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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

誤算~優勝候補といわれたマンチェスター勢は、なぜ勝てなかったのか。

以前、私が率いていたクラブだったら、解任されていただろう。バルセロナやバイエルンでは、6か月で結果を出せなければクビになってしまう。とにかく勝利が求められるからね。だが、ここではありがたいことにセカンドチャンスがある。チャレンジするだけだ」。先日、マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督は、今季の戦績と自らの境遇について自嘲気味に話しました。22勝9分6敗は昨季よりも3勝多いものの、チェルシーとトッテナムに早期に引き離されプレミアリーグ3位。最終節の結果次第では、チャンピオンズリーグ出場権を失う可能性があります。昨季はベスト4だったCLはモナコに敗れてラウンド16で敗退。キャピタルワンカップを獲ったペジェグリーニさんに対してペップは無冠で、スペインの2強なら解任ゴシップが駆け巡ることは間違いありません。

一方、ライバルのマンチェスター・ユナイテッドを率いるモウリーニョ監督もまた、前任のファン・ハール監督を下回るかもしれません。プレミアリーグでは既に6位が確定しており、2015-16シーズンからワンランクダウン。昨季はFAカップを制覇したチームは、コミュニティシールドとEFLカップを勝っているものの、前者はファン・ハール監督の置き土産です。頼みの綱は、5月24日に開催されるヨーロッパリーグ決勝を制してCL出場権をゲットすることですが、ここで負ければ監督交代はポジティブではなかったといわれても致し方ありません。開幕前は優勝候補といわれていた両者は、なぜ勝てなかったのでしょうか。2人の指揮官の「誤算」について、振り返ってみたいと思います。

ペップの誤算は後ろ、モウリーニョは前。マン・シティの指揮官が新戦力に悩まされたのに対して、マン・ユナイテッドは既存選手の不振に苦しみました。ペップが獲得した選手たちのなかで、通年で活躍したといえる選手はゼロ。最も期待していたであろうギュンドアンは10試合でシーズンを終え、コンパニ不在の中央をまかせようと目論んでいたジョン・ストーンズは、エヴァートン時代にも指摘されていた軽いプレイやポジショニングミスが減りませんでした。当初は左サイドのレギュラーだったノリートは年明け以降はサブにまわり、今では外せないレロイ・サネが定着したのは1月に入ってからです。後半戦から合流したガブリエウ・ジェズスは負傷もあって9試合出場に留まり、「最大の誤算」となった守護神ブラボは、ジョー・ハートより足元が巧いというプラスよりも頻繁なキャッチングミスのマイナスが大きく、周囲の信頼を得られませんでした。

フェルナンジーニョのSBコンバートやCBコラロフなどの新機軸を打ち出し、最終ラインの選手が中央に入り込んで中盤に厚みをもたらすなど、ペップらしい新機軸はありましたが、効果は部分的でチーム全体の連動性を高めるまでには至らず。ダブルを喰らったコンテ監督のチェルシーのほうが、明らかに優れていました。ヤヤ・トゥレ、デブライネ、ダヴィド・シルヴァといった従来の主力を頼りながらサイドアタックの精度を高めたペップのチームは、後半戦は10勝6分2敗と持ち直したものの、TOP6との直接対決が4分1敗では上との差は詰まりません。最終ラインと中盤センターに複数の戦術をしっかりインストールできる選手がいなかったのが、思うように勝てなかった最大の理由ではないでしょうか。主力に30代が12人もいる高齢化組織にメスを入れて、ブスケツ、ラーム、シャビ・アロンソ、ボアテング、ダヴィド・アラバのように自らのコンセプトを体現できる選手を加えるところからリスタートしなければなりません。サネとガブリエウ・ジェズスが定着した前線が、唯一の収穫だった1年でした。

「守備戦術は錆びていないが、勝ちきれるチームを創れなくなった」「マルシアルやルーク・ショーなど若手をモチベートできない」。プレミアリーグ4位に届かないことが決まったマンチェスター・ユナイテッドの指揮官について、現地メディアがさまざまな角度から停滞の理由を指摘しています。まず押さえておきたいのは、マンチェスター・ユナイテッドが5節以降、1度も4位以内に食い込んでいないこと。初年度は、序盤の出遅れを取り戻せないままプレミアリーグ6位に甘んじたシーズンだったのです。

最も苦労したのは、オリジナリティ溢れるファン・ハール戦術に染まった選手たちに自らの戦い方を浸透させることでしょう。作り直しを余儀なくされたモウリーニョ監督が4-3-3にシフトし、ポグバのベストポジションを左のインサイドMFと見極めるまでに3ヵ月という長い時間がかかりました。キャリックがプレミアリーグで初めてフル出場したのは11月のスウォンジー戦。ここからのマンチェスター・ユナイテッドは、少なくとも負けないチームにはなりました。1月には、前任者が重用したシュナイデルランとシュヴァインシュタイガー、プレミアリーグについぞフィットしなかったデパイの放出を決め、中盤のベストオーダーをポグバ、キャリック、エレーラとしたモウリーニョ監督のチームは、年末年始の6連勝をきっかけに後半戦は上位争いに食い込んでくるものと思われました。

しかし、マン・ユナイテッドはチェルシーやトッテナムの背中を見ることはできませんでした。最大の誤算は、ズラタンを除く前線の選手の不振です。ウェイン・ルーニーはかつてのレベルからはほど遠く、ムヒタリアンは完全に出遅れ。ラシュフォードはサイドでの振る舞い方を見つけるのに時間を要し、マルシアルに1年めの輝きは戻ってきませんでした。デコ、ランパード、ドログバ、テリー、イブラヒモヴィッチなど、メンタルが強い成熟した選手には熱狂的に支持されたモウリーニョ監督のハードマネジメントは、内向的なタイプや自由にやりたい若い選手には受け入れられないことがあるようです。ルーク・ショーは奮起したものの、マルシアルは今も沈黙し続けています。守備ではあれだけ冴えを見せたモウリーニョ戦術は、攻撃においてはどう崩したいのかが見えてきませんでした。TOP6との対戦成績は、ペップと同じ2勝4分4敗。リヴァプール戦、マンチェスターダービー、アーセナル戦と、勝ち点1を獲りにいくような消極的な采配も目立ちました。15もドローがあるようでは、「25試合連続で負けなかった」と評価するわけにはいきません。

初年度はそれぞれ苦しんだペップとモウリーニョは、どちらが来季の巻き返しを成功させるでしょうか。課題と足りないパーツが明確なペップのチームは、GK、SB、CB、中盤センターを補強するだけでもジャンプアップできそうですが、マンチェスター・ユナイテッドは指揮官の戦術自体に問題がありそうです。チェルシーで達成した3度のプレミアリーグ制覇では、いずれの年も素晴らしい速攻を見せてくれていただけに、今季の貧攻と自陣引きこもりが残念でなりません。守備の人になってしまったという現地紙の指摘が妥当なのか、実は策があるのか…。まずはヨーロッパリーグに勝って悪くない1年にしていただき、既にさまざまな噂が飛び交っている夏の補強に注目したいと思います。

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“誤算~優勝候補といわれたマンチェスター勢は、なぜ勝てなかったのか。” への8件のフィードバック

  1. tmw より:

    モウリーニョがひたすら日程を原因に言い訳を並べ立てている中、
    冷静な分析ありがとうございます。
    正直、モウリーニョが、というよりはユナイテッド自体がもう時代遅れなのでは、、、
    サイド攻撃一辺倒が染み付いてしまったチームは、CLのレベルにはなく、かつてから力が落ちたというよりは、時代から置いていかれた感が強いです。

  2. tmw より:

    モウリーニョが、試合数をひたすら言い訳にして日程に原因を押し付けている中で、
    冷静な分析ありがとうございます。
    正直、モウリーニョが、というよりはユナイテッド自体がもう時代遅れなのでは、、
    サイド攻撃一辺倒のチームはCLのレベルにはなく、かつてのチームから力が落ちたというよりは、時代から置いていかれた感が強いです。

  3. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    面白い分析だと思います。興味深く拝読しました。
    ユナイテッドですが、かつて存在していたチームを引っ張る闘将のような存在がいなくなった感じがします。古いですが、キーンのようなタイプは好きでした。

  4. pudding より:

    まぁモウリーニョの場合はあまりに選手の出来が酷いので戦術の話は出来ないでしょう。過去に彼も言っていましたが、いい卵がなければいいオムレツは作れないので。いちいちドリブルやパスを相手に引っかけてしまったり、決定機外したりでどれだけ腹立たしい思いしたことか。自身の戦術に合う選手がいるからシティを選んだペップと違い、クラブへの情熱でユナイテッドを選んだモウリーニョが結果を出すのにはもう1シーズンかかっても仕方ないでしょう。夏に然るべき補強をすれば十分優勝狙えると思うので、なんとしてもEL獲ってCL出場権得たいですね。

  5. makoto より:

    tmwさん>
    おっしゃるとおりだとすれば、監督と古株の選手を変えないと難しいということになりますね。来季、答えらしきものが見えてくるかもしれません。

    Mackiさん>
    ロイ・キーンはまさにキャプテンでしたね。ときどき暴走しますが、ブレなさ、諦めなさは一流でした。

    puddingさん>
    うーん…。パリ、ドルトムント、ユーヴェからエース級を獲得して、マルシアルやラシュフォードという伸び盛りもいて、プレミアリーグどころか欧州屈指のGKもいてという状況で、選手のせいばかりにはできないのではないでしょうか。とりわけ攻撃陣は、理想的な補強ができたという認識です。「今と違って、モウリーニョ監督の頃はポジションを当て込むだけで戦術の練習がほとんどなかった」と語っていたアザールの言葉のほうが気になっています。

  6. pudding より:

    ラッシュはまだしも、今季のマルシャルに「伸び盛り」といった言葉でポジティブな印象を持たせようとするのは明らかに監督に対して不公平ですよ(笑)マルシャルは2部リーグの選手のような活躍しかできず、ラッシュフォードも調子が良くなってきたのはここ最近で、序盤はウイングとしても活躍できませんでした。ルーニーは腐ってしまい、ムヒタリアンも出遅れ、イブラでさえ決定機を外すことが多かったです。これでも攻撃陣は良かったと思いますか?補強は金額やネームバリューではなく、活躍具合で理想的か評価するべきだと思います。そして、監督との確執が噂されたアザールの言葉なんてどこまで信用できるんですかね…。確執噂される前は彼もモウリーニョに対して「ドリブルのスペース作りのため自分やサイドバックの動きかたを指示してくれている」って言ってますしね。このブログはやはりペップやバルセロナ寄りのサッカー思考な気がしますね。それならそれで全然良いんですが、モウリーニョのサッカーも評価しているだなんてことは言わない方が良いと思います。

  7. makoto より:

    puddingさん>
    急にとても感情的なご意見ですね。モウリーニョさんが今季足りなかったところもあったのでは?というニュアンスがあっただけで(しかも決して強い批判ではなく)、ペップやバルセロナ寄りですか。バルセロナもペップの時代とここ数年ではまったく違うので、「いつの」がないとどこに寄っているのかわかりませんが、いわゆるポゼッションサッカーを手離しに礼賛したことはないので、具体的に「ここがこうだからバルサ寄りである」とおっしゃっていただけますか。強い批判・非難に論拠を求めるのは妥当なことだと思います。 (モウリーニョさんの対義語はバルセロナなのですか?)

    チェルシー第2時政権の2年めのモウリーニョさんのサッカーは、とても評価しているのですが、今季は厳しかったと思ってます。選手がよくないのは、本人の問題であることももちろんありますが、監督が使いこなせなかったということもあります。マルシアルは、昨季10ゴール超えの選手です。攻撃がよくなかった一因として、指揮官の戦術の問題はあると思っています。アザールの言葉を都合よく引っ張ってきたのではなく、観ていて戦術徹底度が低いように思える試合が多かったので、「アザールが指摘していたような内容が気になっている」と書きました。彼の発言が信用できるかどうかではなく、現場を知っている彼が語るモウリーニョさんの善し悪しのなかで、「悪し」のほうが出たシーズンだったのかもしれないという趣旨です。

    「ではないでしょうか」「気になります」という書き方をしたのは、自説を絶対的に正しいと主張したいわけではないことを表現するとともに、ご意見を下さった方に感謝し、気を遣っているからでもあります。それに対して、感情的で根拠を示さない中傷を返されるのがpuddingさんのスタンスなのであれば、今後はコメントをいただいても「気が重いな」と思い、異論があっても書かずに「そうですね」とお返しするかもしれません。コメント欄は、建設的なコミュニケーションや書いたことに対する感想・ご意見をいただける場であってほしいと願う私にとっては、ナーバスすぎるやりとりは望ましいものではありません。

  8. プレミアリーグ大好き! より:

    puddingさんの意見が感情的とか中傷的というのは、以前自分が望む若手をつかわないから所詮3年の監督、などと言い捨てるコメントも嫌いだからでなく分かると擁護するくらい寛容な基準からいえばまったくそのような物にはあたらないと思いました。
    お二人のやり取りを見比べてもどちらの方がナーバスに見えるかといえば・・。

    私自身は決定機が3本あって無得点なら決められない選手の個人能力の問題、と思っています。監督への批判は半分妥当で、半分はポグバのバー当ての半分が枠内だったりムヒタリアンの一対一がもう2本位決まっていればリーグでもまた違った結果だったかなあと思います。

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