レッドカード取り消しが目立つプレミアリーグ。ビデオ判定導入となっても問われる「人間力」
「デイリー・メール」の記事がレフェリー批判のためではなかったとしても、リリースされたきっかけが、クヤテに出されたレッドカードが後に取り消しとなったことなのは確かです。プレミアリーグ32節、ウェストハムVSクリスタル・パレス。この試合は、67分にハマーズが10人になった後、ドワイト・ゲイルの同点ゴールが決まって2-2のドローで終わっており、レッドカードがなければウェストハムが逃げ切っていたかもしれません。記事ではマーク・クラッテンバーグ主審のジャッジについて触れるとともに、今季出されたレッドカードのうち、14%が取り消しとなったと伝えています。具体的な数字を出しているのは日本のメディアのほうで、彼らによると49枚のレッドカード(プレミアリーグ公式サイトのスタッツでは51枚)のうち取り消しは7枚。話題になったものとして、チェルシーVSアーセナルでジエゴ・コスタを蹴ったとされたガブリエウの3試合出場停止が撤回され、別な事由による1試合に軽減された事例があります。14%、あるいは7枚という数字をどう見ればいいのでしょうか。私は、この部分的な数字だけを云々することには、あまり意味はないのではないかと思います。なぜなら、ここには「ゲームでは流されたが実はカードに相当した」ケースが反映されていないからです。
クヤテが退場となった翌日、プレミアリーグ32節のレスターVSサウサンプトンでは、GKをかわして放ったマネのシュートがシンプソンの手に当たり、試合後にクーマン監督が「あれはレッドカードだ」と不満を表明しています。このシーンについては、さすがに退場は厳しすぎるのではないかと思うものの、試合の結果への影響が少なかったために話題にならず「見逃されたカード」もまた、それなりの数になるでしょう。
プレミアリーグ公式サイトにおけるレフェリーのスタッツを見ると、2人のレフェリーの数字が目を引きます。リーグで最もベテランのマイク・ディーン氏は、昨季29試合でイエロー123枚、レッド8枚。今季は26試合でイエローカードは81枚と2年連続のイエローカード王に向かって走っており、レッド7枚も最多です。一方でロジャー・イースト氏は昨季17試合でイエロー53枚、レッド2枚とディーンさんより1試合あたりのイエローが1枚以上少なく、2015-16シーズンはイエロー60、レッドは1回も出しておりません。2年続いた同じ傾向を「イーストさんの試合はたまたま穏やか」で済ますのは無理があります。もし、ディーンさんに一定の理があるとすると、イーストさんがいくつかのシーンを見逃してきた可能性が高いわけです。どちらのレフェリングが妥当かはともかく、「レフェリーによって基準が違う」こともこの問題を難しくしているのだと思われます。今季のプレミアリーグでは、11節までに全体の半分弱の25枚が既に出ていたにも関わらず、そこからの21節でほぼ同じ数しか出ていないことからも、基準が揺れているのが見て取れます。
ビデオ判定が導入される際に、レフェリーが取らなかったシーンをどうするのか、運用ルールが重要になってきます。テニスのチャレンジのように回数制限つきの抗議チケットをベンチに発行するのか、相撲の物言いのようにビデオルームから「今のチェックするから試合を止めて」とレフェリーに連絡がいくのか。選手からの抗議を認めるのか。このあたりのやり方を間違えると、「試合の流れはよく切れるのにレフェリングの精度は上がっていない」などということにもなりかねません。少なくとも、「レフェリーの技術が高ければ高いほど、ビデオに頼るシーンは減り、試合が止まらずおもしろくなる」のは間違いないでしょう。納得感のあるおもしろいゲームを実現させるために大事なのは、ビデオ時代においても「人間力」なのではないかと思います。
時代を重ねるごとに選手たちの技術レベルが上がり、普通の選手が高速パスを簡単にトラップするようになった現代のサッカーを、ひとりの主審が裁くのはもはや限界なのかもしれません。中盤が間延びしてオープンな展開になる試合が多いプレミアリーグは、狭いエリアに選手が密集するセリエAと比べると、よりレフェリー泣かせでしょう。私がレフェリーなら、アルデルヴァイレルトやドリンクウォーターのように、後ろからのロングフィード一発でプレイエリアを変えてしまう選手は夢に出てきてうなされそうです。大変なのだろうなと思うものの、すっきり感が高いナイスゲームを増やしていただくべく、レフェリーのみなさんにはがんばっていただければと思います。取り消し7枚は多いですよね…ああ、すみません。そこだけつまんでも仕方ありませんね。(マーク・クラッテンバーグ 写真著作者/Brian Minkoff-London Pixels)
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マイク・ディーンはわれ等が敵と思ってます。
アーセナル戦とか特に悪意を感じます。
ドワイト・ヨークとは懐かしい名前が出てきましたね。僕も未だにドワイトと言えばヨークが一番に頭に浮かびます。
ケインやバーディーばかり話題になりますがゲイルの今後の活躍にも期待したいですね。
レフェリーは賞賛されることが批判されることよりも少なくて損な役回りだと思いますが、スピーディーで面白いプレミアらしい試合が失われないようにぜひとも頑張って欲しいです。
フィル・ダウドさんは元気にしてるかな?
ミハルさん>
みなさんお怒りですよね。カードが多い方ですので。
coysさん>
失礼しました。完全に手が滑りました。おっしゃるとおり、ゲームのスピード感は大事にしていただければと思います。
更新おつかれさまです。
攻守の切り替えが激しいスポーツの一つバスケットボールでは、あのコートの大きさでトップリーグで3人審判がいます。3人いるにも関わらずビデオ判定があります。ファールに関してのビデオ判定は少ないですが。
個人的な意見なのですが審判の人数を増やしてみてはと思います。さすがにあのピッチの大きさで自分より足の速い選手を追いかけながら裁くのは、どんだけハードな仕事やねん!とツッコミ入れたくなります。公平にしっかりとした基準で裁けるのであればピッチの中にいる審判を2人にして、ハーフコート分ぐらいを裁くようにしたらいいのかなと思います。
今シーズンぶっちぎりで誤審率1位です。
データによると勝ち点−11も失ってるとか・・・
昔は荒いサッカーでしたので、イメージは重要ですね・・・
ビデオ判定制度は早く実装させてもらいたいですね。
本来なら順位3位・・・オリンピックスタジアムでCLが行われると思うと
悔しくてたまらないです。
私はチャレンジ性導入に賛成です。
ただし、使えるのは成否は関わらないで両者一度のみ、審判が裁量権(使わないとしてもよい)、ベンチ脇にモニターを置き、第四審が確認。規定ではないが、カードつくな目の方が良いジャッジとみなされるのと同じように、使わない方が良い審判とみなされる風潮を作る。こんなの、いかがでしょう?
にわかスパーズファンさん>
そのご意見は賛成です。2人にすると、コミュニケーションをとることで審判による基準の違いが是正される、といった二次的な効果も期待できそうです。
ハマーズさん>
お気持ちお察ししますが、「あの誤審がなければ勝っていた…」は紙のうえでのお話で、実際にはその後の展開はすべて別モノになるので、「あのジャッジがなければ別な試合になり、そこで勝負がどうなっていたのかは誰にもわからない」んですよね。ということで、悔しさをまぎらわしていただく…というわけにもいかないお気持ちはわかるのですが。
queenさん>
チャレンジ制にした場合、回数を何回にするのかは難しい問題ですね。流れを止めないことを重視するなら、ご意見のように1回のみもありですが、私は「却下1回」、つまり抗議が通った場合は1回使ったことにならないというルールでもいいかと思いました。「使わない方が良い審判とみなされる風潮を作る」のは大賛成です。「いいレフェリーとはこういう人なのである」ということを明確にして、リスペクトも批判もすることでクオリティが上がると思いますので、文化や空気を作ることは大事だと思います。