偏愛的プレミアリーグ見聞録

今季プレミアリーグで、負傷者の欠場が最も多いクラブはどこでしょう？この問いに対して、正解に辿り着ける人はさほど多くはないはずです。「How have Premier League clubs been affected by injuries this season?（負傷の影響が大きいクラブは？）」。アナンタジット・ラグラマン記者のレポートのタイトルを見て、真っ先に頭に浮かんだのはマンチェスター・シティでした。

デブライネとロドリのリタイアの印象が強かったのでしょう。しかし実際は、マン・シティの負傷者総数は11人で10位。欠場した試合数を足し込むと38で12位です。ウーデゴーア、カラフィオーリ、冨安健洋らの離脱で苦しい戦いを強いられたアーセナルは、アストン・ヴィラと並ぶ13人で5位。延べ試合数は48で7位と、ペップのチームを上回っています。

シンキングタイムはこのへんで切り上げ、そろそろ上位を紹介しましょう。人数のTOPはブライトンで19人。2位は18人のイプスウィッチで、14人のトッテナムとエヴァートンが3位に並んでいます。欠場の総試合数は、ブライトンとブレントフォードが67人で最上位となっており、イプスウィッチが65試合、マンチェスター・ユナイテッドが60試合で続いています。

最も影響が大きいブライトンとブレントフォードについて、顔ぶれを見てみましょう。ブライトンの負傷者は、レギュラークラスばかりです。前十字靭帯損傷のソリー・マーチは未だ出場ゼロで、復帰時期は未定。夏にセルティックから獲得したマット・オライリーは、カラバオカップ2回戦のクローリー・タウン戦で足首を痛め、手術に踏み切っています。

復帰戦となった11節のマン・シティ戦で、1-1からデビュー戦ゴールを決め、逆転勝利の立役者になりました。このチームは新戦力のリタイアが多く、マッツ・ヴィーファー、ヤンクバ・ミンテ、ブラヤン・グルダは全員3試合以上を失っています。エースのジョアン・ペドロは、筋肉を傷めて6試合を欠場したのですが、ベテランのウェルベックが11試合6ゴールで穴を埋めました。

片やブレントフォードは、人数は9人で13位なのですが、開幕から全試合アウトが4人もいます。クラブ・ブルッヘから移籍したばかりのイゴール・チアゴは半月板。リコ・ヘンリーとジョシュア・ダシルバは前十字靭帯をやってしまい、アーロン・ヒッキーはハムストリングです。5節からの3試合はウィサとイェンセンをダブルで欠いたのですが、1勝1分1敗で乗り切りました。

あらためて負傷者ランキングを眺めながら、ツートップの健闘を称えたいと思います。ブライトンはロベルト・ゼ・デルビが退任となり、31歳のファビアン・ヒュルツェラーにバトンタッチしたばかりです。トップリーグの経験がない若き指揮官は、11節までにビッグ6との対戦をすべて終えるという過酷なスケジュールを突き付けられていました。

そんななかで大量の負傷者という追い討ちに苦しみながら、マンチェスター勢とトッテナムを撃破し、アーセナル戦は1-1のドロー。リヴァプールとチェルシーには敗れたものの、ビッグ6に3勝1分2敗は天晴れのひとことです。直近のマン・シティは、主力6人を欠いて終盤に逆転。3位チェルシーと並ぶ5勝4分2敗で6位に着けており、さらなるジャンプアップが期待できそうです。

トーマス・フランク率いるブレントフォードは、「4試合連続で開始2分以内にゴール」という空前絶後のレコードを叩き出し、5勝1分5敗で11位。最初の11試合で12回のラインナップ変更は、2番めに少ない数字です。トータル22ゴールはペップと並ぶリーグ2位。クリーンシートゼロの22失点はワースト2で、毎週派手な殴り合いを続けています。

メイヌーがいない、ブルーノが出られない、ルーク・ショーはまだかと主力の不在を嘆く日々が続いていたマン・ユナイテッドのサポーターとしては、指揮官が掲げるコンセプトとベーシックな戦略・戦術がしっかりしていれば戦えるのだと、勇気をもらった感があります。負傷者3人、延べ10試合と最少のウェストハムは14位。リストの長さで勝負が決まるわけではないと肝に銘じる次第であります。