偏愛的プレミアリーグ見聞録

2勝1敗、そしてひとりは微妙。昨季プレミアリーグ王者レスターを支えた4人のうち、2人も残留したことを喜ぶべきでしょう。ジェイミー・ヴァーディはアーセナルの誘いを蹴って残留。エンゴロ・カンテがチェルシーに移籍を決めた後、マフレズとドリンクウォーターに注目が集まっておりましたが、どちらも予想外の答えでした。プレミアリーグだけでなく、スペイン行きの話まであったリヤド・マフレズは残留で、ここまで静かだったドリンクウォーターは契約延長オファーを拒否しました。

攻守ともに中盤の軸となっていたドリンクウォーターがチームを離れるとなると痛手ですが、得難いマフレズが残ってくれれば、攻撃のクオリティは落とさずに今季のプレミアリーグを戦えそうです。ここ数年、リヴァプールに抜かれまくったサウサンプトンや、攻守の中心を持っていかれそうになっているエヴァートンのことを考えれば、まずまずの着地ではないでしょうか。さすがはチャンピオンズリーグ出場クラブです。

「フランス・フットボール」のインタビューで、「プレミアリーグはすごいリーグだから、できるだけここにいたいと思う。でも、世界には誘われたら簡単に断れないクラブが2～3あるのも確かだ」と語っていたマフレズは、アーセナルやスペインのクラブが本気で口説いてくれば、ノートはいわないものとばかり思っていました。レスターが提示した新契約は、現状の週給3万5000ポンド（約480万円）を8万ポンド（約1100万円）に上げるという話でしたが、このぐらいの金額で難色を示すトップクラブはないでしょう。昨季プレミアリーグで17ゴール11アシスト、PFA年間最優秀選手までゲットしたアルジェリア代表MFに興味を示すクラブは少なくないと思われ、早晩レスターを離れるはずと見切っていたのですが、彼のクラブへの愛情は思いのほか深かったようです。レスターの公式サイトが、「マフレズとの契約延長を発表できることを嬉しく思う。彼は2020年までフォクシーズとともにある」と発表し、この夏移籍する可能性は消滅しました。ラニエリ監督はもちろん、同僚たちもこの報告に盛り上がっているでしょう。

一方のドリンクウォーターもまた、2014年に結んだ週給3万ポンド（約390万円）の契約を、8万ポンド（約1040万円）にUPするオファーを受けていました。レスター歴2年半のマフレズに対して、4年半と長いセントラルMFのほうが残留に近いとみていたのですが、結論は真逆。これから選手としてのピークを迎える26歳は、プレミアリーグ優勝を置きみやげに新しい環境でプレイする道を選ぼうとしているようです。トッテナムが獲得希望と伝えられているドリンクウォーターに、レスターは週給10万ポンド（約1300万円）で再交渉すると報じられていますが、この2万ポンドで翻意するでしょうか。チャンピオンズリーグ出場クラブを離れてトップクラブでプレイしたいと考える選手は、多少の収入増加には動かされないのではないかと思います。

さて、ドリンクウォーターが移籍となったとき、レスターは同じような水準の選手を獲得することができるのでしょうか。一見、難しそうですが、プレミアリーグのトップクラブだけでも、このポジションで余剰戦力となりそうな選手が数人います。マンチェスター・ユナイテッドのシュヴァインシュタイガー、トッテナムのベンタレブ、マンチェスター・シティのフェルナンド。なかでも、お値段がリーズナブルで経験豊富なシュヴァインシュタイガーなど、うってつけではないでしょうか。さらにもうひとり、中盤の底で体を張ってくれるマテュー・フラミニがまだ体が空いていれば、併せて押さえておくと、ナンバリス・メンディをより攻撃的な役割で使うことができます。開幕戦でハル・シティに敗れてしまい、「プレミアリーグ史上初めて前年優勝チームが初戦負け」といううれしくない記録を残してしまったレスターですが、ここからの補強次第で、CLはともかくEL出場権を狙えるチームにはなると思われます。とはいえまずは、ドリンクウォーターの残留工作ですね。いや、彼が残ったとしても、いかがですか？シュヴァインシュタイガー。