけるファンの怒りがあまりにも凄まじかったからでしょう。最初に謝罪したのは、アーセナルでした。「スーパーリーグへの招待状が届いたとき、保証はないとわかっていても、アーセナルとその未来を守るために取り残されたくなかった」という表現は、パンデミックによって危機的な状況に立たされている経営ボードの偽らざる本音でしょう。

「BBC」のサイモン・ストーン記者によると、ジョエル・グレイザーがサポーターに向かってメッセージを送ったのは、2005年の買収時にMUTVのインタビューに応じた1回のみだそうです。「より安定的な基盤を作ろうとするあまりに、昇格・降格・ピラミッド型の構造といった欧州のフットボール界に深く根付いた伝統に、充分な敬意を払わなかったことを反省している」と悔やんだマンチェスター・ユナイテッドの会長は、「間違った方向に進んでしまったが、それを修正できることを示したい」と明言し、謝罪と感謝の言葉を添えています。

「いうまでもなく、今回のプロジェクトはファンのサポートがなければ成立しないものだった。この2日間で、みなさんは明確にこのプロジェクトは成り立たないという姿勢を示してくれた。クラブはその意見を傾聴し、尊重する。ユルゲン、ビリー、選手たち、LFCで働く全員に対して謝罪したい。彼らはこの混乱の原因ではなく、最大の被害者だった」と語りかけたのは、リヴァプールのジョン・ヘンリーです。世界で最も情熱的なサポーターを激怒させてしまったことを詫びたオーナーは、「不必要かつ残念な出来事の責任は、私ひとりにある」とコメント。「自分にできることは何でもする」という言葉で、オンライン配信のメッセージを締めくくりました。

アメリカから来たオーナーたちが、土下座せんばかりのエモーショナルな謝罪をする一方で、チェルシーとマンチェスター・シティは短い言葉で「欧州スーパーリーグの計画を策定しているグループから脱退する手続きを取った」と報告。トッテナムも事実とその意図を伝えつつ、ダニエル・レヴィ会長の「意見を挙げてくれたすべてのサポーターに感謝したい」という言葉を添えるのみに留めています。

プレミアリーグの6つのクラブの対応を経て、今回の混乱を最も的確に表現していたのは、冒頭で紹介したサウサンプトンの指揮官ではないでしょうか。自分が応援するクラブが、降格のない欧州で下位の常連となり、プレミアリーグで4位をキープしていたとしたら、何を喜べばいいのでしょうか。上位で終えたシーズンのその先に欧州があり、頂点を極めたら世界一の座を争う。リーグを中位で終えたらEL出場権を目標とし、不振のクラブは必死で残留をめざす。得られるものと失うもののギャップが大きければ大きいほど、われわれは熱狂するのだと思います。

世界中の選手が集まり、多様なファンが歓喜と悲嘆を繰り返すフットボールには、アメリカンフットボールやMLBのようなクローズドなレギュレーションは受け入れられなかった。もし、それがいいと信じるのならば、スタジアムやテレビで応援する人々とのコミュニケーションを経て変えるべきだった…。オーナーたちが心から謝罪したのならば、ファンが納得する何らかのアクションを早急に施したほうがいいのではないかと思います。例えば、イングランドやスペイン、イタリアの小さなクラブを支えるための基金を創設するというのはいかがでしょうか。

最後に。クラブから、自分たちの大事な未来について何も知らされず、不安を抱いたままで勝ち切ったマンチェスター・シティとトッテナムの選手たちに、敬意を表したいと思います。フィル・フォーデン、ロドリ、ガレス・ベイル、そして勝負を決めた90分のソン・フンミンのペナルティ。それぞれ、素晴らしいゴールでした。彼らや監督、スタッフまで批判の渦に巻き込みたくありません。欧州スーパーリーグが原案のままで開催されると決まったら、毎日プレミアリーグのブログを書くという営みを終えようと決めていたのですが、週末はいつものように33節のゲームを楽しもうと思っています。

現地で声を挙げてくれたサポーターのみなさん、ありがとうございました。ただ見ているだけしかできなかったプレミアリーグファンとして、心よりお礼を申し上げます。


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“欧州スーパーリーグ雑感~ビッグ6のステートメントとメッセージに触れて。” への2件のフィードバック

  1. グナです より:

    「欧州スーパーリーグが原案のままで開催されると決まったら、毎日プレミアリーグのブログを書くという営みを終えようと決めていた」という言葉が胸に響きました。

    同じく、スーパーリーグの舞台に立つアーセナルを応援することなどどうしても出来ないと思っていました。
    ファンになって以来初めて、心が大きく離れました。
    ヴェンゲルが去った時も、今季15位くらいに沈んだ時も、なんだかんだと毎試合応援していました。
    でもやはりスーパーリーグという構想はどうしてもアレルギーのような拒否反応が出てしまいます。

    可能な限りフェアな視点でいたいため、自分なりにペレス会長の言葉にも耳を傾けようと思いました。
    「マンチェスター対格下のチームの試合など観るか?」……確かに、ファンでない下位のチームの試合は積極的に観ていません。恐らく、今後も観ないでしょう。

    「若い人たちがサッカーに興味を持たなくなっているが、それはなぜか? 質の低いゲームがたくさんあり…」……質が低いかはさておき、若い人たちがサッカーに興味を持てていないのであれば何かアイデアを出す必要があるのはその通りでしょう。

    「危機的状況にあるサッカーを救うためにやっているのだ」……これが本音かは疑問ですが、もしかしたらスーパーリーグを歓迎していた下部リーグの経営者達もいたのかも…。

    現在のスーパーリーグ構想は崩壊しましたが、立ち上がった経緯までは忘れてはいけないのでしょう。
    給与、観客数、コロナウィルス、オーナー陣、ファンの年齢層、配信環境の変化。
    何か状況が変われば、再びスーパーリーグという発送は現実味を帯びてくると思います。

    猿さんも言ってましたが、「フットボールは聖域。運命共同体のハゲタカもそこまで踏み込んでこないだろう」とどこかタカを括っている部分はあった。、というのは全く以て僕もその通りです。

    モヤモヤ考えながらの駄文、まとまりのない文章で申し訳ないです。
    次はエヴァートン戦ですか。
    ポジティブなメッセージを送り続けているオーバメヤンを信じ、試合をしっかり応援したいと思います。

  2. n より:

    ESLはあまりに現場の現実とかけ離れていたので無くなりそうですが、元々の動機であるFIFAやUEFAの莫大な利権と汚職、PBPの流れもあるので、これを機に改革が進むといいですね。まずはコロナ禍で消滅しそうなクラブの救済。リーグの固定化ではなく流動化こそプレミアの面白さの真髄だと思うので、資金格差の是正や、法外な移籍金にサラリー規制までふみこんで、逆に試合数の緩和などビッククラブの選手・スタッフにも恩恵があるような流れができるといいですね。

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