偏愛的プレミアリーグ見聞録

インターナショナルマッチウィークに入ると、必ず話題に挙がるのが「FIFAウィルス」です。いつの頃からか、代表戦による負傷や疲労蓄積に対して使われるようになった言葉で、あまり気持ちのいい響きではありませんが、ときどき本当にウィルスなんじゃないかと思うぐらいに負傷者が大量発生することがあるのも確かです。

南米とアジアではワールドカップ予選、欧州はユーロ予選、中米とアフリカの国はフレンドリーマッチが開催された今回、ウィルスが蔓延したかのように続々と負傷者が発生しました。同僚のハメス・ロドリゲスやダニーロに続いて代表戦で倒れたのは、アルメニア相手に2ゴールを決めたベンゼマ。国内で絶不調のユーヴェはモラタ、ポグバ、マンジュキッチが次々と倒れ、バイエルンのマリオ・ゲッツェは鼠蹊部を痛めて年内絶望です。パリ・サンジェルマンのダヴィド・ルイスとモナコのコエントランも離脱しており、欧州の大会を控えるクラブにとっては頭が痛いでしょう。プレミアリーグ勢も例外ではなく、今回最大のウィルス被害クラブはマンチェスター・シティです。

ワールドカップ予選でブラジルとアルゼンチンが初戦を落とすという波乱のなか、セルヒオ・アグエロがハムストリングを痛めてリタイア。ユーロ出場を決めたスペインでは、ダヴィド・シルヴァが後ろからのタックルに倒れ、重いねん挫を負っています。彼らは3～4週間程度の離脱といわれており、マンチェスター・シティはプレミアリーグのボーンマス戦、チャンピオンズリーグのセビージャ戦、その直後のマンチェスターダービーを主力2人を欠いて戦うことになりそうです。負傷していたヤヤ・トゥレ、コンパニ、ナスリ、クリシー、デルフがこの先2週間で復帰してくるものと思われますが、ペジェグリーニ監督がベストメンバーを組めるのは、11月になってからでしょう。元々負傷者が少なかったチェルシーは、セルビア代表のマティッチとイヴァノヴィッチがハムストリングを痛めてリタイアしており、復帰までのどのくらいの時間を要するかは不明です。

ちなみに、プレミアリーグ2015-16シーズンで「最も負傷者の離脱日数が多いクラブ」はどこでしょう。この問いに対して、多くの方がウィルシャー、ウェルベック、ロシツキと長期離脱者が多いアーセナルを思い出すのではないでしょうか。ヴェンゲル監督のチームが負傷者が多いのは事実ですが、2010-11シーズンからの4季では2位、2位、3位、1位。完全に野戦病院と化していた2013-14シーズン以外は、こちらでも「安定的に上位にいながら優勝に届かないシーズン」を過ごしており、実はもっと強いチームがあるのです。

ケガ人の実態がリアルタイムで把握できるサイト「Injury League」を見ると、真のチャンピオンがわかります。ここでは、負傷者がゲームをロストするたびに1ポイントを加算するという方式で数字を取っているのですが、最近5シーズンの優勝クラブは、トッテナム、マンチェスター・ユナイテッド、ニューカッスル、アーセナル、ニューカッスル。アーセナルは昨季5位、そして今季は9位と、名トレーナーのシャド・フォーサイス効果で強豪クラブではなくなってしまいました。現在は、ピーナールとレイトン・ベインズ、ヒバートが長期離脱しているエヴァートンがトップなのですが、大本命は13人という圧倒的な人数を出しているニューカッスル！クルル、ダーローとGKが2人もやられ、ヤンマートとムバブが復帰時期未定となっているプレミアリーグ最下位クラブは、直近4シーズンを3度制覇という絶対的チャンプの座に向けて驀進中です。「Injury League」は、北の名門クラブの不振理由がマクラーレン新監督の手腕だけではないことを物語っているのです。

マンチェスター・シティとのダービーには何が何でも勝ちたいのですが、アグエロやダヴィド・シルヴァがいないとなると、勝ってもすっきりせず、負けるとモヤモヤ感が倍増です。サッカーファンとしては、両者ベストメンバーでぶつかるエキサイティングなゲームが観たいものです。負傷中の選手たちの一刻も早い復帰をお祈り申し上げます。と、余裕こいてて大丈夫なんでしたっけ？シュバインシュタイガー、キャリック、ルーニーはエヴァートン戦に間に合うんですよね？…失礼しました。クロップ監督がいらっしゃると聞いて、当方もいっぱいいっぱいなもので。