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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

現地記者が徹底リサーチ!「プレミアリーグで戦術が多彩なチーム&多芸な選手ランキング」

「イブニング・スタンダード」のマリク・ウジア記者が、FAカップ4回戦でブライトンに2‐1で敗れたチェルシーについて、「マレスカ監督はプランAに固執しすぎ、選手交代のタイミングが遅い」と批判していました。最初の交代カードは、59分にデューズバリー=ホールをエンソ・フェルナンデス。勝負の2枚代えは、74分になってからでした。

ペドロ・ネトとジェイドン・サンチョを下げて、タイリック・ジョージとノニ・マドゥエケ。2度の交代策は、いずれも同じポジションの選手の入れ替えで、4‐2‐3‐1のフォーメーション自体は変わっていません。「失うものがないFAカップで、守備的な選手をアタッカーに代えるなどの手を打たないのはなぜか。あまりにも保守的で、相手に対応されてしまう」というわけです。

これをマレスカ監督の弱点とする批評には、違和感がありました。安定感が抜群のリヴァプールを率いるスロット監督や、運動量を重視しているように見えるアルテタ監督も、試合中にはさほどフォーメーションを変えない監督だからです。バランスを重視しながら、個性が異なる選手の投入によって攻撃に変化をもたらす采配自体は、悪くはないでしょう。

先週末、「アスレティック」のマーク・ケアリー記者が「プレミアリーグで最も多才なチームと選手は?(Who are the Premier League’s most versatile teams and players?)」と題した記事を配信していました。このなかで、各チームが今季のリーグ戦で試合中にフォーメーションを変えた回数をランキングで紹介しています。

1位はノッティンガム・フォレストのヌーノ・エスピーリト・サント監督で、24試合中19試合でシステム変更を行っています。彼の定番は、4‐2‐3‐1から5-4-1。ラスト25分でリードしていると、逃げ切りを図るために守備を強化することが多く、14回で2位のウェストハムも同じ趣旨の戦術変更を多用していました。フレン・ロペテギも、守りたいときは5‐4‐1でした。

10回を超えているのは、セインツ、ブライトン、スパーズ、フラム。少ないほうを見ると、マンチェスター・ユナイテッドの1回が際立っています。テン・ハフは4‐2‐3‐1、ルーベン・アモリムは3‐4‐2‐1を変えないのですが、8勝のうち4勝はラスト15分からの決勝ゴールです。イプスウィッチのマッケンナは4回しか変えておらず、リヴァプールはチェルシーと同じ5回です。

ボーンマスのイラオラ監督も5回ですが、「それぞれのポジションの役割と動きが決まっており、誰がどこに入ってもクオリティは変わらない」というコンセプトゆえ、意外と多い印象です。アルテタとエディ・ハウは6回。エメリのアストン・ヴィラとフラムのマルコ・シウヴァは平均的な8回で、ペップ・グアルディオラの9回は「やや多い」と表現するのが妥当でしょう。

多用する監督の「逃げ切り策」「テコ入れ策」のどちらが多いかは戦況とリンクしており、少ない監督も「布陣は変えず用兵で変える」「布陣も選手も変えず、CBを上げるなど戦い方を変える」など多様なアイデアがあります。マレスカ監督が4‐2‐3‐1を変えたがらないのは事実ですが、「1年めの今はベースの戦術の質を高めようとしている」と捉えてもいいのではないでしょうか。

「アスレティック」の記事は、複数の役割をこなす多芸なプレーヤーも紹介しています。7つのポジションで起用された選手が3人いるのですが、「今シーズン、最も幅広いポジションで活躍している」と評されたのは、出場時間が最少の鎌田大地です。930分でトップ下、2列めの左右、右ウイング、左のサイドMF、セントラルMF、アンカー。ケアリー記者の評価を紹介しましょう。

「夏に加入して以来、レギュラーの座を確立できていない鎌田は、往々にして自身の多才さの犠牲者となっている。守備的なMF、セントラルMF、10番としてプレイできる日本代表は、明らかに技術に恵まれている。グラスナー監督の下で、単一のポジションで一定時間プレイすれば、最高のパフォーマンスを発揮できるようになるだろう」

ブライトンのジョルジニオ・リュテールはセンターフォワード、セカンドストライカー、トップ下と右サイドを合わせて7つ。最も多いのは33%のCFですが、セントラルMFでの起用が7%もあります。マンチェスター・ユナイテッドのヌサイル・マズラウィは、CB、SB、WBの左右と2列め。テン・ハフにもアモリムの戦術にもフィットしています。

ここ数年、プレミアリーグの観戦記を書きながら思うのは、システムは複雑化しており、4‐2‐3‐1や4-3-3はコミュニケーションのための記号になりつつあるということです。守備時は4‐4‐2を採用しているチームが多く、アーセナルとリヴァプールは中盤とSBが流動的です。「イブニング・スタンダード」の記者は、マレスカ戦術にはオプションがないといいたかったのでしょうか。

今季のチェルシーは、残り20分以降のゴールがポイントUPに直結した試合が7つあります。直近のプレミアリーグのウェストハム戦では、途中出場のペドロ・ネトのゴールをきっかけに逆転で勝っています。戦い方のバリエーション開拓は、2年めの課題としてもいいでしょう。アイデアを駆使しても、負ければ「ティンカーマン」などと揶揄される世界なのですから。


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