シュマイケルの分析が的確!レスター、アーセナル、マンチェスター・シティが強い理由
「彼(=ラニエリ監督)がやってきたのは、元々、かなりいい仕事ができていたチームだった。僕らは、昨季プレミアリーグのラスト10試合で、6つか7つ勝っていたんだ。いい結果が続き、勢いがあった。ラニエリ監督は部分的に今までと違うアイディアを導入したけど、何よりも大きかったのは、すべてを変えようとはしなかったことだ。それこそが称賛に値することだと思う。順調に進んでいたと判断して、そのまま続けさせてくれたんだ。コーチングスタッフも変えなかった。これは重要なことだし、本当に素晴らしいよ。多くの監督は、自分のスタッフを連れてきて、すべてを自分のやり方に変えてしまおうとするものだからね」(カスパー・シュマイケル)
納得です。これを聞いて、マンチェスター・ユナイテッドの監督就任後にファーガソン時代のコーチを刷新し、息の合う自分のスタッフを連れてきてプレミアリーグ7位と失敗したモイーズ監督を思い出してしまいました。今季のプレミアリーグは、レスター、アーセナル、マンチェスター・シティのTOP3でクリスマスを迎えますが、彼らに共通しているのは、昨季終盤から既にいいチームだったこと。長らく最下位だったレスターは、最後の10試合を7勝1分2敗と信じられない変身を遂げ、マンチェスター・シティは7勝3敗ながら、33節から6連勝フィニッシュ。6勝3分1敗だったアーセナルのドローには優勝したチェルシーと4位のマンチェスター・ユナイテッドの名前があり、FAカップでは危なげなく優勝を遂げています。
同じ時期のチェルシーは、7勝2分1敗で数字こそ今季のTOP3を上回るものの、2月以降は明らかに前半戦の攻撃力を失い、守備の堅さと試合運びのうまさで接戦を制する試合が続いていました。象徴的だったのは、4月12日のQPR戦。降格したクラブに対して0-1で辛勝したゲームは、モウリーニョ監督のチームが放った枠内シュートは決勝ゴールとなった88分のセスクの1本のみでした。シーズン3敗というトータルの強さに幻惑されて、私たちはチェルシーが今季も優勝争いの中心となるだろうと予測していたわけですが、今振り返れば、現在の結果のベースは前シーズンに既に醸成されていたようです。
ラニエリ新監督がチームのいいところを踏襲してスタートを切ったレスター、守護神チェフしか補強せず、欧州の主要リーグで唯一フィールドプレーヤーを獲得しなかったクラブと驚愕されたアーセナル、主力を全員残してデブライネ、スターリング、デルフ、オタメンディと要所を強化したマンチェスター・シティ。3チームともターゲットを絞った補強が成功しており、アーセナルの唯一の新戦力はストライカー2人分ぐらいの効果をもたらし、レスターのカンテと岡崎慎司は、前でボールを奪ってカウンターを発動させるためになくてはならない戦力となりました。いい基盤を創り、そこに的確に新戦力を載せる継続性の高いチームづくり。自分たちの戦い方を確立させている彼らが、プレミアリーグ前半戦の上位にいるのは、当然の帰結なのかもしれません。攻撃のベースはそのままに、昨季弱かった守備力に特化して補強を進めた4位トッテナムも、こちらの仲間にいれていいでしょう。
一方、この2年の間に、チェルシーはダイエットで体を絞りすぎ、マンチェスター・ユナイテッドはデトックスをやりすぎました。青はサラー、シュールレ、デブライネ、クアドラード、ドログバ。赤はエヴラ、香川真司、チチャリート、ファン・ペルシ、フレッチャー、ラファエウ、ヤヌザイなどなど。両者とも、放出した選手が各国のリーグで活躍しているのが時折話題になり、過度な売却が今季の不振の理由のひとつと指摘されています。もちろん、このなかには出して正解な選手もいますが、チェルシーはあまりにもソリッドで、マン・ユナイテッドはポジションの偏りが激しく、オプションの不足に苦しんでいます。マンチェスター・ユナイテッドには改革が必要であり、ファン・ハール監督がもたらした戦略・戦術のベースは評価できるものの、選手の見切りは性急だったのではないかと思います。
モウリーニョ監督の3年を振り返ると、前述の選手以外にも相当数の選手を売りに出しています。ダヴィド・ルイス、ランパード、マタ、フェルナンド・トーレス、エトー、ルカク…。それぞれ放出した理由は違えど、マンチェスター・ユナイテッドともども「今、あの選手がいれば…」と、サポーターが惜しむ選手が多いのは確かでしょう。チチャリート、凄いです。ブンデスリーガ14試合11ゴール、公式戦トータル19ゴールは…いや、やめましょう。SAS時代が終わった後、自らの体に必要な栄養素を間違え、2年連続で開幕からしばらくは体作りから始めなければならなくなったリヴァプールも、ロジャース監督が残した3勝3分2敗という数字は想定内だったのだと思います。緊急外来から呼び出されて治療に向かった名医クロップは、カルテをチェックして、これは対症療法ではなく根本的な食事療法が必要だと内心冷や汗をかいているかもしれません。
ジョエル・キャンベルとフラミニを蘇生させてオリンピアコスとマンチェスター・シティに勝ったヴェンゲル監督、ドリンクウォーターの穴をキングに埋めさせ、エヴァートンを振り切ったラニエリ監督を見ると、選手を簡単に見切らずうまく活かすことの大事さや、継続性のあるチーム作りによって選手に実力以上の力を発揮させる手腕の確かさをあらためて感じます。モウリーニョさんやファン・ハールさんのチームづくりにも理があるのだとは重々承知ながらも、「急激な体づくりは、やりすぎると健康を害します」ということがわかったのが、この冬のひとつの収穫なのではないでしょうか。とりわけ、新チーム構築の混乱期を最小限にしないと勝ち点が伸びない前半戦においては、積み上げ型のチーム作りが大型補強による総合力UPに勝るのは間違いないでしょう。それにしても、いいこというなあ、カスパー。(カスパー・シュマイケル 写真著作者/Ben Sutherland)
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ほんとにカスパーいいこと言いますね。
ヴェンゲル監督は戦術の引き出しは少ないものの、選手を信頼するという点に関しては右に出るものはいないと思います。昨シーズンのコクラン・ベジェリン、今シーズンのキャンベル・フラミニのようにスクランブルの状態になって初めて起用し、チームにフィットさせるケース。また、メルテザッカーのように、明らかに調子を落としている名手(頼むからガブリエルでと何度思ったことか…)を蘇らせるケースもヴェンゲル監督の信頼の深さを感じます。
監督が選手の特徴を活かした戦術を取るか、監督の戦術がチームに浸透するかという単純な事に見えつつ上手くいかないのがサッカーですよねぇ…
ラニエリは選手の特徴を活かした戦術を選びそれがハマって選手も意図を明確とした動きが出来ている印象を受けます
全ての歯車が噛み合わさると此処までチームは強くなるんですね。今年のレスターには驚かされる事が多いです
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レスターはCLやELがないのも大きいですよね。層はそこまで厚くないので。
昨期前半、ユナイテッドに爽快な大逆転を見せてくれた時からレスターには注目していましたので(ファンである管理人様には申し訳ないです)、少し気が早いですが、次シーズンに欧州の舞台との両立をどう耐え抜くのか、今から楽しみだったりもします。
新参さん>
掲示板で、よく「劣化した」と切り捨てるコメントを目にしますが、簡単にそんなことをいってはいけないと、ヴェンゲルさんは教えてくれているのだと思います。
ガナユさん>
本当にそうですね。パッと見ると特別なことをやっているようには見えないけれど、よく見ると抜群に統制がとれている、そんなサッカーです。
queenさん>
おお、いきますかね、欧州。層が薄いので、後半戦の主力のケガが心配です。